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「エピソード33 中世編:端艇變(たんていへん)『喪われた三枚銅貨-調査編Ⅳ-』」

≪それで……君は他の作者の本を読んでいると?

 どのような風の吹き回しなんだ? ≫


ヴァルは、

わずかに嫌悪を滲ませながら、

俺に問いかけた。


【どのような、か……。

 他の作者がフォローしてくださった。

 その誠意を踏み躙って、何が『小説家になろう』だ――反吐が出る】


俺はロイヤルミルクティーの湯気越しに、

この救いのない神を、静かに唾棄した。


【それにしても、この小説は――『儀式系小説』だ。

 記号が意味を帯び、意図的なぼかしの中で、情報は少しずつ開示されていく】


【ふぅん……厄介極まりない力だ。

 『この御方は理解しておられる……』。


 ――ならば試させてもらおう。

 その『淑女の嗜み』とやらを】


≪そうやって、他の作者のハードルを上げる必要はないだろう≫


【いやぁ……バトルものらしいからね。

 ならば私は“悪”を演じる側でいい……そういう話だろう? 】


≪莫迦なことを言うな。お前は批評する側の人間だろう≫


【いいや、私は浪漫派だ。

 『砂男』を読んだ以上、立場は明確だ――『独逸浪漫派』。

 ヒーローに肩入れするのは当然だろう?

 可能性というものを、信じているからな】


≪君の浪漫は拡散しすぎている。焦点がない≫


【はぁ~? 一点しか見てない奴に言われたくないんだけど?

 マジでさ、それだから“神様”なんて揶揄されるんだよ】


【私が七艘を水面に浮かべ、流している――その意図を、読者は理解しているのか。

 ……まぁいい。

 本題に入ろう、ヴァル】


【ストーリーにおいて重要なことを話すぞ。

 ――『きおつけ』の理論だ。よく聞けよ?】


≪またか。自論を理論と呼びたがる癖は直らないな≫


【急な転回、展開、天界賭して視ることなかれ】

【おかしな天啓、堕ちが先に裁ちて、前に建ち往かん】

【強すぎるツケ、お前の心を突く度に、

 修正(ツケが倍増する】

【景色が見えたなら、騙れよ──。

 視えるものなら、観えるようにし、看得るように為さい】


≪急に抽象度を上げてきたな≫


【私が現在陥っている状態だ】


≪なるほど……それを原罪と呼ぶわけか≫


【そうとも言える】


『物語を歪めた代償だ───』

『喪われた三枚銅貨-調査編Ⅳ-』について、

あらましを清廉潔白に想起する。


【何を精錬していて、

 ──潔く白く、魅せようとしてんだろうな?】


プロットは以下の通りである。


A.風見鶏の根元に集合する三人

A-1.語られた「真実1」

A-2.「真実1」は過程であって、『本質』見ていないことの提示


B.『本質』を見届けるための場面転換

 B-1. 場面転換への導入(空気感、移動視点意識)

  ※「喪われた三枚銅貨-調査編Ⅰ-」の伏線回収


C. 『倉庫』への移動

 ※「喪われた三枚銅貨-調査編Ⅰ-」の伏線回収

 C-1.『倉庫』内でのやりとり

  C-2.『銀』真贋の判断


D.フード男との逃走劇

 ※「喪われた三枚銅貨-調査編Ⅰ-」~「喪われた三枚銅貨-調査編Ⅲ-」の伏線回収

 D-1.ナーレとアヴェーラの役交代

  D-2.三人の機転を魅せる

    D-3.キーランが見せた動揺


多分、この構成だったはず。


***********


A.風見鶏の根元に集合する三人

A-1.語られた「真実1」

A-2.「真実1」は過程であって、『本質』見ていないことの提示


風見鶏の根元に、三人は集っていた。


港の風は生温く、どこか湿り気を帯びている。


その場に似つかわしくないほど気楽に――

彼女たちは、路上に腰を下ろしていた。


【おいおい、路上に座るな。ここは一応“港”だぞ?

 ……アヴェーラまで座ってるじゃないか。

 その一張羅、汚れても知らんぞ】


だが、そんなことはどうでもいい。

ここは――次へ進むための“接続点”だ。


既に語られた「真実1」。

だがそれは、あくまで過程に過ぎない。

本質には、まだ触れていない。


【ここで改めて説明する必要はないだろう?

