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超・事件10

連続更新63日目!


異常

それが狐雪と走った事で抱いた子供達の感想だった。

3000mで9分を切れる選手は居ないわけではない。

1000mで3分を切って走れる選手は当たり前に存在する。しかしそれは己の力をしっかり発揮して走り切った場合だ。

確かに今世界で戦っているとある選手なら余裕を持ってクリア出来るラインであろう。

しかしそれは有名なトップ選手だった場合でありついこの間まで圧倒的に無名だった狐雪には流石に無理があると思われていた。


「1キロ2分55秒!」

「2キロ2分56秒」

「3キロ2分54秒」


葛葉と陽太郎以外の皆はてっきり最初の1、2キロ程度を引っ張るのだと思っていたが既に3キロ目まで距離は伸びている。

予想外な状況に全員が驚愕を隠し切れていなかった。

スピード自体は持ちタイムを考えるとまだ余裕があるから大丈夫だが気持ちの面ではそうはいかない。

第一に旧来の日本記録の同等のスピードで走る狐雪に加えて女子の葛葉が苦悶の表情を浮かべながらも離れず着いて来ている事実はどう足掻いても心を動かされ、地元の中学生4人衆に加え全中優勝の小野寺哪吒まで3キロで終わらず最後まで走ろうとしている。

その姿に高校生や大学生、実業団の選手達は年下、異性にほんの僅かだが負けると思ってしまった。

その事に気付くと動揺と同時に自身を酷く恥じる。


「ふぅーーー」


一度大きく息を吐き状況を確認した。

葛葉はスピード自体は飛び抜けている訳では無い為スピード的に辛いのか滝のように汗をかき呼吸が酷く乱れている。陽太郎は自己ベストより遅い為まだ余裕を保っているが3キロを過ぎてから徐々に顔に翳りが見えた。

風間、加工、高田の3人は全員が自己ベストで3000mを通過したが止まる事無く死ぬ気で着いて来ている。この3人は根本的に陽太郎に対して負けたくないという感情が強い。

素晴らしいライバルと言える。

そして全中優勝の小野寺哪吒の顔には余裕があった。自己ベストが8分21秒である事を考えると当然だと思う。

高校、大学、実業団の子供達は全員余裕……しかし陽太郎達への空気がほんの少しだけ変わった?

走る前は感じていた微かな優越感が今は感じない。

葛葉や陽太郎の友達達の空気に気圧されたな?


「ふっ」


「?」


思わず笑みが溢れる。

そんな私を見て横にいた神楽は不思議そうにしていた?

それよりも先ほどからチラチラと私を見ている。

まるで待てをされて待っている犬のようだ。

心配しなくとも直ぐに杞憂に終わるというのに。

ほら


「4キロ目2分58!!」


「「「「っ!!!!」」」」


マネージャーのラップの読み上げでいち早く反応したのは陽太郎でも葛葉でも高校生や大学生でもなくずっと私の隣で大人しく走っていた神楽だった。

1周400mのタイムが71まで落ちていたが加速してからスピードが格段に上がる。

初速に男子の誰も対応し切れていない。


「「っ!!!!」」


次に反応したのは高頻度で神楽とランニングをしている陽太郎と葛葉に陽太郎をマークしていた小野寺哪吒だった。

遅れるように高校、大学、実業団と続く。

この体たらくと愚痴を溢したいがイラギュラーが複数あり場にも一瞬飲まれていたのだから妥当だとも思いため息を付くに止まる。

加古達は何とか4キロ目まで着いて来ていたがラストスパートから突き放され少しずつ差が出て来てしまう。


「加古君、風間君、高田君ここ我慢!!」


声を掛けて私もスピードを上げる。

前に見えるのはスパートに反応したは良い物のスピードの体力の兼ね合いから戦闘集団から脱落した葛葉だった。

それでも何とか4キロ目よりも速いスピードで走っている。

ここが今の圧倒的な体力でゴリ押しして戦う葛葉の明確な弱点と言えた。

横に並び表情を確認しながら声を掛ける。


「そのまま落ち着いて行くわよ。このペースなら余裕で自己ベストだしなんなら日本歴代2位の記録も出るわ」


「あ"ぁい!!!」


「良い返事ね」


横並びから縦長になり葛葉の風避けとして走る。

精神的にも楽になった葛葉はほんの少しだけ速くなった。

それを確認すると私は神楽の状況も見る。


「ふっ……ふっ……ふっ……ふっ……」


リズム良く呼吸をして走っているがそのスピードは決して軽いものではなくタイム上は格上であろう高校生以上の子供達が追いかける側になるほどに速かった。

高校生からは5000mで14分を切る事がトップに立てる最低限になっている。

14分を切るという事は1キロで2分48秒を切って走るという事なのだ。

必然的に100mのスピードも相応に必要となるし必要条件を満たしている。

それなのに追いかける側になっていた。

神楽の陸上をした場合のスタイルは圧倒的な体力でスピードを出してゴールするというシンプルイズベストの極みみたいなスタイルであり葛葉の目指すべき完成形だ。


流石に異性に負ける事実は受け入れられないのかラスト200になると高校生以上の全員がスパートを掛けて神楽を抜いた。

そのまま神楽は抜き返す事無くゴールする。

陽太郎と小野寺の2人は小野寺が陽太郎より5秒速く先着する事で決着がついた。


そして肝心の葛葉は何とか私から離れずゴールする事が出来た。

ラスト1キロは神楽で2:35

陽太郎が2分52、小野寺が2分47秒で葛葉は2分55秒と何とか14分40秒を切る事が出来た。





子供達の成長を見てほくほくな氷鉋狐雪

非公式で今期女子世界最高のタイムを出した神楽だが真の体力お化けな事とまだ距離を走れる事には気付かれていない。

正直今後の事寄り楽しさを優先しているお婆ちゃん






ここまで読んで下さりありがとうございます!!

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