おまけ アナザープロット/第五章
「はーい、またまた今日もまた、モーナです!
今回もミニイベント的なアレですね。でも、本編のベースにもなっている大事なパートなんですって。
では行ってみましょう!」
・5:「賢者の鍵」同盟
ギルドランクも順調に上がり、もうじき90に到達しようかという時のこと。オルタのギルドのもとに、「賢者の鍵同盟」を名乗る冒険者の一団が接触してきた。
彼らは全員が何らかの理由で賢者の鍵を探しており、その共通の目的のため、協力して鍵の探索をおこなっているというのだ。
もちろん鍵が見つかった暁には、その魔力の恩恵を全員が受ける約束になっている。彼らは、オルタ達が同じものを探していると聞きつけ、仲間に引き入れるために訪ねてきたのだ。
リュークはその鑑定眼で、メンバーを密かに「サーチ」する。
純粋にオルタに期待を抱いている白魔術師の少女、ハル。
鍵の探索よりもメンバーの代表であるという意識が優先されてしまっているドワーフの狂戦士、グロウ。
最初から全員を裏切るつもりでいる青年騎士、マードック。
実は鍵などどうでもよく、強者に寄生することしか考えていない博徒、キール。
そして、人の助けは借りるが仲間意識は持たない孤高の女サムライ、キクノ――。
それぞれが高いレベルとレアレリックを所持する実力者だ。ただしその誰もが、大きな勘違いをしていた。
オルタのギルドランクが高いのは、オルタ自身の実力ゆえである、と……。
協力するかどうかの意志はオルタに委ねられた。が、お人好しのオルタが断るはずがない。かくしてリューク達は、「賢者の鍵」同盟に加わることになった。
ただ、マスターが設けたルールにより、「探索時のパーティーは最大六人まで」と決まっている。遺跡内での混乱を避けるためだ。
リューク達は四人一組で固定なので、残る同盟メンバーから二人が加わり、残りの三名は彼らのギルド仲間を加えて六人にする形で、二手に分かれて探索する――ということになった。
同盟初日――。リューク一行に加わったのは、グロウとキールだ。
だが探索開始早々に、二人はオルタチームの実力者がリュークであることに気づかされる。それに、クリステがマッピングというとんでもない能力を持っていることも……。
キールは調子よくリューク達に取り入ろうとするが、グロウはそれが面白くない。挙句、リュークに手合わせを持ちかけてくる。
グロウの巨大な斧は、「人狼」をアニムに持つ。その刃で自分を傷つけることにより獣戦士と化して暴れるグロウ。だがリュークは、宝箱の解呪に用いる「デリート」を利用してグロウの獣化――人狼の呪いによる作用を解除し、無力化してしまった。
グロウは悔しがるも、リュークの方が実力者であることを渋々認めるのだった。
この日持ち帰った宝箱からは、終焉大戦にまつわる品々が多く出た。
今日探索した階層は、91以降。伝説によれば、賢者は終焉大戦で自らを邪神ごと封印した際に、肉体を無数の小さな鍵に変えたというから、やはりこの91以降の階層で鍵が見つかる可能性は高いように思えた。
その翌日はメンバーを変え、ハルとマードックが仲間に加わった。
素直なハルはともかく、マードックは食わせ物だ。リュークは、拾った宝箱のいくつかを彼が隠していることに気づいていた。
さらにマードックは、クリステに興味を持ち、口説きにかかってくる。クリステは応じるつもりなどまったくないが――見かねたリュークは、マードックを少し懲らしめてやることにした。
「どうやら、これが賢者の鍵のようだな」
密かに取り出した鍵型のレリックを、さも今見つけたかのように掲げ、そう呟く。マードックはさっそく引っかかり、鍵を預かると言ってきた。
だが、彼が鍵をアイテムバッグに仕舞ったところで、リュークが「オープン」をかける。鍵のアニムは、搾りたてのミルクだった。
たちまちミルクまみれになったマードックは、慌ててバッグを拭おうとするが、弾みで中身を床にぶちまけてしまう。これまで密かに隠してきた宝箱を、たっぷりと……。
逆上したマードックはリュークに剣を向けるが、その途端、ハルの怒りの一撃が彼を吹っ飛ばした。
ハルのレリックは、巨人のアニムを持つ魔法杖だ。白魔術師は見かけによらず武闘派だった。マードックは捨て台詞を吐いて逃げていった。
マードックが同盟を抜けた次の日、オルタは城の用事があるため欠席となった。そこで人数調整のためロミィも欠席し、リュークとクリステ、そして残る四人のメンバーで、今日のパーティーが組まれることになった。
すでに探索場所は100階層を超えている。おそらく近いうちに鍵が見つかるだろうと、誰もが予見していた。