 君達は、もう既に視ているはずだ。

 同じ皿を二度出されても、飽きるだけだからな】


だから、過程は切り捨てる。

必要なのは――その先だ。


私は、確かに“現象”を見ていた。

だが――“本質”は見ていなかった。


「……けれど、私たち、見たわけじゃないんだよね」


ナーレの言葉が、静かに落ちる。


そうだ。

あれは“見た”のではない。


キーランが動かしていたのは、金だ。

その流れを追ったに過ぎない。


そして判明したのは、ただ一つ。

――彼が、その最中に“賭けていた”という事実だけだ。


それ以上でも、それ以下でもない。


「確かに、それっぽい話は拾えたよ。

 冠のことも、支払いの話も、帳簿の矛盾も……全部、繋がって見えた」


「……ええ。でも、今のままじゃ――ただの“情報”よ」

「うん。まだ“鍵”がかかったままなんだ。全部」


アヴェーラとナーレは、結論の“手前”に立っていた。


掴んだのは輪郭だけ。

中身には、まだ触れていない。


*******


B.『本質』を見届けるための場面転換

 B-1. 場面転換への導入(空気感、移動視点意識)


『A』の開示を行った。

  ここで、自然につなげていく。


(読者に意識しつつ、

 意識しない様にしないといけない。)


 ※ここでは場面展開を分かりやすくするため、

 メインストーリーをぶつ切りにします。

 

─────。


「だから……ちゃんと見届けなきゃ。

 自分の目で、心で」


「──ああ。だから、行こう」


ナーレが一歩、踏み出す。


その背を追うように……。


「そうだな、あの人が罪を犯した理由が、本当だったのかどうか──確かめよう」

「そうですね、ここまできたら、皿までもですわ」


フィーネとアヴェーラも、

ようやく歩を進めた。


三人は、静かに夜の道を駆け出す。

酒場を後にした男の影を追って、


“銀でこしらえた花の冠”が、どこで、どんな風に受け渡されるのか。

その代金が、どんな手で支払われるのか──


目指すは──キーラン。

今彼が向かうとすれば、可能性が高いのは一つだけ。


港の場末にある古びた倉庫。潮の匂いと錆びた鉄の香りが混ざるその場所は、昼でも人影がまばらで、夜ともなれば、誰も足を踏み入れない。


「たぶん、あそこだと思う」ナーレが呟いた。


***************


C. 『倉庫』への移動

 ※「喪われた三枚銅貨-調査編Ⅰ-」の伏線回収

 C-1.『倉庫』内でのやりとり

  C-2.『銀』真贋の判断


倉庫へと向かう足取りは、自然と重くなる。


――あの場所だ。


かつて、キーランと“あの男”が、

人目を避けるように言葉を交わしていた場所。


ならば。

彼らは、また此処に戻ってくるはずだ。


「以前、あの男と話してた──

 ほら、煤けた麻の上着を着た、粗末な身なりの人。夕暮れの頃だった」


ナーレが、記憶を手繰るように口にする。


「覚えてるわ。あれは……取引の最中に見えた」

フィーネが小さく頷いた。

「ただの売買じゃない。……隠していた」


「でしたら、その続きを――今、確かめに行くのですね」


アヴェーラの声は静かだった。

だが、その決意は揺るがない。


三人の記憶が、ひとつに重なる。

断片だった“情報”が、ようやく方向を持ち始める。


倉庫の外壁に沿い、息を潜めて進む。

足音すら、夜に溶かすように。


(埠頭の倉庫群ってのは……どうしてこうも不気味なんだろうな

 テトラポットが街灯に照らされて、やけに白く浮かんでは消えてく……

 作者のイメージでは中世なのに、そういった世界感だった)


