第67話 ブラックジャック海賊団
「私行ってくる!」
「私も!」
「拙者も行きます」
私が続くと、ルージュちゃん、茶々さん、マロンちゃんも私に続く。
「私も。ライフルの試し打ちをしたいの」
私達はドアをくぐって、ドアの向こう側の景色を見る。ドアの向こうは、すごい惨状だった。アラトとリンクスさんが圧倒的な速度で、敵を倒していく。さすがNPCキラー。私達も負けていられないよね。
「【呪い】【破滅の旋律】【反転(呪)】」
私達も加勢する。呪いのスキルをフルで活用していく。手当り次第に呪いを掛けたら、精霊を召喚し、精霊と一緒に攻撃を仕掛ける。
敵は多いので、こっちも数が必要よね。下級精霊は何体でも呼べるので、2.30体呼ぶ。
「『闇精霊の導き』『闇精霊の導き』『闇精霊の導き』」
そして周囲の敵のHPが25%を切ったところで、もうひとつの呪いスキルを発動する。
「【カルタフィルスの呪い】」
このスキルを使えば、20%の確率で、HPが25%の以下のHPが0になる。
私は幸運ステータスが高いから実際はもう少し高いのかもしれないが。まあともかく、私のこの呪いで4分の1近くが死んだ。
ルージュちゃんの爆弾で広範囲の敵が殺られ、茶々さんは私達に近付く敵を確実に倒していく。
マロンちゃんは新しいライフルを撃つ。ライフルからは無数の弾丸が飛び出し、敵の肉体を掠めていく。
私達4人に集まった敵は次々に倒されていく。
何十人か海賊を倒すと、レベルが74になった。
アラト達はどこへ? と思ったら、中の方から凄まじい音が聞こえてきたため、多分中にいるのだろう。中はアラト達に任せて、私達は外の敵を片付けますか。
外の敵を私達4人で蹴散らしていく。私の呪い、ルージュちゃんの爆弾、茶々さんの刀、マロンちゃんのライフル。息のあった4人でのコンビネーションで、外の敵は全滅した。
「敵の姿は見えなくなりましたね」
「中にまだいるんじゃないかしら? 中に入って見ましょう」
私達は慎重に船内へと足を踏み入れる。海賊船であるのもあって、船内はお世辞にも綺麗とは言えない。
「すごい匂い」
船内は悪臭が漂っていた。獣人で鼻のきくルージュちゃんは鼻を手で摘んで抑えていた。
「大丈夫? ルージュちゃん」
「何とか」
私達はゆっくりと船員を進む。ほとんどの船員は倒されたのかほとんど人影はない。下から爆音やら打撃音やらが聞こえるからもう少し下で戦っているのだろう。
「どうします? もう少し下へ行きますか?」
「うーん、下の方はアラト達がいるみたいだし、上から丁寧に見ていかない? こういうところになんか隠しアイテムがあったするんだよ」
「この壺とか割ってみる?」
ルージュちゃんは近くにあった高そうな壺を手に取る。壺を割ったら何か出てくるって、こういうゲームの定番では。
「いいんじゃない?」
「えいっ!」
ガシャンと派手な音をたてて、壺は割れたが、何もドロップしなかった。
「「「「…………」」」」
「次へ行きましょう」
「そうね」
私達は上から1つ1つ部屋を見ていく、隠れている海賊を倒したり、レアアイテムを回収しながら。ちなみにだけれど、海賊なので倒してもお尋ね者になる心配はない。海賊船から品物を奪うのも同様だ。
そんな風にアラト達がいない方の部屋を見ていると、宝物庫? と思われる宝のいっぱい置いてある部屋を見つけた。
部屋を埋め尽くすほどの金銀財宝や宝石で溢れていた。こんなにたくさんのお宝を見たのは初めてだ。私達が圧倒されていると、奥の方から殺意を感じた。
その殺意に気付き、私が身を屈めると、頭上をナイフが掠める。
攻撃をしてきたのは、この船の船長のジャック。多分この船で1番強いやつ。
私達4人は船長のジャックと向かい合う。
「ちっ。外したか。まあいい。まあこっちに来たのが弱そうな4人組で良かったぜ。あの化け物共……。おい、お前ら」
