誘拐犯は誰 (ルークside)
2026.10.18 改訂
俺は思わず、手紙をぐしゃりと握った。
俺が孤児院にクレアを留守番させているのを知っている。
しかも手紙の『大切な子ども』と、同封されていたリリーの写真。
犯人だ!!!!!
俺の頭の中で警報が鳴っている。
頭の中を、埋めていって、ぼうっとする。
コイツを捕まえなければ。
リリーを解放してクレアを渡せば───
『……連れ戻しに来たってことか?』
ハースの前の発言が突然過ぎって、我に返る。
(……何を考えてた?)
今、俺は、クレアを差し出そうとしたのか?
自分で自分の考えに驚く。
クレアが大魔協に狙われていて、意に沿わないことをされていたのではないかと考えていたのに。
この手紙の主が大魔協かはわからないが、何にせよクレアを引き渡すことは恩を仇で返すようなものだ。
落ち着け。相手は明日の夕方。と言っている。そして、北の森。
フレンティアの貧困街よりも奥にある不可侵地帯であり、唯一立ち入り禁止とされている危険な場所だ。
あの森は、城壁近くで現れるEランクの魔物よりも高位のAランク以上の魔物が大量に棲んでいる。知性があり、こちらが踏み込まなければ危害が加えられないことを知ってから200年以上、不可侵地帯として立ち入り禁止をされている。
俺は頑張ってもBランクの魔物1匹を手こずりながら倒すくらいの実力だ。
今俺だけで行っても、何もいい結果は得られない。
急ぐといい結果は得られない。
それに俺ひとりでやる必要なんてない。
俺は自分を落ち着かせるために一度深呼吸をした。
まずは、ハースたちに情報を共有して協力を得るんだ。
俺が戻ってきてハースはすぐに俺を気遣ってくれた。
本当にいいやつなんだよな。
俺はハースに礼を言って、ゼルナを呼んだ。
一体何を言うのかと、少しげんなりした顔でゼルナはこちらへやってきた。
俺は二人を見据えて口を開──こうとした。
突然、俺の口は何かで縫い付けられたかのように開かなくなった。
どれだけ口を開けようとしても開かない。
それならば、と俺はペンを取って紙に──書けなかった。
紙とペンのわずか数センチで、俺の手は震えながら抵抗に抗おうとしていた。
書かれた文字を指そうとしても、急に文字が読めなくなる。
ひとりで来い、ということか?
頭の中でよぎった考えが一番合点がいった。
俺の目の前で手紙に姿を変えた蝶や、伝えられない状態にさせられているのだろう。
相手は魔法使いの可能性が高い。
「ルーク?さっきから何をしようと……」
「いや……悪い、忘れてくれ」
心配そうに見てくるハースになんでもないと言って、俺が話を切り上げようとしたところで、ゼルナが割り込んできた。
「魔法ですか」
「……そんなわけないだろ」
俺はおどけた表情で真剣なゼルナの背中を叩いた。
俺は上手くかわせているだろうか。
(この件は俺が『ひとり』でやるしかないんだ)