静まり返った港。

その奥に――“続きを知る場所”がある。


【ここ……少し、開いているな……】


私は足音を殺し、古びた木戸の隙間にそっと指をかけた。

軋む音が出ないよう、わずかに押し開ける。


その隙間から、中を覗く。


暗がりの中に、かすかな灯り。

人の気配が、確かに“ある”。


彼女たちも、順に背後へ寄る。

肩が触れ合うほどに近づき、息を潜めた。


***********


C-1.『倉庫』内でのやりとり


 倉庫の中は薄暗く、湿気を帯びた埃の匂いが漂っていた。

隙間から漏れる月灯りの筋が、古びた木箱の上に影を落としている。


キーランは一人、その箱の前に立っていた。


向かいに立つのは、黒いフードを深くかぶった男──

その顔は見えない。だが、この男が“取引相手”だということだけは確かだった。


【どうやら、『おはなし』中らしい……】


「金は……持ってきたか?」

フードの男が、低く問いかけた。


キーランは無言のまま、腰の革袋を外し、天板の上に置いた。

袋の中には、ずっしりと銀貨が詰まっている。


じゃらり……


金属音が、倉庫の静けさの中に重く響いた。


「これで最後の支払いだ」

フードの男は袋の口を開け、中身をざっと確かめると、ひとつ頷いた。


* * *


「……たしかに受け取った。約束の品だ」


男は小箱を引き寄せ、蓋を開ける。

その中に収められていたのは――銀糸で編まれた、小さな花冠だった。


繊細で、完成されすぎた細工。

贈答品としては、申し分ない。


【――待った】


【……どうにも胡散臭い】


【これは本当に“銀”か?】


************

 

C-2.『銀』真贋の判断


────────。


キーランは、すぐには受け取らなかった。

代わりに、腰から銀貨を一枚取り出し、そっと冠の縁に打ち当てた。


──チン……。


澄んだ金属音が、静かに響く。

キーランは花冠を手に取り、目を伏せるようにして小さく息をついた。


「……銀に偽りなし、か」


フードの男が、やや皮肉めいた声で問う。


「気は済んだか?」


キーランはしばし黙ってから、静かに答える。


「ああ。……これでようやく、贈れる」


彼の手には、花の冠。

──それは、決定的な瞬間だった。


************


D.フード男との逃走劇

 ※「喪われた三枚銅貨-調査編Ⅰ-」~「喪われた三枚銅貨-調査編Ⅲ-」の伏線回収

 D-1.ナーレとアヴェーラの役交代

  D-2.三人の機転を魅せる


私たちは、この目で――

決定的な瞬間を見た。


「証明された……全部、本当だったんだ……」


胸の奥に溜め込んでいたものが、静かに崩れていく。

疑い、迷い、葛藤――

それらすべてが、一つの“真実”によって照らし出された。


その、直後だった。


──カシャン。


乾いた音が、倉庫の片隅に落ちた。


ほんの小さな音。

だが――致命的だった。


【……やった】


何かを踏んだのか。

触れてしまったのか。


理由はどうでもいい。

“音がした”という事実だけで、十分だった。


キーランの手が、止まる。

フードの男の背が、わずかに強張る。


空気が、変わる。


「……今の音、聞こえたか」


低く、押し殺した声。


「……誰か、いるのか?」


掠れた声が、倉庫の闇に沈む。


【このシーン……私は一度、視ている】


既視感が、背筋をなぞる。


同じ音。

同じ間。

同じ“破綻の始まり”。


――ならば、この先も。


キーランの声は掠れていた。


恐れ――ではない。

むしろ、焦りだ。


ここで“何か”が露見すれば、すべてが水の泡になる。

それを、彼は理解している。


「……受け取れ。そして、ずらかれ。今すぐだ」


フードの男が、低く促す。


「言っただろ。“最後”だ。

 商品も手に入った――後腐れは、無用だ」


キーランは短く頷くと、包みを抱えた。

その腕は、わずかに強張っている。


次の瞬間、踵を返す。


――走る。


裏口へ。

迷いなく。

振り返ることもなく。


夜の闇へと、その姿は呑まれていった。


沈黙が落ちた。


だが――それは、ほんの一瞬だった。


……コツ。


フードの男が、ゆっくりと振り返る。


……コツ、コツ。


音のした方へと、歩み寄る。


床板が軋むたび、空気が締まる。

距離が、縮まる。


逃げ場が、消えていく。


──三人は、物陰に固まっていた。


私の肩が、ぴくりと震える。

アヴェーラの手が、無意識にフィーネの袖を掴み。

フィーネは唇を噛み、目を閉じた。


息を殺す。

心臓の音すら、今は“音”だ。


……コツ。


近い。


……コツ。


もう、すぐそこだ。


──まずい。


──近づいてくる。


──見つかる。


──逃げなきゃ……!