船長のジャックの背後から数人の船員が出てきた。それなりの強さのやつらが揃ってる。
「殺れ」
船長のその命令を境に、一斉に私達に襲いかかる。私達も戦闘態勢にすぐさま移行する。
ブラックジャックLv70
スキル 盗み 忍び足 ナイフ術 殺意のナイフ 釣り 鉄壁の拳
称号 海賊団船長
「ナイフと拳で戦ってくる。後忍び足スキルも持ってるよーー」
長々と話す時間はくれないので、手短に敵の持つスキルを伝える。
不覚にも戦闘系のスキルの中に紛れた釣りスキルに笑ってしまった。釣りが得意で、魚を自分で釣ったりしているのだろうか。
「【呪い】【破滅の旋律】」
いくつもの呪いスキルを発動する。
「『闇精霊の導き』『呪い精霊召還』」
私の呪いスキルで敵のHPはじわじわと削られていく。そこにルージュちゃんの爆弾、茶々さんの刀、マロンちゃんの銃コンボが続く。
「なあお前ら、俺たちを見逃してくれないか? 下の方に悪魔がいるって情報が入ってる。悪魔は人間の敵だろ? 人間同士協力すべきだぞ」
自身が不利なのが分かったのだろう。ジャックは下劣な笑を浮かべ、こっちに手を差し伸べる。
悪魔というのはアラトのことだろう。アラトは味方だし、この人達と手を組むなんて以ての外だ。
「それは無理な話だね」
私の言葉と私達の止まない攻撃を見て、ジャック達は私達への説得を諦めたようだ。
ジャックは鋭いナイフを構えて、こっちへ駆け出してくる。ナイフは怪しい色に光っていた。
「殺意のナイフ」
魔法職の私が狙われている。咄嗟に私は爆弾を投げ、精霊ちゃんを囮にする。ごめんよ、精霊ちゃん。
「【呪い】『防御力デバフのプレゼント』」
呪いのついでに、デバフもプレゼントしておく。
次々と船長の部下は倒されていく。
私達の攻撃に自分たちの圧倒的不利を悟ったのか、船長はナイフを捨て、残った部下を見捨て、自分だけ逃げ出そうと、窓から飛び出し、小舟に飛び乗る。
あの小舟、どっから取り出したの。まあそんなの私の前では無意味だけどね。
私は隙を見て、ナイフを拾い上げ、藁人形に入れる。そして五寸釘をかなづちで打つ。ゴスンゴスンと。これで終わりよ。
しばらく、藁人形を打つと、やがて船長のHPは0になり、大量の経験値が入った。レベルが76に上がった。
船長を失った船員達は逃げ出そうとする者や私達への怒りを剥き出しにする者、恐怖で動けなくなっている者がいたが、全員倒した。
「これで全員ですね」
「レベルが64に上がったよ!!」
敵が全て消滅し、私達の緊張の糸は緩む。
「この財宝はどうする? 全部売ったらかなりの金額になりそうよ」
「全部回収しようよ! 皆で山分けしよ!」
「売るのは私に任せて!」
こういう時、トレーダーのルージュちゃんは頼りになります。
「おーい、アナちゃん! 船長倒したのか?」
アラトとリンクスさんが何百人もの船員を倒したとは思えない涼し気な顔で、私達に合流する。
「うん、船長倒したよ。このお宝、6人で山分けしない?」
「こんなにお宝が! 売ればかなりの金額になるな」
アラトとリンクスさんはお宝の山を見て、目を輝かせる。とりあえず換金はルージュちゃんに任せて、後で受け取ることになった。
戦闘を終え、私達がアラトのドアで、元の船に戻ると、大歓声だった。船員さんや冒険者のプレイヤーが私達を拍手喝采で迎える。
「よくやってくれた! あの海賊船を」
「ありがとな、お嬢ちゃん達」
「え、あ、どうも」
大勢の人に囲まれ、私はしどろもどろになってしまう。私はこんな風に大勢の人に囲まれて、話しかけられるというのは苦手だ。なんかアレラム村でもこんなことあったね。デジャブを感じる。
「あのブラックジャック海賊団を倒すなんてすごいよ」
「お前らが倒してくれなかったらどうなってたか」
アラト達は目立ちたくないというように部屋に戻ってしまい、私達4人が大勢の人に囲まれ続けることになったのだった。




