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追放された魔法使いの巻き込まれ旅  作者: ゆ。
1章 商業都市フレンティア
33/55

暴露 (ゼルナside)

すべてを言い切ったメイウェル伯爵は、クレアさんの手を掴んだ。


「私は全部言ったぞ!だからっ、早くアレをどうにかしてくれ!!」


解放される安堵と、アメリア令嬢が治る喜びとが混ざり合って、メイウェル伯爵の表情はこれ以上ないほどに綻んでいた。


正直言ってあまり近づかないでほしいくらい気持ち悪い。


クレアさんはヒルゼ様のほうを向いて、


「案内してください」


とお願いした。


一連の流れを近くで、黙って見ていたヒルゼ様は、クレアさんを複雑な表情で見つめた。

そして、どうにもならないと考えることを止めるように息を吐いて、取り調べ室を出た。



 



「全知全能だぁっ!!」

「ふふふ、ガイアが世を正すんだ!!」

「早く、いかないと!!あぁ、ガイア!!」



地獄絵図だった。

アメリア令嬢を軟禁していた部屋で、アメリア令嬢は例のポーズをしながら意味のわからないことをずっと言っていた。


聞くところによると、軟禁してからずっと今までこの状態らしい。


様子を一目見に来たメイウェル伯爵は、娘の変わり果てた姿に一層顔面を青くして、クレアさんにすがりつこうとする。

すんでのところでヒルゼ様が止めてくれたけど……、メイウェル伯爵はプライドがないのだろうか。


黙ってアメリア令嬢を見ていたクレアさんは、静かに部屋の中へ入った。



突然のことで、誰もクレアさんを止められなかった。



扉と反対側にある窓に顔を向けて、例のポーズのまま叫んでいるアメリア令嬢は、クレアさんが入ってきたのもわかってないようだった。


クレアさんはアメリア令嬢の視界に映るように、目の前まで歩いて、止まった。

アメリア令嬢は目の前に立つクレアさんを見て、クレアさんを指さして「あぁぁぁぁっ!!!」と叫んだ。


こちらからではアメリア令嬢の顔は見えない。

一体何が起きたんだろうか。


クレアさんが何か言おうとしたのと被せるように、アメリア令嬢が口を開いた。


「お、お前!銀の魔法使い!!知ってる、知ってるぞ!!」


しん………と静まり返った部屋の中で、アメリア令嬢だけが、僕たちの方を向いてクレアさんを指さし、騒ぎ立てて、その言葉が周りにいる全員に届く。


「アナスタシア王国を追放された出来損ない!!ガイアの、ガイアの慈悲を馬鹿にした!!死んでしまえ!!!」


「知ってる、知ってるぞ!お前の名前も、お前の過去も、全部全部全部!!!ガイアが教えてくれた!!!」


「ガイアはお前を裁くために、私にすべてを与えたんだ!!!殺してやる!!殺してやる!!」


「死んで償え!出来損ない!!!」


「ははは!怖いのか?さっきから動いてないぞ!」


「お前はあの日、多くの人を犠牲にした!!そして、お前はクレアを、」







『閉じろ』






罵倒され続けていたクレアさんが最初に発したのは、魔法だった。

アメリア令嬢の口は閉ざされ、喋ろうと思っても口を開けないでいる。



「たしかに多くの犠牲を出した。後悔しない日はない」



俯いているクレアさんの顔は見えない。

でも、声が傷ついているみたいだ。



後ろに立つクレアさんはアメリア令嬢に近づいて頭に手を置いた。


アメリア令嬢は触れられたくないらしく、とんでもなく暴れるが、クレアさんはお構いなしにアメリア令嬢を縛り上げた。



そして、もう一度頭に手を置いた。




『解呪』




クレアさんのひと言で、あたりは黄金色に包まれて何も見えなくなる。

眩しくて、きゅっと目を瞑り、次に目を開けたときには、クレアさんの腕の中で脱力したアメリア令嬢がいた。



そして、数秒してアメリア令嬢が目を覚ました。


「あら……ここは?貴方は……?」


先ほどとは打って変わって清楚なアメリア令嬢に、僕を含めた皆で目を白黒させた。

貴族と関わることは平民の僕たちには少ないことだから、アメリア令嬢の本来の性格を知らなかったことが多分原因だ。


あたりを見回して、なぜここにいるのかわからないでいるアメリア令嬢に、メイウェル伯爵が駆け寄った。




クレアさんを押し退けて。




「アメリア……ッ!本当に、よかった……!」

「お、お父様?一体何が……」


ここだけ切り取れば、娘の完治を喜ぶ家族想いな伯爵だ。

でも、クレアさんを押し退けたことが、すべてを無に帰している。


メイウェル伯爵はクレアさんを一瞥した。



「お前がそんなに恐ろしいやつだったなんて知らなかったぞ!娘が治ったからいいものの……お前は化け物だ!」



娘の恩人になんてことを言っているのだろう。

化け物?


どうして、こんなに恩知らずなんだ。


僕は思わず怒りに震えた。

クレアさんがこんなことを言われる筋合いはないのに、どうして彼女に、しかも15歳の歳下の少女に酷いことが言えるんだ。



傷ついているのではないかと、クレアさんの顔を伺うと、クレアさんは蔑みのこもった瞳を向けて微笑んでいた。





「……治ったら駆け寄るんですね」





クレアさんはそれだけ言って、部屋を出て行った。


部屋には、クレアさんを無礼だと非難するメイウェル伯爵と、状況を掴めていないアメリア令嬢、そしてギャラリーの警備員たちが残り、空気は最悪を極めてしまった。


クレアさんの話が本当なのかとざわめき出した。



居心地が悪くなった僕は、クレアさんが気になって、すぐに後を追った。

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