三人は反射的に身をひそめた。


軋む扉の隙間から、薄暗い倉庫の内部を覗き込む。

息を潜め、互いの手を強く握り合い、鼓動すら押し殺す。


――止まった。


足音が、止まった。


(……気づかれた?)


音が、消える。

空気だけが、そこにある。


重たい沈黙が、倉庫の隅々まで満ちていく。


やがて――

黒いフードの男が、ゆっくりと首を巡らせた。


その動きは、あまりにも静かで。

それなのに、やけに“大きく”見えた。


こちらを――

“探している”。


************


D.フード男との逃走劇


そして、男の声が響いた。

「……そこにいるのは、誰だ?」


声は低く、だが鋭く、空気を切り裂くように届く。

その瞬間だった。


「パキィ」


乾いた音が、場の緊張を決定的に破った。


私の足元で、小さな木片が踏み割られた。

まるで氷の薄皮を踏み抜いたかのように、軽く、だが絶望的に。


男の視線が、はっきりとこちらを捉えた。

フードの男の視線が暗がりを射抜いた。


そして、ゆっくりと口を開く。

「……今夜はやけにうるさいと思えば──」


男はわざとらしく肩をすくめてみせた。

「……迷いネコが三匹も、とはな」


その声音には、怒りではなく、

どこか楽しんでいるような嘲りが滲んでいた。


私が息を呑む。

フィーネが無意識にアヴェーラの手を握った。


次に何が起こるのか、誰にも分からない。

フードの男の足音が、再び静かに響く。


一歩、また一歩と、まるで獲物に近づく猫のように。


「……ここで何をしている? お嬢さん方」


木箱の影に身を隠したまま、三人は答えられずにいた。

返事をしたところで、事態が良くなる保証はどこにもない。


【ここで、詰まる訳にはいかない……。

 何とか場を繋げるんだ……

 作者は次の場面をイメージする余裕は無かった】


物陰から不意に姿を現した私が、一歩だけ前に出て言った。


「わ、私たちは……見届け人。

 依頼されただけです。取引の証人を──ほら、商売敵の差し金、ってやつ」


口にした瞬間、自分でも無理があると感じた。

だが言うしかなかった。背後のフィーネとアヴェーラが息をのんだ。


フードの男はしばし沈黙し、やがてゆっくりと首をかしげた。


「……証人、ね?」


低く笑うように言ったその声には、微かな嘲りが混ざっていた。


「なら、何故倉庫の外で“猫のように”隠れていた? 

