057 井出拓海のやったこと
時間が空いてしましました。
いいタイミングで、飲み物が全員に届きお疲れ様を乾杯をしてそれぞれが飲む。相変わらず豪快に半分ほどビールを飲みほした陽葵が輝の可愛さをしみじみと吐露する。
「はぁ。輝がマジ可愛いわぁ!」
陽葵が感嘆の溜息をつきながら、美月を見る。何か困っている顔に美月もどうしたの?と首をかしげた顔で聞く。
「あー聞いていいのかわかんないんだけどさ・・・」
めでたい空気の時に聞くべきでは無いかもしれないんだけどと言いながら頬をかいて申し訳なさそうに陽葵は話を続ける。
「でも、私は一方向だけでは物事を決めたくなくて・・・琴音の正義と、美月が傷ついて事が分かったからこっちにきたんだけど・・・もし、他の人に聞かれたときに何も知らないのに擁護だけする人間になれないんだぁ~」
その言葉に、琴音はうるっと瞳を潤ませる。美月をキズつけるやつには容赦しなという意気込みであの場に残ったが、陽葵が隣に立ってくれたことは実は凄く心強かった。
「うわぁーん。ありがとう!私を信じてくれて!陽葵がいてよかったよぉ~」
「ありがとう陽葵!そうだね!陽葵はそうだよね!私も話すべきだと思う。気持ちいい事じゃないけど聞いてくれる?」
琴音が、陽葵の言葉に感動して美月も共感する。それに輝は素直に尊敬の言葉を溢し、颯太は安定に美月を気遣う。
「凄いですね!俺なら、主観で味方になりそう・・・」
「美月は嫌じゃないのか?」
「う~ん。嫌ではあるかもしれないけど・・・でも、私説明出来るかな?」
「はい!私が説明するよ!美月は、補足して!それで、大丈夫?」
「うん。いつもごめんね。琴ちゃん」
「いいの!私が愚痴りたいだけだから!あっでも、私の主観で話をしてしまうと思うから事実は陽葵が精査してほしい!」
美月は、井出の事を思い出すと気分が悪くなる。正直最後まで説明できるかは分からない。琴音は先ほどの出来事の発散が出来てないのだが美月の話だから、大まかな説明だけで居酒屋を移動してからは話を辞めていたので憤っていた。
「あー輝は知らないけど、いいの?美月?」
「うん。そうだね。大丈夫、輝は言いふらしたりはしないから・・・でもいい話じゃないけどいい?」
「僕は大丈夫ですよ?美月さんの力になれます?」
「だね!家帰ったら卒業アルバム撮って写真も見せるわ!アイツは美月に近づけちゃいけない奴だから!今日の事で離れたらいいけど、阿呆みたいにアイツ自己肯定感が限界突破してるから、もしかしたらまだ接触図ってくるかもしれないし!大学直接来たらやっかい!」
恐ろしいほどぞわっとする今後の懸念を話しながら、琴音の説明は始まった。美月のバイト先を知ってからは毎日来ていた男だから無いと言えないのが辛い。
「井出拓海の所業は中3で美月と同じクラスになったところから始まるんだよ。アイツの周りの女子ってアイツのボンボン具合と容姿を好きな人間ばっかだったわけ!でも、美月は、ほらそもそもアイツタイプじゃないし!イケメンに囲まれてるからね!」
「え?」
琴音の言葉に、美月がきょとんと声を漏らす。「え?」って顔で颯太を見るが颯太も「ん?」っとした顔で見返す。
「あーやっぱ気がついてない?美月のパパンは佐々木蔵〇介さん。太陽兄は星〇源さん!煌星は坂〇健太郎だからね!」
「はい?」
「それくらい、塩顔イケメンと言いたいのよ」
「はぁ~。その方々に失礼では?」
「まぁ。そこは置いて置こう」
「いやっ琴ちゃんが言いだしたよね?」
「まぁ美月の好みはファザコンにブラコンなんで、いいねっていう芸能人みーんな塩顔なのよ。田〇圭とか綾〇剛とか向〇理とか!さっき出した人たちもかっこいいと思ってるから家族が似てるって失礼とか言ってるんでしょ?」
