転生後の俺とクマ
眩しい光が瞼の隙から入ってくる。
(う~ん、俺はどうしたんだっけ? ああ、神様から転生させて貰ったんだった。)
そうして、瞼を空けて辺りを見回す。
(何で森の中なんだ!? それに、この手は赤ん坊の手? 体も動かない! ……て事は、赤ん坊から人生をやり直せって事か。でも普通は母親から生まれる所からじゃねーのか? 何で森の中スタート!?)
持ち前の情報収集能力も、さすがに赤ん坊に転生し森の中からスタートした理由を探すには情報が足りなすぎた。
ガサッ!
あれこれ考えていると茂みの中から音が聞こえた。
視線を茂みに向けるとそこには一匹のクマがいた。
(なんだ!? おいおい、なんだよこのクマ! デカ過ぎるぞ! クソ! 直ぐに、ステータスポイントを振って何か護るスキルを身に付けねーとヤバイ!! 何かねーのか! 急げ、急げ!)
「ーーーー」
「ーーーー」
「ーーーー」
:
:
「結界魔法」防御、遮断等あらゆる結界を使える。
(これだ! 結界魔法最大レベル修得!)
「結界魔法」スキル修得 10000P/レベル1UP 500P
「結界魔法」〔10〕 15000P
「ガァァァァァァァ!」
雄叫びを、上げながら俺へと向かってくるクマ!
(『結界魔法:物理遮断結界』発動!)
ガキっ!
俺を、包む様に展開された虹色ドーム型の五層結界に、クマの爪が当たり爪を結界が弾く!
それから、何度もクマの攻撃を弾いていたが徐々に、結界が破壊され今は五層の内二層が破壊されている。
(不味いな、このままではじり貧だ! どうするかな、うん? なんだ!? 人型の生き物が近付いてくる!)
クマへの対策を考えていると、少し離れた所から此方に向かってくる気配を感じた。
「ハァーーーー! 龍旋脚!」
ドガーーーーン!
一人の女性が、飛び込んで来ると同時にクマへと蹴りを叩き込む、するとクマは轟音をたてながら森の奥へと吹き飛んだ!
吹き飛んだクマはもう、二度と立ち上がっては来なかった!
「ふぅー、何とか間に合った様だね。狩りの途中に急に人の気配がしたからびっくりしたよ。」
そう言い、女性は俺の方へと向かってくる。
女性は、身長175cm程で赤髪をポニーテールにしている20代前半くらいのかなりの美人だ。
「しかし、何でこんな所に赤ん坊がいるんだい? 近くに人間の街も集落もなかったはずだけどね。それにこの赤ん坊が使っているのは結界魔法じゃないかい。どうしてこんな子供が? 坊や、この結界を解除しな!」
(いやいや、助けてくれたのはわかるがいきなり知らない人から結界解けって言われて解くわけねーだろ!)
しばらく俺が結界を解くのを待っていた女性は、おもむろに拳を振り上げ結界へと振り下ろす!
すると、結界は大きくひび割れ砕け散ってしまう。
「あんたねぇ、いきなり現れた相手に警戒するのはわかるが、助けてくれた相手に警戒するってなどういう了見だい!」
女性の背後の景色が歪む!
(あっ、ヤバイ!! この人、怒らせるとマズイタイプの人だ! どうする!?)
「人が折角助けてやりぁ、この仕打ちかい! ああん!」
「お、」
「お、なんだい?」
「オギャアーーー、オギャアーーー!」
「ちょっ、鳴くのはおよし!」
「オギャアーーー! オギャアーーー!」
「わかった、私が悪かったから泣き止んでおくれ。」
こうして、最強の絶対守護者は自分を護る為に本泣きをするのだった!
そしてこれが後に、母親であり、師匠であり、恩人である女性との出逢いでもあった。