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追放された魔法使いの巻き込まれ旅  作者: ゆ。
1章 商業都市フレンティア

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テッドの行方(ルークside)

2026.10.18 改訂

「テッドを逃した!?おまえ………!」

「まあまあ、落ち着けよルーク」

「落ち着いていられるわけないだろ!!!」


フレンティア警備舎。

フレンティアは至るところに配置されている交番に加えて、噴水近くの大通りと検閲の各門に配置されている警備舎がある。


今いる大通りの警備舎には、中央部隊長で同期のハースと貧民街の第一区部隊長の俺とその隊員。そして、正門の警備員がいた。


俺は孤児院で大きな音を聞き、窓から見知った図体の男が歩いて行ったのが見えた。

夜の貧民街は街頭がないから顔までは分からず、一度報告に上がろうと警備舎を訪れた。


そのときちょうど来ていた正門の警備員が「テッドを逃した」という報告をしていて、俺が掴みかかったところをハースに止められていた。


やっぱり、あのとき見たのはテッドだったんだ……!

俺は血の気が引く感じがした。

テッドは商売の詐欺も多いが、貧民街の人や物に当たることでも有名だった。

貧民街の部隊長をする人間にとって、テッドほど厄介なやつはいなかった。


だから、クレアが捕まえたと聞いたときはどれだけ感謝したことか。

自分たちを苦しめていたテッドが、十五歳の少女によって縛り上げられているのを見たときは快感だった。

貴族にコネがあるテッドを、誰にも知られないように身柄を拘束したはずだった。


人の口に戸は建てられない、なんて言葉がどこかの国ではあるらしい。まさにその状況だ。

クレアがテッドを捕まえたのを見た人はあの場に何人もいて、その一人ひとりに緘口令など敷けるわけがない。


商人は人と関わる仕事だ。フレンティア中に話が広がるのはすぐだった。

テッドは詐欺で商品を横流しすることもあって、腐敗した貴族に懇意にされている。

テッドが捕まった話を聞いた貴族はすぐに釈放するように、報告にきた平民の警備員に詰め寄ったそうだ。


最初は反抗していた警備員も家族を人質にされ、たまらなくなったらしい。

こういうときばかり、貴族は権力を使いたがる。どこの貴族も汚いことばっかりで、呆れたものだ。

正門の警備員は涙を流しながらずっと謝るばかりだった。

俺はため息をついてしまった。

こんなの、俺も貴族と同じじゃないか。


俺は落ち着きを取り戻して警備員と目線を合わせた。


「悪かった、お前が全部悪いわけじゃないのに勝手に決めつけた。

……テッドを捕まえたい。知ってることがあれば教えてくれないか」



─────



警備員から話を聞き終えて元いた場所へ帰したころ、貧民街第二地区,第三地区、そして、商業区域特別部隊の部隊長が到着した。

俺はテッドが貴族によって釈放されたことと、警備員に聞いたことを説明した。


警備員の話では、牢屋にいるときにテッドはたびたび、「杖なし」とブツブツ呟いていたそうだ。


「杖なし」は「杖なしの魔法使い」のことだろう。

テッドは数あるフレンティアの商人の中でトップレベルの魔法の使い手だ。そこそこの魔法使いとなら、互角に張り合える力がある。

大方、魔法使い……クレアに捕まえられた恨みから言っているのだろう。


心当たりしかなかった。

テッドを捕まえた「杖なしの魔法使い」は、俺が検閲して案内したクレアに他ならない。

俺は説明を終えたあと、その場にいる全員を見据えた。


「テッドの言う『杖なし』が誰か知っていて、どこにいるかも知っています」


俺の言葉に周りが少しざわつく。

テッドを捕まえたのだ。皆も見当がついているのだろう。

俺は一応昨日の検閲資料を机の上に置いて話を続ける。


「テッドの狙いは彼女、クレア=モルダナティス。昨日テッドを捕まえた十五歳の魔法使いです」


「十五だと?その歳で本当に『杖なし』なのか?」

「流れてきた噂の中で、その魔法使いが『杖なし』という情報は上がってきませんでしたが…」


クレアの年齢を聞いた途端に、その場にいた数人が疑い始める。

『第二次魔力成長期』と呼ばれる魔力が増加する時期は十八歳からが普通だ。この成長期が来るまでの普通の人間の魔力はせいぜい一メートル四方をぼんやりと照らせる程度。

それでも、だ。


「俺は確かにクレアが杖を持たずにテッドを拘束したのを見ました。あれは『杖なし』の証拠です。

もし疑われるのなら、彼女をここに連れてきて聞くか、彼女が所属する大陸魔法使い協会に連絡を取るでもしましょう」


静まり返った。沈黙は肯定を表す。

この目で見ないと信じられないという者ばかりだった。


孤児出身の俺をよく思わない奴が多いのもあるだろうし、十五歳の少女がテッドを捕まえたことを想像できないのだろう。


俺は深呼吸をして気持ちを整えた。


「それでは明朝、ここに本人を連れてきます」



──────



一度解散することになり、各々が元いた場所へ帰って行った。

結局、部隊長になっても孤児というレッテルで信頼されない。まだまだだな……。


バシッ!!


「いって!?何すんだ、ハース!」

「しけた面してるからだろ?もっと笑えよ、お・う・じ」


ため息をついていると、同期のハースが俺の背中を強く叩いてきてニマニマ笑いながらそう言った。

こいつ……俺が猫かぶってるのをバカにしやがって…。

ハースを睨むと、ハースは「おぉ~こわい、こわい」と言って少し離れた。


ハースは真面目なときはしっかりやるし、こうして落ち込んでいると笑わせてくる。いい同期に恵まれた。

少しだけ、心が和らいだ。

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