堂々と正面から来ればよかったはずだ」


私の喉がごくりと鳴る。返す言葉が、ない。


「それに──証人を送るほど、

 この港で俺を敵に回す店があるなら……」


男は、わずかに首を傾ける。


「……そいつの名を、まず聞こうじゃないか」


その目が、細くなる。


見透かすように。

値踏みするように。


いや――


“逃がさない”という意思を、はっきりと宿して。

三人の背を、冷たい汗が伝った。


言葉が、出ない。

沈黙が――答えになりかける。


「……ダメ、完全に見抜かれてる……!」


私の声は、かすれていた。


【――分かったことがある】

【コイツの背後には、“力を持った何か”がいる】


ただの取引相手じゃない。

ただの裏稼業でもない。


この男は――

“守られている”。


************


 D-1.ナーレ、アヴェーラ、フィーネの役交代

  D-2.三人の機転を魅せる


【書いている最中は完全に手詰まりだった、

 書いているのに次が出ないという場面に遭遇したのである】


【この埠頭と湾内の地図は頭の中には無い状態だ。

 彼女等を奪取して、逃げないと……】


極限状況で考えた結論としては、

ハチャメチャを強行することだった。


先ずフィーネに船頭を切らせること……。


【彼女は摺りについて、言及した。

 つまり、そういう機転を動かせるパーソンだ!!】


フィーネが足元に転がった石に目を留めた。

しゃがんで素早く拾い上げ──


まるでそれがずっと手に馴染んでいたかのような自然さで、右手に構える。


「な、なんでもいいから走れっ!」

フィーネが声を張り上げ、物陰から飛び出した。


驚いたフードの男が一歩退いたその瞬間、フィーネが小石を一斉に投げ飛ばす。

それは絶妙にフード男の顔をかすめ──一瞬、彼の視界を逸らせた。


「まったく……そういうのは私の役目なんだけど!」

私も苦笑しつつ、両手いっぱいに倉庫の古布を放り投げる。


舞い上がった布の雨が、視界をさらに覆った。


「こっちですわ!」

アヴェーラが叫び、三人は倉庫の隙間をすり抜けるようにして、一斉に駆け出した。


【くっそ! こっちだ! 多分……!!!】


フードの男の怒声が背中を打つ。

「待てっ、貴様らァッ!」


【やみくもに、右へ、左へ、真っすぐに!!!】


だが、港町の倉庫地帯は迷路のようだ。

夜の帳が降りた中、狭い路地に身を潜めながら、三人は何とか息を整えた。


「……ひ、ひゃあ……久しぶりに心臓飛び出すかと思った……!」

フィーネが地面に座り込んで苦笑する。


【あぁ! 最高にクソったれ!な場面だった】


「でも──見たよね」

「あの冠、銀の糸で編まれてた。……キーランさんは本当に、渡そうとしてたんだ」

私が静かに言う。


「……なのに、どうして隠してたんでしょう。あんな場所で……」

アヴェーラの声が、港の風に消えていった。


「誰にも知られたくなかったんじゃない?」と私が低く返す。

「奥さんにすら、言えなかったことかも……」


「でも、あれ……綺麗だったよ」

「銀の花の冠……本当に、奥さんに渡すつもりだったんだね」

フィーネがぼそりと呟いた。


************


 D-3.キーランが見せた動揺


此処ではナーレを通して、

キーランの最後の視点を視るシーン。


彼が銀の花冠を手にして、

逃げる一瞬の描写をナーレは視てて、

それを思い出すシーンだ。


『確かに、キーランの手は震えていた』


それが「愛」か、「贖罪」か。

その違いすら、彼には判別できていなかった。


だが――

分からないままでも、人は選ぶ。


選ばなければならない時がある。


だから彼は、“贈る”という行為に、

自分のすべてを賭けた。


それが正しいかどうかも、分からないままに。


それは銀で編まれた花の冠は、証でした。

彼の罪でもあり、愛でもあり、祈りでもあった。


過去に負った痛みの清算を、

自分なりの容で終わらせようとする、

姿だったのかもしれない……。


************

【なぁ? ちゃんと『きおつけ』を実践してるだろ?】


目の前の男は、ブランデーのボトルを傾け、

コルクを軽く鳴らしながら――ロイヤルミルクティーへと静かに注いだ。


≪また、そういう理論めいた話か……≫


コイツの語るそれは、精密さを装っているだけだ。

中身は――綺麗に整えられた出鱈目に過ぎない。


精密に見える。

それが一番、質の悪い出鱈目だ。


【私は“タラレバ”を実演したに過ぎない。

 ブランデーを先に入れるか、後に入れるかで――風味は変わる。


 ヴァル、君はどちらを選ぶ?

 ブランデーを“入れる側”か、それとも“混ざるのを待つ側”か】


【順序ひとつで、同じものは二度と出来ない。】


≪俺は、ブランデーは入れない!≫


【……いいだろう。

 それもまた、正解の一つだ。


 選ばなかったという選択も――立派な答えだ】


男はブランデーとウィスキーを交互に飲み、

その余韻のまま、ロイヤルミルクティーを含んだ。


異なるものが混ざり合い、

もはや“どれが先か”など意味を失っている。


残るのは――ただ一つの“味”。


【これが、私の応えだ。


 ヴァル――

 過程に意味を求めすぎるな。


 辿り着いた“それ”こそが、本質だ】


【真意を理解し、抽出することが浪漫派、

 儀式系作家の意図である。

 ───良く理解するんだ……】


***********


皆様、最後までお読みいただき、誠にありがとうございました。

『第三十三話「喪われた三枚銅貨-調査編Ⅳ-」』において、

プロットや物語の進行意図を、わずかでも感じ取っていただけたなら幸いです。


さて――


貴方様は、今。

とびきり頓稚気な野郎の前に立たされております。


ブランデーを呑もうが、

ウィスキーを選ぼうが、

――さして違いはない。


間に麦茶を挟もうとて、

本質は、何一つ変わらない。


その順序に、どれほど意味があったとしても……。


何故ならば……。


【貴方様は既に――

 酒精アルコールを口にしているのですから……】

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