さっそく100階層から探索をスタートする一行。彼らは探索がてら、鍵を見つけたら何をしたいかを、互いに教え合う。
ハルは、鍵の力で究極の蘇生魔法を習得し、死して灰となったかつての仲間達を蘇生させたいという。グロウは、鍵の魔力を注ぎ込んだ強大な武器を手にするのが夢。キールは、鍵を見つけて語り草にしたいという、お気楽な想いを正直に打ち明ける。
キクノは何も言わない。リュークも同じだ。
そんな時、クリステが何かに反応する。彼女が指す先には、ロストサークルへの扉がある。入ってみると、そこには業火に包まれた世界――終焉大戦の光景が広がっていた。
遥か空高く、賢者と邪神が戦っているのが見える。本物ではない、過去を再現した映像だ。
そして――賢者が無数の鍵へと変わった。鍵は針のように邪神に突き刺さり、その巨躯を亜空間へと呑み込ませていく。
その刹那、一本だけ鍵が抜け落ち、一同の目の前に落ちてきた。
幻ではない。正真正銘、賢者の鍵がここにある。
……だがその時、キクノが呟いた。
「鍵が効果を発揮するのは、一度きりだ。……私にとっては、これが二本目になる」
キクノはかつて、一度だけ鍵を手に入れたことがあったのだ。「ある力」を身につけるために――。だが、その「力」を得るのと引き換えに、鍵は失われてしまったという。
だからキクノは、こうして二本目を探しにきたのだ。
……いち早く殺気を感じたのはリュークだった。
キクノは刀を抜き、一同に切っ先を向けた。
同時にグロウも斧を構える。ハルも迷いを断ち切るように杖を構えた。
キールだけが逃げ腰になっている。たかだか話の種のためだけに、殺し合いに加わるつもりはないのだろう。
……そう、ただ一つの鍵が、その効果を分かち合えない以上、こうなるしかないのだ。
炎の中で乱戦が始まった。リュークは戦いに加わるのを避け、クリステを連れて避難しようとする。
今優位なのはキクノだ。彼女がかつて得た力とは――不死。あらゆるダメージを無効化してしまうだけでなく、年も取らない。
彼女が鍵を見つけたのは、二十年前。遺跡が世界に現れてすぐのことだ。それ以来、彼女の姿は変わっていないという。
しかもキクノが持つ刀は、邪眼の魔物、ギロをアニムに持つ。刃を見続けるのは危険だった。
そこへ、密かに後を付けてきていたマードックが、突如襲ってきた。
キールとハルを手にかけたマードックは鍵のもとに走るが、それをグロウが薙ぎ倒し、そのグロウをキクノが斬った。
炎の中、クリステを守るリュークと、キクノだけが残った。
リュークは邪眼を受けぬよう目を閉じると、落ちていたグロウの斧に触れ、人狼と化した。強靭な嗅覚で敵の位置を把握しながら、素早いスピードで翻弄し、キクノの背後を取る。
慌てて飛び退こうとしたキクノだが――そこに罠があった。事前にリュークが、密かに未開封の宝箱をばら撒いていたのだ。
それらはまだ解呪を施されていないため、地雷のように働く。キクノの体が弾け飛んだ。
リュークは落ちた刀を地面に深く突き刺し邪眼を封じると、デリートによって元の姿に戻った。
キクノが引っかかった呪いは《消滅》だった。不老不死とはいえ、こればかりは防げない。
徐々に光の粒子と化していくキクノは、自嘲気味に呟く。
「私が鍵を手に入れて叶えたかった願い――。それは、元の体に戻ることだ」
時の流れから孤立し、周囲との別れを無限に味わうほど恐ろしいことはなかったのだろう。彼女が仲間を求めなくなったのも、そのためだ。
だがその時、クリステがキクノに言った。
「どんなに時が止まっても、絶対に断ち切れないものがある――。リュークはそのためにここまで来ました。キクノさん、あなたが苦しんできた理由は、あなたが自分からすべてを断ち切っていたから――ではないでしょうか」
キクノはゆっくりと、その言葉の意味を噛みしめた。
「あなた達に、もっと早く会いたかった」
そう告げ、キクノは完全に消え去った。
リュークは黙祷すると、鍵を拾い上げ、クリステの手を取った。クリステが強く握り返してくる。
二人は手を取り合ったまま、遺跡を後にした。
「リュークさんが人狼に! ワイルドでモフモフでケモミミなリュークさん……ゴクリ。おっと失礼。
ええと、とりあえず、何で突然バトロワをやらかしたかと言うとですね。やっぱりこの世界観だったら、冒険者同士のレリックバトルが欲しいじゃないですか。あと、レアレリックを巡る血みどろのあれやこれやもあると嬉しいじゃないですか。
……その結果がコレだったんですって。
でも、どうしてもここだけ浮いちゃうんで、敢えてこの部分を膨らませて、本編みたいな形にしたそうです。リュークさんの人狼化は完全に没になったみたいですけど……。
ではまた!」




