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第68話 フェリシモ王国上陸


 そんなこんなで、夕方。私達を乗せた【フェルトナンド号】はフェリシモ王国に到着した。


 私達は待ちくたびれたとばかりに、船から飛び出しフェリシモ王国に足を踏み入れる。


 色んな人に囲まれて疲れてしまったのもあったかもしれない。とにかくフェリシモ王国に浮き出す足を抑えられなかったのだ。



 フェリシモ王国は交易で栄える小さな国で、港街が王都というか、1番大きな都市になっている。


 フェリシモ王国の王都は雪が積もり、入り口にはいくつもの氷や雪のアートが施されており、少し先に見える氷の城は夕暮れの中で輝いていた。


「すごい。綺麗!」


 思わず感嘆の声を漏らす私にルージュちゃんも頷く。


「本当に綺麗。明日あの城に行くんだね」


「改めて見ると大きいね」


 少し不安になってきた。あんな大きなお城に入って、お宝を盗むなんて出来るかな……?


 不安な考えを、首を横にぶるぶると振って、消し去る。


「拙者は感激です。すごい雪ですね。拙者は一度、かまくらというものに入ってみたいのですが」


「隙あり!」


 雪に見とれる茶々さんにマロンちゃんが軽く丸めた雪をぶつける。


「お、雪合戦? いいね」


 ルージュちゃんが乗り気になり、ルージュちゃんも参戦する。ルージュちゃんはマロンちゃんに雪をぶつける。


「あ、私も!」


 私も参戦し、ルージュちゃんに雪をぶつける。するとルージュちゃんから雪が返ってきた。


「えいっ!」


「それっ!」


 私とマロンちゃんチーム対、ルージュちゃんと茶々さんチームって感じで、童心に返って雪合戦を楽しんだ。


 楽しいひと時でした。




「アナスタシアさん!」


 振り返ると、微笑ましい目で私達を見る桜子さんがいた。


「あ、待っててくれたの?」


「はい、ホテルまで一緒に行こうと思いまして! いいホテルがあるんですよ!」


「桜子さんのオススメなら期待出来そう!」


 情報屋の桜子さんが泊まるホテルというのは信頼出来る。変なホテルじゃなさそうだ。私達は桜子兄弟の案内の元、ホテルへ向かう。



 桜子兄弟は1度も来たことがない道のはずなのに、何度も来たことのある道を歩いているようにスタスタと歩いていく。


 羨ましい能力だ。


 私が桜子さんの方をじっと見つめていると、桜子さんが私の視線に気付いたのか、振り返って私の方を見る。


「どうかしましたか?」


「いえ、桜子さんがすらすら歩くなあって」


「桜子でいいですよ! 私が道を間違えないのはお兄様の妹だからです!」


「そうなんだ……。なら桜子ちゃんで。私のこともアナとかでいいよ」


 お兄様の妹だってことは関係なさそうだけど、そこは深く突っ込まないでおこう。


「ふふふ。私は今のままの呼び方があっていますから」



「お前らの取ったホテルまでどのくらいかかるんだ?」


 フードで顔を隠したアラトとリンクスさんはまだか? という視線を投げかける。お尋ね者で悪魔の2人は街をどうどうと歩けないのだ。


「2人ともせっかちですね。せっかく美しい街に来ているんですから、もっと楽しめばいいのに」


 桜子ちゃんの言葉に、アラトは不機嫌そうにそっぽを向く。


「アナスタシアさん達だけでも、どうです? いいスポットに案内しますよ。ね、お兄様?」


 そう言って、お兄さんの腕に絡みつく桜子ちゃん。



「桜子、僕達は情報収集をしなくてはいけないだろう」


「それもそうですね、ならまたの機会に」


 この2人の関係についてはどう触れたらいいのか誰も分からないので、皆黙り込む。ブラコンとシスコンって解釈でいいのかな……? 色々と行き過ぎてる気はするんだけど。



 私達が歩いていると、怒鳴り声が聞こえてきた。そっちを見ると、プレイヤー同士が喧嘩していた。


 え、なになに?