「ちょっと待って!なんか、それ恥ずかしい!」
美月が顔を真っ赤にして琴音を止めようとするが琴音の言葉は止まるわけがない。そこからは、ほかのメンバーは相槌こそ打つがお酒が入っていることも相まって話に入る事もできないほどヒートアップしていく。
「でも、美月って誰にでも親切でフラットに接するわけよ。イケメン扱いするわけでも無いし、だからと言ってイケメンを避けるわけでも無い。本当にただのクラスメイトとして相手してたんだけど井出拓海には刺さったらしい。まぁ。美月可愛いしね」
「刺さりたくなかった・・・」
「どこら辺はわかるかも!井出の美月に対する態度、懐いた猫みたいだったよね」
「陽葵!的確!そう、懐いた猫。すり寄って着たり、遠くからじっと美月見てたり!でも、美月は全く気がついていないし、興味ない感じだったから・・・井出カールズのターゲットにもなってなかった!」
「あー違うかも!それは!」
琴音の言葉を、陽葵が否定すると陽葵は続ける。美月は自分の事なの?という気持ちにしかならなく困惑していた。
「ほら、井出ガールズはイケメン好きじゃん?美月に何かして煌星くんに嫌われたくなかったんだと思うんよ」
「あーだから、美月にちょっかい出してこなかったんだ?」
「そう。あの時期、煌星君・・・思春期?反抗期?だったでしょ?なのに、なんか美月にかまってちゃんしててよく3年の教室来てたじゃん?」
「あーいたねぇ」
琴音と陽葵がその時の、周りの行動の検証を話し始めたので颯太が手を挙げて発言権を求める。琴音が仰々しく指名すると颯太は言いたい事だけ言う。ヒートアップしている女子の扱いがうまい。千尋姉様の教育の賜物・・・。
「話すすまなくねぇ?」
「だね!まぁ。すでに中3で井出は美月を好きになってんのよ。んで、中3の告白。たぶん周りに牽制のつもりであんな大勢の前で告白したんだけど、美月は「お友達でいましょう」という返事に羞恥心が勝ったんだろうねぇ~小学生みたいな返しをしたのよ」
「あぁ。胸を引き合いに出した暴言ね」
「そう!アレも酷い!」
美月に気を使って琴音と陽葵が伏せて話す。颯太も知っているが輝は知らないのでソワッとしているが聞いていいのか。悪いのかわからず。困った顔をしている輝に美月は気がつき教える。
「輝だけ知らないよね?ソイツから告白断ったら『冗談だよ!牛みたいな胸のお前に本気で告るわけねぇだろ』 って言われたの。酷いよね?」
「女性になんていうこと言うんですか!中3って!そろそろ分別分かるでしょ!?」
「おぉ。輝が怒った!」
「いやっ怒っていいからね!美月!」
「なんか、もうね。ソレに関しては酷いなぁ~よくそんな言葉出てくるなぁ~ってぐらいでその後が酷かったからね」
「確かに。それでね!あいつ、高校で同じクラスになってアイツ、美月に振られた腹いせなのか周りを遠ざけたかったのか分かんないけど、クラスメイトの前で美月の胸を後ろから鷲掴みにしてまた牛みたいって言ったのよ!その後も、アノ胸使って援助交際してるとか、全く事実無根な事クラスの奴らに吹き込んだのよ!」
「はぁ?ヤバくないですか?訴えましょう!」
陽葵は先ほど聞いたことだったので、冷静に聞いてはいたが顔を顰める。颯太も聞いていたより酷い有様に絶句してる中、輝が反応する。
「そうだよね!犯罪だよね!私も訴えたかったんだけど・・・美月がもうメンタル駄目で、関わりたくない方が強くて家族と友達はそれを尊重したの。まぁメンタルがおかしくなったのはさらにあるのよ!散々言われて辛った時にあの阿呆、何したと思う?教室で泣いてしまった美月を抱きしめたのよ!マジでバカ!嫌いなお前に抱擁されて落ちつけるわけないじゃん?そのまま。つき飛ばしてうち履きで逃げて、アイツ顔だけはいいから・・・美月、女子にはもっと嫌われちゃってさぁ」
