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【プロローグ】
草原の朝は、いつも歌から始まった。
風が低く草を撫でる音。遠くで鳥が鳴く声。そして、子供たちの声。
知らないはずの歌を、彼らは口ずさんでいた。誰に教わったわけでもなく、
楽譜があったわけでもなく、ただ自然と、唇からこぼれ落ちるように。
六月の庭に 雨が降る
やわらかな雨が 花を濡らす
眠れ、眠れ、愛しい子よ
夢の中でも 花は咲く
その旋律がどこから来たのか、誰も知らなかった。
ただ、草原の片隅に咲き乱れるバラの傍に立つと、
なぜか胸の奥があたたかくなる気がした。
その場所に、二体のドールが眠っていた。
バラの蔓に覆われ、もう動くことのない、小さな鉄の残骸。
でも、そこに近づいた子供は必ず言った。
「ここにいると、あたたかい感じがする」
これは、その残響の物語だ。




