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第63話 仲良し兄弟


「あれ、皆さんまだこんなところにいらしたんですか?」


 少女は不審そうに首を傾げ、馬車の傍らからこちらを見ていた。


「うん! 道に迷っちゃって」


 ルージュちゃんが人当たりのいい笑顔を浮かべて、取り繕って言う。PKプレイヤーのこととか説明すると色々厄介なことになりそうなので、何も言わないでおこうと4人で決めたのだ。


 少女は少し考え込む仕草をした後、納得したような顔をした。


「そうなんですね。……でも良かったです! あなた達、PKプレイヤーっぽい人達に狙われてるみたいだったから何事もなくて!」


「え?」


 一瞬その言葉の意味が分からなくて、変な声が出てしまう。この子、あの人達がPKプレイヤーって分かってたの? もしかして私達が知らないだけで、有名なプレイヤーだったりして。


「あの5人組のことです! あなた達に話しかけた5人組がいたでしょ?」


「あの5人組、PKプレイヤーだったんですか! どうしてあの5人組がPKプレイヤーだと?」


茶々さんも疑問に思ったのか、私の心の声を代弁してくれた。


「私のお兄様が教えてくれたんです!」


「お兄様?」


 お兄様って、と思っていると、プリーストの少女の後ろから青年が現れた。


「何をしているんだい? 桜子」


 後ろから現れたとは映画にでも出てきそうな青髪の美青年。桜子さんの兄らしい。美形兄弟だ。


「お兄様! この方達が道に迷ったみたいで」


「それなら乗っていってよ。もう馬の怪我も治ったし、馬車の修理も完了して、皆を迎えに行くところだったんだ」


「なら遠慮なく!」


 ルージュちゃんが1番のりとばかりに、馬車に乗り込み、私達もその後に続く。



 私達が後ろの定位置に近付くと、桜子さんが私達の前に座った。鑑定した感じ、桜子さんはプリーストで、けっこう強い、というかいいスキルを色々持っている。お兄さんの方は鑑定出来なかった。



「アナスタシアさんでしょう? 近未来都市での宝探しイベントで4位になったの知ってますよ!」


 桜子さんはきらきらと目を輝かせて、こっちを見つめる。


「あはは、ありがとう。桜子さん達もあのイベントに参加したの?」


「えぇ、私も、あのイベントに参加しましたよ。アラトさんと一緒に。アラトさんのことはアナスタシアさんも知ってるでしょ?」


「え、うん。アラトの知り合いだったんだね」


 桜子さんがアラトの知り合いだったとは。世界って狭いね。私はしみじみとそんなことを考えていた。


「知り合いというより、お客さんって感じですかね! お兄様は情報屋をしていますので」


 そう言えば、アラトが情報屋からフェリシモ王国の情報を得たとか言ってたっけ。桜子さんのお兄様から聞いたのかもしれない。


「そうなんだ。2人もフェリシモ王国に向かうの?」


 横からひょこりとルージュちゃんが口を挟む。


「そうです。そうです。プレイヤーの情報を集めたくて。色んなプレイヤーがオークションに集結するはずですから!」



 桜子さんは可愛いらしい笑みを浮かべる。でも何だか一瞬その無邪気な笑顔に恐怖を覚えてしまった。


 でも恐怖を覚えたのは一瞬のことなので、多分気のせいだろう。PKされそうになったことで、プレイヤーへの警戒心が増しているのかもしれない。


「オークションは強いプレイヤーが集まりそうだもんね」


「ええ、情報を制するものが戦いを制するーーお兄様がよく言っている言葉です。あなた達はフェリシモ王国でアラトさんと城に行くのですか?」


 桜子さんはアラトが城でしようとしていることを知っているようだ。


「そのつもりだよ。全員でいくわけじゃないけど」


 私の言葉に、桜子さんは身を乗り出して、私の手を掴む。


「でしたら、フェリシモ王国のお城の話、また聞かせてくださいね! 有力な情報は買い取りますから!」


「うん! 土産話が出来たら」



 私の言葉に桜子さんはぱあっと顔を輝かせて、私の手を離した。


「そう言えば、自己紹介してなかったよね。僕の名前は晴人。よろしくね」


 今まで黙っていた晴人さんが会話に入ってくる。この人はよろしくといいつつも、私たちにあまり興味はなさそうだ。どこか冷めた目で、私達のことを見つめていた。


「アナスタシアです。よろしくね」


「ルージュだよ!」


「茶々と申します。お見知り置きを」


「マロンよ。よろしく」


 私達も順番に自己紹介している。情報屋さんとは是非ぜひ仲良くしておきたいところだ。知りたい情報とかある時には売ってもらいたいし。



「話は聞いたよ。フェリシモ王国のお城の情報が入ったら是非教えてほしい。それからPKギルドの死神の使いやPKKギルドの正義の翼、カルマ値0のプレイヤーが集まる0の集いなんかの情報も。情報量は払うからさ。もし手に入ったらでいいから頼むよ」