琴音の説明に、美月は居たたまれなくなっているが颯太が手を握ってくれたので気分は悪くなっていない。琴音は先ほどまでの怒りのテンションから一転してその後を話す。
「もう、その時には休みがちになりながら1年の1学期は意地で学校に来てたよね。でも、教室では孤立してるから結構、保健室利用してたのよ。高校生なのに・・・夏休みに入って学校に行かなくなって良くなってたんだけど・・・夏休み明けに昇降口で井出拓海を見た瞬間に美月は震えだして呼吸がおかしくなって倒れたの。
真央に保健室の先生を呼んできてもらったけど、先生も結構年配の女性だったから男性教諭に運んでもらうしかなかったの。体育の先生が近くにいて、背が高くて若いのも良くなかったかもしれなんだけどその人しかいなくて・・・。
運んでいる最中に美月が目を覚ましちゃって、男性に触られている事にパニックになって凄く暴れて、先生も落としてはいけないとちゃんと抱きかかえるじゃん?それが抱擁に感じたらしくてさらに抵抗して、大の大人でももう高校生にもなる大きさの子が暴れたらバランスを崩すじゃない?
でも、先生は落とさなかったけど、美月が先生に覆いかぶさる形で倒れることになって・・・きっと【淫乱】とかの単語が脳裏にかすったのかも。凄い汗だらだらかいて青い顔になって完全に気を失って、もう1年生の間は教室にいけなかった。
保健室の隣の相談室で、自習して出席日数最低限の登校して家にいるんだけど、美月正義感が強いから看護師のお母さんが仕事を辞めたり、休んだりすることを美月が認めなくて・・・自分のせいで母親が仕事できないのもストレスになるって、美月に兄弟がいなかったらもう、駄目だったかもしれないよね?」
「そうだねぇ」
美月は相槌を打ちながらその時の事を思い出す。いっぱい迷惑かけた。迷惑かけたと言ったら怒られるけど、家族にも凄く負担をかけたと美月は思っている。
「その時大学生だった太陽兄は、夜間に取れる授業は夜間に取れるようにって大学にかけあって、昼間は太陽兄がず一緒にいて勉強したりしてたんだって、午後や空き時間は太陽兄の彼女さんも毎日美月のところに来てて、夕方学校終わったら私らも美月の家行って、夜は中学生が部活は18時までだから煌星が必ず一緒に居て。
煌星の思春期なんて、美月の高校1年の2学期のあの事件で完全に霧散してるわよ?バレー推薦出来そうだった、高校蹴って美月と同じ高校に入るために勉強して、美月に勉強教えろって言うもんだから思春期拗らせている煌星が自分に教えてほしいっていうから頑張らなきゃって美月、勉強して教え方とか一生懸命研究して。煌星を高校に合格させて、春から一緒に学校ってなったけど、やっぱり教室の棟には簡単に入れなかったね・・・」
琴音が言葉につまって泣き出した。輝が当たり前のように背中をさすってくれる。優しい奴だなぁ~と思いつつも琴ちゃんにも心配と迷惑をかけたなぁと美月はその続きをみづから話始めた。
「琴ちゃんや真央を同じクラス、井出拓海とは学校側が離してくれたんだけど・・・教室には行けなくて、相談室で自習して、放課後みんなが帰った後に二人に教室に連れて行って貰ったりしてだんだん慣らして、同じクラスに大輝がいたのもよかったかも。全く女性として私に興味がなくて。
でも、穏やかな感じが太陽兄に似てて私が少しビクビクしても気にしないで普通に話しかけて来るし変な事は言わないしね」
