11◇バレた!
11◇バレた!
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次の日、冒険者組合に再び出向き、ドアを開けると手前の丸テーブルの雰囲気が少し違っていた。
壁際に異様な雰囲気を持った一団が居る。
俺は恐る恐るその一団とは距離が空くルートを計算し、こそこそ隠れる様にカウンターにたどり着いた。
「どうしたんスか姐さん、あの連中は。」
「姐さんはヤメろ、恥ずかしいだろ。」
「え、ではお嬢さん、あの方々はどういうお人なんでしょうか?」
いきなり頭をひっぱたかれた。
痛いなぁ。
いや、レベチなんで音だけペチっと鳴るけど優しく撫でられた感じだ。
「痛えなぁ、リアーナさん。ひょっとしてあの雰囲気、上位ランクの御仁ですか?」
「そうね、あれがドラスラのダンカンね。」
ドラスラ、、、ドラゴンスラッシャーっすね。
長いから受付ではそう呼んでいるらしい。
他の2チームもヒュドバスとかフェンクロとか言われているんかな?
「何か異様な雰囲気ですが何かあったんですか?」
「何でもチームの魔法使いが先の依頼で大怪我をして引退したらしいの。それで抜けた穴を急遽募集してるんだけど、ランクAでしょ。ダンカンのお目にかなう人がそうそう居るはずもないしね。」
「へぇ、そうなんですね。では彼らが遠征に出るにはもう少しかかるってことですかね?」
「そうねぇ。ただ、食料の保存とかけられる費用についてくらいなら聞いてもいいと思うから後で聞いておくわね。」
「ありがとうございます。なるたけ穏便に聞いてくださいね。魔法使いが抜けたのに魔法で食料保存できるぞなんて言ったら神経逆なでするかもしれませんし。」
「いや、あの連中はそこまで愚かではないわよ。ちゃんと魔法使いの仕事と食料保存は分けて考えてるから。で、今日はまた組合長にご用事?」
「はい、ちょっと思いついたことがありまして、相談に来たんですよ。」
「じゃ、ここはいいからそのまま奥に行ってね。」
俺はカウンター越しにこっそりドラゴンスラッシャーの面々を観察する。
あれ、思ったよりもステータスが低い。
平均してだいたい150くらいだな。
一人200なのはあれがリーダーか。
うーんいかにも強そうなんだけど、200かぁ...
俺は半スルーパスされて冒険者組合の中を進み、組合長室のドアをノックする。
「入れ。お、ルーカスか。丁度良かった。お前、魔法はどれくらい使える?」
「へ?どういうことでしょ?こないだ見せたステータスの通りですよ。」
「そういうことはもういいから。ここまで来たら秘密もクソもあるまい。ちょっとステータス出してみろ。」
組合長はそう言い、俺に向かって無遠慮に思いっきり魔力を込めて状態表示魔法をぶつけて来た。
俺は虚を突かれ、一瞬魔力が不安定になり、本当のステータスを表示してしまう。
次の瞬間我に返って組合長以上の魔力をぶつけて魔法を中和し、ステータス表示を消した。
「い、いやだなぁ、いきなり魔法をぶつけて来るなんて。下の者に対してもやっていいことと悪いことはあるんじゃないんですかね。」
俺が嫌味を込めてそう言うが、組合長は固まって動かない。
ひょっとして本当のステータスを見られた?
あの短時間で覚えられるとも思えないが、組合長が視力強化系の魔法を持っていたら分からない。
俺は恐る恐る尋ねる。
「えーっと、今何か見えました?」
「見た。全部999だった。どういうことだ。ありえん。王国歴代最高で500に達していないんだぞ。その2倍だ。魔族か。いや魔王か。それとも神か。」
何か組合長がぶつぶつ言っている。
目が座ってちょっと怖い。
いきなり俺に向かって叫ぶ。
「俺の目に焼き付いてしまった。俺は見た物を暫く見たまま思い返すスキルがあるんだ。だから今お前のステータス表示が瞬時に消えても内容ははっきりと分かる。しかもステータスが「神々の悪戯」だと?」
あちゃー、全部見られたってことだな。
うっかりしていた。
組合長とはもう気安い間柄だと安心して気を抜いていた。
やっぱりこのオッサンは油断も隙も無いな。
さすがこの支部を率いているだけのことはある。
「全部見られたのなら正直にお話しましょう。これ以上誤魔化しても良い方向にには行かないでしょうし。」
俺はこのオッサンに正直に話して味方に引き入れることにした。
いや、もう味方だと思ってたんだけど、いきなり魔法をぶつけられてちょっと不信感が出て来た。
だが、オッサンも立場があるのでそうさせたということは理解出来る。
俺がオッサンの立場になってもそうするだろうし。
「そうですね、これは私が15歳の誕生日を迎えた日のことです。朝起きると自分が覚醒したことが分かりました。頭の中に出来ることが無限に広がっている様な気分になり、しかも別の文明の前世の記憶まであって、大混乱ですよ。」
「それで、何かやってみようと思ったのか?」
