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第62話 PKプレイヤー(下)


 これどうするんだろう。そう思っていると、卸屋がなんとか起き上がって、私達に呼びかける。


「うちの馬が暴走してすいやせん。毒を食らったみたいで、誰か治療出来る人はいませんか?」



 治療は出来るけど……。今手の内は晒したくない。私が迷っていると、一番前に座っていたプレイヤーの少女プリーストが名乗り出た。


「私が治療します」


 その少女は馬の治療を始めた。馬が回復しても馬車はズタボロだ。どうするのこれ。


「すいやせんが、少しの間近くの休憩所でお待ちを。馬車を修理したら出発します」


 私達は昼休憩をとった小屋の辺りが1番近いので、そこに歩いて引き返すことになった。


「災難でしたね……」


「あの馬、あのアサシンの麻痺毒で暴走したんだと思うよ。鑑定で見てしまった」


「ああ……」


 私達4人は溜息を吐いた。


「これもあのPKプレイヤーが話してた作戦なのかしらね? どう私達を他の皆と切り離すのか分からないのだけれど」


「こうやって歩いていた方が、はぐれる可能性は高そうじゃない?」



 そんな単純なことなのかなあ。


 私がそう思った時、あたり一面を霧が覆う。


 これは1部の場所の天気を霧に変えるアイテムの効果。霧で、他の人と私達を引き離そうっていうわけね。

 他のプレイヤー達は突然の霧に混乱している。


「なんなの? この霧は」


「なんも見えないぞ!」


 私達は霧のせいで、視界が悪いけど、それは向こうも同じはず。


 私達は離れ離れにならないように、4人でなるべくくっつく。


「こっちだよ!」


 ルージュちゃんが声で先導する。


 私達は他の馬車の乗客達が向かうとの同じ方向に進もうとした。その時、前の木が倒れた。私達は木の倒れる気配を察知して、避けたものの、少し馬車の乗客達と離れてしまった。



 私は追いつくために足を早めたかったが、周囲の警戒を優先する。いつ襲ってくるか分からないし……。


 私達は霧の中を歩く。隣でルージュちゃん達の息遣いが聞こえる。視界が見えないからか、耳がいつもより敏感になっている気がする。


「霧が引いてきましたね」


  10分くらい経ったころだろうか、霧が引いていった。視界がクリアになっていく。


 霧を生み出すアイテムの効果時間が切れたのだろう。私達の視界がはっきりすると、私達の少し後ろにあのPK集団が立っていた。



 私達は警戒態勢のまま、PKプレイヤー達と向かい合いう。


「随分警戒されてるみたいだね? まあこれから君たちは僕らにPKされるんだけどさ」


 リーダー格のアサシンが薄汚い笑みを浮かべながら、ナイフを構える。


 私達も戦闘態勢に突入した。


「【反転(呪)】【破滅の旋律】【呪い】」


 いくつかの呪いスキルを発動する。敵は呪い状態となり、呪いダメージを受けている。


「【蓮魔切り】」


 茶々さんは刀で切り掛る。


「【爆弾千花】」


 ルージュちゃんは私とマロンちゃんを庇うように前に出て、爆弾を投げる。そして新しく入手した爆弾スキルを使う。ルージュちゃんの爆発はスキルの名前通り、千の花が咲くように爆発した。


「【魔弾】」


 マロンちゃんは魔力を込めた弾で、銃を連射する。


「【毒ガス】」



 敵は毒ガススキルを使ってくる。クマエラという花に含まれている毒のガスだ。私達は毒ガスを浴びるけど、クマエラの毒を中和する薬を予め飲んでいたので、効かない。



「毒が聞いていない……? 一体どうして。もしかして君たちは鑑定持ち? それで僕達をあんなに避けていたのか」



 リーダー的な存在の男は私達の誰かが鑑定持ちであることに気付いたようだ。鑑定というのは、大当たりと言われているギフトの1つだ。これを1つ持っているだけで、パーティなんかでは重宝される。