「手に入ったら情報持っていくね!」


「ああ」


 私は桜子さんに友達申請をして、友達になった。情報屋の友達ゲットだよ!


 私達が話していると、馬車は昼の休憩所に着いたので、他の乗客達が乗り込んで来た。あの5人組は行方不明になったけれど、特に誰も気付いている様子はない。


 普通に馬車は出発した。


 予定より大分遅れているので、馬車は高速で走る。馬車はそれなりに快適なのだが、気になることが1つ。


 前の2人だ。


「お兄様! 眠くなってしまいました。膝の上に頭を乗っけてもいいですか?」


「もちろんだよ、僕のお姫様」


「ふふ、お兄様、大好きです!」


 この2人がずっとこの調子なのだ。少し、いやすごく気になる。この2人は兄弟仲が良すぎるというかなんというか。


 ルージュちゃんと茶々さんも気になるのかちらちらと見ている。マロンちゃんはというと爆睡中。マロンちゃんはブレないよね。


 そんな状況なので、私達は複雑な心境だった。夜の休憩所まで馬車で、心休まらないひと時を過ごしていたのだった。


 そして休憩所で、夜を明かした次の日は、2人の兄弟は1番前に座っていた。元々あの2人は前に座っていたのだ。昨日は私達と流れで話すことになったから近くに座っただけで。


 何にしても、今日は平穏な1日を過ごせそうで何よりだった。


 私が馬車が走っている間、外の景色を楽しんでいると、アラトからチャットが来た。


アラト:港町のアラクア着いたぜ。



 もう着いたんだ。アラクア。アラクアからフェリシモ王国に船で行けるから、私達はアラクアで待ち合わせしようという話をしていた。


アナスタシア:今ルヴェロからアラクアへの馬車に乗ってるから、もう少しかかるかも。多分今日か明日に着くはず。



 私はアラトに返信すると、了解というチャットが来たのを確認して、個人チャットを閉じた。



 あのPK集団が事故を起こしたせいで大分遅れているみたいだけど、どのくらいかかるのかな。予定では今日の昼過ぎくらいには着くはずだったんだけど。


「どんくらいかかりますかね」


「夜くらいかな。アラトには今日か明日中ってチャット打っといたけど」


「港から船って、すぐ出るんだっけ?」


「週一らしいよ。船が出るのは明後日って聞いた」


「なら今日着いたら、明日は店探しに費やせるね」


 ルージュちゃんはトレーダーとしての執念に燃えていた。


「店なら別にフェリシモ王国で建ててもいいんじゃない?」


 色んな国に店があった方が移動が便利だと思うし。そう思って提案したけど、ルージュちゃんは首を横に振る。


「いや、最初に選んだ国にしかまだ建てれないのよ」


 ルージュちゃんが、アラクアに店を建てることにこだわっていたのはそういう理由があったんだね。


 私は納得した。そこで会話も途切れたので、外を眺める。動く景色を眺めるのは好きだ。なんとなく落ち着くし、自分の心の穢れが流れ落ちていくような気がするから。


 耳を澄ますと、2頭の馬がパカパカと早足で走っているのが分かる。頑張って、お馬さん。


 そうして2人と話したり、ぼんやりしながら過ごしていると、夜になっていた。


 私達はお金を払うと馬車を降り、旅館へ向かう。私が7時頃にはそろそろ着くという連絡をすると、アラトが予約してくれた。


 その旅館への簡単な行き方を書いてくれていたのでそのホテルへは簡単に辿り着けた。


 旅館は上品で、高級感溢れていた。私が今まで、ゲームで泊まってきた旅館の中で1番品があるかもしれない。


 旅館にチェックインすると、私達は部屋に案内してもらい、すぐに就寝する。アラトに挨拶しようとも思ったけど、さすがにこの夜中に尋ねても寝ているだろう。


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