「はい、とりあえず父のやっている商売の助けになったらいいなと思い、睡眠時間を圧縮して空いた時間で東の森に魔石を取りに行きました。」
「それがあの頭大の魔石か。」
「そうですね。 あの時は森に入ったらいきなりストライクボアに出くわしたんですよ。そこで念のために家から持って来た暖炉の火かき棒でさくっと仕留めて収納魔法に入れて足跡を逆に辿っていくと岩肌に巣を見つけたんでその周囲を探索するとあのでっかい魔石が埋まっているのを見つけて収納魔法で選別掘りして周囲に散らばる魔石も掘って持って帰ったってとこですね。」
「いや、待て、今の一息で言った中にどれだけの魔法が詰まっている。この紙に書け。」
組合長はもはや理解出来ぬという表情で紙とペンを俺に差し出した。
俺としてはもう完全に慣れっこになってたからサラッと言ったが、なるほど思い返すととんでもないな。
・「暗視魔法」で真っ暗でも見える。
・「存在隠蔽魔法」でストライクボアに気が付かれない。
・「筋力補助魔法」でストライクボアの首筋に鉄の棒を押し込んで仕留める。
・「収納魔法」でストライクボアを丸ごと収納する。時間経過は1000分の1なのでまだ腐っていない。
・「痕跡可視化魔法」で動物の足跡を遡れる。これで巣を発見。
・「魔力可視化魔法」で地中や岩盤の中の魔石が分かる。
・「収納魔法応用」で地中深くにある魔石を容易に取り出せる。
・「重力低減魔法」で自分の体重を6分の1まで減らし、軽く走って東の森から1時間で帰る。
・「清浄魔法」で服と体の汚れを落とす。
・「睡眠圧縮魔法」で8時間睡眠を5分弱に圧縮する。
こんなもんかな。
あの時は思いつくままに次々に実現していったので特に感慨も無かったが、今書き出してみるとえらいこっちゃ。
「だいたいこんなもんですね。あの時全て初めて発動しましたが。」
組合長は紙をじっと見て動かない。
ひとつひとつの魔法を自分の知識と照らし合わせているのかもしれない。
「まず、最初のストライクボアだが、今持っているのか?」
「はい、収納魔法に入っています。重量軽減と時間遅延がそれぞれ1000分の1くらいなんで、まだ腐ってないですね。」
あれからまだ10日くらいしか経っていないんで、まだ仕留めてから30分くらいの状態だな。
「出せ!さっさと出せ!いや今じゃない。今から解体部に行くぞ!」
組合長は俺の腕を掴んで強引に引っ張って行く。
買取部の裏の馬車停めのある大きな倉庫みたいな建物に入り、そこに居たオッサンに声をかける。
「おいフランク、お前一人か?他の連中はどこに行った?」
「ゴードン、来ていきなり怒鳴るなよ。他の連中はドラゴンスラッシャーが仕留めた獲物の解体に街の共同解体場に行ってる。暫く帰って来ないだろ。なにせストライクボアの大物を仕留めたらしいしな。」
「分かった、だがな。ストライクボアはもう一頭あるんだ。ちょっとそこの門扉を閉めろ。」
解体部の人は外に繋がっている馬車が入れるくらいの大きな扉を閉める。
解体場の中央に立って、組合長は俺に言う。
「さぁ出せ!出しみろ!俺の目の前で!」
興奮してるな組合長。
あんまり叫ぶと頭の血管が切れるぞ。
俺は二人に隅まで下がる様に言って収納魔法を使う。
俺が収納魔法を放つと目の前の床に光の粒子が舞い始め、ゆっくり回り始めてやがて渦となり、ストライクボアの輪郭が見えてくる。
輪郭がはっきりすると同時に光の渦は舞う様に散り、ストライクボアの巨体がごろんと転がった。
組合長も解体部の人もあんぐり口を開けて見ている。
「あのー、出しましたが。」
「うむむ、ご苦労。さて、フランク、これをどう料理する?」
「いやいやいや、その前に何でこんな若造が一人でコレを出せるんだよ。ベテランの魔法使いが3人がかりでやっと収納出来るかどうかの代物だぞ。」
「やかましい!俺も困ってるんだ。疑問を俺にぶつけるな!」
「あのー、邪魔なら一旦しまっておきますが。」
「そうしてくれ。ただでさえドラゴンスラッシャーの獲物の解体に人手が取られているんだ。今ここに出されても処理しきれん。」
俺は首をすくめて再度収納魔法を使う。
収納魔法が放つ光の粒子がストライクボアの周りを回って全体を包み込み、光が消えると収納完了で目の前から消えている。
うん、何事も無かったな。
「おい、フランク、今ここで見たことは口外無用だ。もししゃべったら俺の権限で罰則だぞ。いいな。」
「わかったよ、ゴードン。お前のその傲慢で勝手なところは変わってないな。見ろよ、そこの坊主が縮こまってるぞ。」
「フン!こいつが見たままの性格だと思うなよ。どうせ猫被っているだけだ。」
良くご存じで。
強制されたとは言え、やらかした自覚があるので黙っていただけだな。
「おい、ルーカス、引き上げるぞ。」
組合長は俺に声を掛けると肩を怒らせながら解体場を出て行った。
あわてて俺もついていく。




