二章 魔妖狩りとして 一話
ラススの街から出発した一行の旅は世界のさまざまな場所で九人の天使たちに会うのが大目標である。
九人の天使に会うということは世界中を巡る旅をせねばいけないというになるため、必然的にこの世界への見聞を深めることになる。
吸血鬼の王族であるスカイが果たせねばならない世界への見聞を深め、天使との友好関係を築く、旅はその二つが一度に達成できる。
一行はごとん、ごとんとゆっくり進む木製の馬車に揺られながら、リリアが答えを出すまでの一週間で大目標を達成するための一つ目に定めておいたフィミア大陸の北西に位置するフォーレイブにて暮らす天使ラインに会うため、まずはフィミア大陸の最も東にあるラススから中央地域に近いヤルル村まで辿り着くために進んでいる。
まあ、ラススの街とヤルル村は昔から非常に交易が盛んらしく、使われる街道は整備されきっており、更に近隣の魔妖の生息数は少ないため六時間程で、もう到着寸前だった。
「すぴー……すぴー……」
「ルミルもう着くよ」
馬車内で羽を休めて可愛らしく寝ていたルミルの頭を優しくさするリリア。
ルミルの頭はふわふわでこの世のものとは思えない程やわらかく夢見心地であった。
「すぴー…………ハッ!」
パチンと目が覚めたルミルはぼーっとしながらリリアを見つめる。
「…………ふわふわ」
「いや、そんな蕩けたかわいい顔でいつまで頭を触っているミアか?」
「…………はっ!」
「なんでおんなじ目の覚め方ミア……?」
手を離したが、リリアの右手に感触は残り続ける。
たまらない、また触らせてもらおう……。
すると馬車が止まり、スカイが口を開く。
「ヤルル村に着いたね。じゃあ、ルミルは宿へ行って部屋の確保を、リリアは私とヤルル村の“魔電波塔”まで行こう」
テキパキと指示を出すスカイ。
“魔電波塔”。
スカイから事前に聞いた話では機械都市で生産され、魔妖狩りや魔時を扱う魔時者のサポートする役割を持った電波塔らしい。
なんでも電波塔の土台部分に付けられたモニターで近隣に生息する魔妖、その電波塔の付近で出された魔妖狩りや魔時者への依頼の確認ができるらしい。
「了解ミア!」
ルミルは羽を広げて馬車からすいーっと出ていき行者さんに手を振りながら『ありがとミアー』と言って、スカイは馬車から降りて行者さんに『助かりました』と言った。
リリアは行者さんに『ありがとうございます』と言って馬車から降りる。
長い時間屋根の下に居たため、日射しがキツくて思わず目を閉じてしまったが慣れてきて、目を開くと街道方面以外岩山に囲まれたヤルル村の景色が目に入る。
離れた間隔で建てられた質素でブラウンな色合いの木製の家々。
牛、豚、鶏が育てられている小屋やあちこちにある特産品のヤルル小麦が育てられている畑とさまざまな彩り豊かな果物がなる木々を手入れしている農家さんたち。
『現在“加護医”留守中』という看板が扉に付けられた白い建物も特徴的だった。
「えっーと……ここの魔電波塔は……うん、ちゃんとあった」
スカイは辺りを見渡し、降りてきた街道方面から見て反対側にある五メートル程の長さで水色の電波塔を指差す。
なんというか魔電波塔は土台部分にモニターがあるのと骨組み以外の特徴は見当たらなかった。
思ったよりもシンプルである。
「リリア、行こっか」
「うん……」
二人は魔電波塔に向かって歩き始めた。
「……」
ふと思った。
スカイはそのゴスロリ衣装で歩くのは平気なのだろうか?
いつも着ているが土の上で歩くことや泥汚れの危険性はどう考えているのだろう?
後、戦いやすいんだろうか?
「この服のことが気になる?」
「え、い、いや!」
考えを見透かしていたように歩きながら振り返るスカイへ首を横に多く振って、“違います”とアピールする。
「小さい頃から家族がやたら着させてくるから慣れてるんだ。というか、リリアって反応が分かりやすいね」
クスクスと可愛らしく笑うスカイ。
(……そんなに分かりやすいのかなぁ?)
自覚が無いだけなのだろうか?
というか……ゴスロリ衣装をやたら着させてくる家族?
なんだがブラッドフォール家は不思議である。
なんて考えていながら歩いていると魔電波塔まで辿り着く。
スカイはモニターをタップして『魔妖狩り許可証の提示、もしくは魔時感知器まで魔時を持つ方が近づいてください』という文章が出ている画面を開くと、右横の地中から一番上にアンテナが付いていて、全体の長さ大人の肩ぐらいがありそうな筒上の装置が現れた。
「リリア、一緒にこの魔時感知器の前まで」
と言われたので、一緒に魔時感知器の目の前に立つ。
『魔時の保有を確認しました。ご自由にお使いください』
魔電波塔から女性の機械音声が聞こえた後、モニターが次の画面に進む。
その画面は近隣に生息する魔妖について事柄と近くで出された依頼が載っている。
実は速く依頼をこなしていかなければならない理由が一行にはある。
それはブラッドフォール家の者の旅は“王族ではなく普通の旅人”というのを大事にするため、正体を知らない人にブラッドフォール家であることを明かして頼ってはダメな事と、旅の開始は“最低限の物資と最低限の支度金”しか無い故である。