 なぜなら鑑定で、敵のステータスを見れるというのは大きなアドバンテージになるから。


 私はそろそろかなと思い、藁人形を手に取る。本当はもっと早く藁人形を使っても良かったんだけど、敵が私達にはっきりと何度か攻撃するのを確認してからが良かった。


 敵意のない相手を殺すのは抵抗があるけど、この人達は自分勝手な理由で私達を殺そうとしているのだと確信を持てたから。


 まずはリーダーから。私は藁人形を手に取り、五寸釘を金づちで打つ。


 何度か金づちで打つと、敵のアサシンは異変に気付いたようだった。


「何をした?」


 私達を嘲笑うような笑みは消え、顔は青白くなっている。リーダーは震える声で、私達に問いかける。


 プリーストの女性が回復スキルを使うが、反転のおかげで、回復スキルは呪い効果に変換された。


「なんで」


 プリーストの女性ははっきりと動揺の表情を表す。女性はもう一度今度は少回復を試したが、また呪い効果に変わる。


 女性はこの状況がやばいと悟ったらしい。顔面蒼白となってぷるぷると声を震わせる。


「どうして」


「シギトさん! 大丈夫ですか?」


「何をしてるんだ、ユラ。回復は?」


 アサシンのシギトと呼ばれているリーダー格の男は焦った声で、プリーストの女性を責める。


「してるわ。してるけど、なんでか効かないの。それどころが呪われてる」


「使えないな」


「なに言ってんの。あんだがこいつらを狙おうって言ったんでしょ。事前調査もしないでPKなんて私は反対だったのよ」


 なんか仲間割れを始めた。話してる内容を聞いていると、それぞれが責任を押し付けあっているのが分かる。


 私はそれを無視して、藁人形を打ち続ける。やがてPK集団のリーダーのHPは0になった。


 次はくのいちの女性だ。私はくのいちの女性の食べかけであるお菓子を藁人形に入れ、五寸釘で藁人形を打つ。


 さすがに敵も殺されると分かったらしい。


「待って、殺さないで! 私はシギトに言われて仕方なく。PKなんて本当はしたくないのよ」


「嘘つかないで。あんなに楽しそうにしてたじゃない」


 この5人が楽しそうに話していたのは覚えている。それに私達を前にして嘲笑うような、愉悦を含む笑みを浮かべていた。


「人を殺そうとして、自分は見逃してもらおうなんて、甘いんじゃないかしら?」


 マロンちゃんは冷めた目でPKプレイヤー達のことを見つめていた。私は藁人形で、くのいちの女性を倒す。


 残りの3人のうち2人はやけくそになったのか、私達に襲いかかってくる。アーチャーの男性は逃げようとしたけど、私の藁人形で仕留める。


 襲いかかってきた2人は反転で回復が使えないし、4vs2なので、あっさり決着が着いた。


ーーPKプレイヤーを討伐したので、「PKKプレイヤー」の称号を得ました。


SSRの称号「PKKプレイヤー」。これをセットすると、PKプレイヤーに大して与えられる攻撃ダメージがほんの少しだけ増える。それからHP50のステータス補正が付く。


 カルマ値もけっこう上がった。倒したPKプレイヤーのカルマ値が低かったからかな。PKプレイヤーのカルマ値は−800くらい。このゲームは普通にしていれば、プラスになるなずなんだけどね。



 私達はPKプレイヤーを倒したはいいけど、なんとなく気まずい空気になった。


「倒しちゃったね……」


 ルージュちゃんは思うところがあるようだ。私も思うところはあるにはあるけど、人を殺そうとしたんだし、返り討ちにあうのは自業自得だ。PKをするなら、殺される覚悟もあるはずでしょ?


 それにこのまま放っておいたら他にもPKされた被害者も増えただろうし……。



「ルージュは後悔してるの?」


「ううん、殺らなきゃ殺されてたし、私達の他の誰かがPKされてたよね。後悔なんてあるわけない」


「私もよ」


 マロンちゃんの言葉にルージュちゃんは少しスッキリした顔をする。


「行きましょう。そろそろ皆のいる休憩所に」


 私達は皆のいる休憩所へと向かう。はぐれてしまっている状態だ。


 私達はさっき馬車で来た道を引き返す。なんとなく道は覚えていた。


 しばらく歩いていると、馬車が私達の後ろから来ているのに気付く。この馬車は私達が乗ってきた馬車だ。もう修理したの? 私達が驚いていると、中から馬の治療をしていたプリーストの少女が出てきた。




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