 道行く人達は喧嘩していている人を避けるように歩く。


「ここじゃ日常茶飯事ですよ」


 桜子ちゃんが私の耳元で呟く。


「この街にはPKギルドの死神の使いとPKKギルドの正義の翼がいるんですが、この2つのギルドは仲が悪くて、よく小競り合いを起こしているんです」


 桜子ちゃんはそう言った。フェリシモ王国に死神の使いと正義の翼が集結しているという話は耳に挟んだことがある。


 けどあの人達を鑑定してみたけれど、死神の使いにも正義の翼にも所属していない。



 敵対するギルドの者同士で、争っているという感じじゃなかったけれど。


「あの2人の喧嘩の理由はそれなの?」


「いえ、あの2人はギルド同士の争いではなく、些細な諍いだと思います。この国はギルド同士の争いで、治安が悪化して、質の悪いプレイヤーを集めているのです。質の悪いプレイヤーがPKに有利なアイテムを求めて、オークションに参加しにきているのもあるでしょうね。喧嘩等の争いが耐えないのです」


 フェリシモ王国はそんなに物騒なことになってるなんて。


 ペガサス王国は平和だからなあ。


最初に選べる5カ国のうち、海の近くで交易が盛んな国ペガサス王国と、商売が盛んな国リベシア共和国、アシュタリカ教の国神聖アシュタリカ王国は治安がいいと言われている。



 逆に治安が悪いと言われているのが、人間至上主義の国ブリュメル王国と軍事大国であるデュアス帝国。


この2つの中でもデュアス帝国の治安は最悪と言われている。NPCもプレイヤーも民度が低いらしい。


 ちなみに私のいるペガサス王国はNPCの民度が1番いいと評判だ。プレイヤーの民度は2番目に高いと言われている。



 デュアス帝国は最も最悪と呼ばれるPKギルドの死神の使い、最もPKプレイヤーを倒しているとされるPKKギルドの正義の翼の発祥の地である。


  PKギルドとPKKギルドが仲がいいはずもなく、デュアス帝国でこの2つのギルドは争いを起こしているらしい。



 そんな中、始まったフェリシモ王国でのオークション。このオークションの品はPKを促すものばかりだ。死神の使いはオークションに乗り込むとの声明を出し、それに正義の翼が対抗したって感じらしい。


 私も人伝に聞いたことだから、あんまりよく分かってないんだけどね。



  PKギルドとPKKギルドの争いなんて、怖そうだから私はお近付きになりなくない。



 フェリシモ王国には来たけど、やばそうな奴とは関わらないようにしようと決意する。


 喧嘩を目撃した私達はなんだかどんよりとしたムードになりながらも、桜子ちゃん達の案内で歩いていた。



「アナスタシアさんそろそろホテルが見えてきましたよ!」



 桜子ちゃんはやっと着いたと嬉しそうに、ホテルの方を真っ直ぐ見つめる。


「あそこが、私達の泊まるホテル……!」


 氷で出来たホテルに私達は目を輝かせた。



 今まではホテルというより宿屋って感じだったけど、ここはホテルという表現がしっくりくる。


 氷で出来たホテル。とても繊細な氷細工があしらわれたホテルの豪華な外観は見るものを圧倒する。


「このホテルは美しさはもちろんですが、城を正面から眺められるんですよ!」


 桜子ちゃんが解説してくれた。


 私達はホテルへと足を踏み入れる。高級感漂う内装で、ホテルマン的な人が私達を丁寧に客室まで案内してくれた。


 私達は4人部屋だ。私達の泊まるところは、リビングのような部屋とベッドが4つある部屋の2つがあった。


 白を基調としたベッドや机はオシャレで、見ているだけで楽しい。


「氷のホテル、オシャレーー」


 ルージュちゃんもかなり気に入ったらしい。部屋のあちこちを見ている。茶々さんやマロンちゃんも物珍しいそうにしている。


「このホテル、ルームサービスがあるみたいね。何か甘いものを頼みましょ」


 マロンちゃんがメニュー表を見せる。


「いいね!」


 私達はルームサービスを呼んで、アフタヌーンティーを持ってきてもらう。


 アフタヌーンティーのお菓子は可愛らしくて、ケーキもスコーンも美味しそうだ。


 下の段のお菓子から順番にお菓子を頂いていく。


「茶々さん達は明日のオークション参加するんだっけ?」



 ソファに座って、アフタヌーンティーを食べながら、尋ねる。優雅な午後のひとときだ。


「ええ、そのつもりです。いいアイテムがあったら狙おうと思って」


「PKギルドとかもいるらしいし、気を付けてね」


 私の言葉に茶々さんは苦笑いを浮かべる。


「気を付けるのはアナさんたちの方ですよ。城に侵入するんでしょう?」


「あ、それもそうか」


 私達の方が危険かもね……。確かに、と頷く私を見て、皆は笑う。



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