「それで、1年の時同じクラスだった人も2年生のクラスに数名はいたんだけど、殆どが傍観してた組で。いいとは言わないけど悪い人たちでも無くて、井出がフラれた腹いせに美月に構ってるって私が言ってた言葉を段々信じてきて。まぁ。拓海が美月好きなのはバレバレだったしね」
美月の話に、琴音が付け足す。美月は井出拓海に好かれているとは全く思っていなかった。普通に友達してたらいきなり暴言を吐き始めた怖い男子だとしか思えなかった。
「そこはわかんないんだけど・・・理系は2クラスだったから、3年も半分は2年と同じメンバー。受験もあるから相性とかで高校もクラスメイトを選んでるのか琴音も、真央も、彩花も、大輝も、大輝と同じ雰囲気の子らも一緒のクラスで・・・」
「1年の時に美月と同じクラスだった人は2年も一緒だったメンバーだけで高3には大分ましになってたね」
「そう。でも・・・やっぱ受験会場は知らない男子ばかりだったから受験は・・・気分悪くなっちゃって駄目で。服装も高2の時から以前のような格好だよ。夏でも制服の上からは大き目のジャージ、私服はその頃には180㎝近い煌星がくれたダボダボのTシャツと同じのばかり着てて。
大輝と煌星と同じ予備校行ったり、そして男子とも少しづつ喋れるようになって、ずっと太陽兄も気にしてた服装も最近やっと着れたって感じかな」
ずっと、黙って話を聞いていた陽葵は美月の颯太に握られた反対の手をぎゅっと握って静かに泣いている。困った。
「陽葵。ごめん!重かったね!全部言う必要はないのに詳しく説明してごめんね!でも、今は楽しいよ!大学のメンバーはいい子が多くてね!颯太も輝もいるし!大丈夫だよ!」
「う~聞きたいとか・・・・言ったくせに・・・ごめんねぇ・・・」
「いやっ知ってたわ!貴方そういう人じゃん!感受性っていうか共感性が強くて、ちゃんと人の気持ち考える人だから全部喋ったのよ。アイツらの肩を持つなとかじゃなくて・・・アイツらの言い分とかも聞くでしょ?それで、ふわっと説明をうちらがしてて、陽葵がアイツらの擁護とかしちゃって、その後に色々知ったら自己嫌悪に陥るでしょ?だから知ってほしくなったの!ね!美月!」
「うんうん!そう!」
美月の励ましに、泣きながら謝る陽葵へ琴音がつっこむ。そう、陽葵はみんなの姉御って感じの人だから、こうなるのは二人は知っていた。人の話をちゃんと聞いてちゃんと対応する。
たぶん、和佳奈や井出との関係も切るわけでは無いと思う。少し反省させてから連絡をして話を聞いてあげるんだとは思ってる。説教もしそうだけど、琴音も美月も陽葵が出会った人を大事にする人だと知っているから全部話した。
「陽葵、陽葵はそのままでいいから!別に私たちの肩を持たなければいけない訳じゃないからね!陽葵がしたいように和佳奈とも会ってね?裏切ったとか思わないよ?私たち」
「そーそー。陽葵が余計にああいうのを見捨てられないの知ってるから、私たちに気兼ねして連絡断つとかはしなくていいからね!我々は会いたくないだけだから!」
美月と琴音が、陽葵の今後についても話すと陽葵は和佳奈についてなかなか辛辣な事を言う。でも、その性格を知っていて友達を続けることが出来る陽葵が凄いとは思う。
「はぁ。二人とも性格良すぎるよ。和佳奈・・・たぶん・・・反省はしてないよ?むしろ、美月が帰って井出を独り占め出来て喜んでると思うよ?」
「あはは。っぽい!」
「思う存分独り占めしてください」
「たぶん、拓海帰ったんじゃね?結構へこんでたし」
「あーあり得る。自由だもんね!奴は・・・」
「雄大もアレですけど、いろんな人いますね」
琴音が同意して、美月が推奨すると颯太が違う予想をする。陽葵も同意する。なんだかなぁと思いながら輝も感想を述べてこの話は終わった。
読んで頂きありがとうございます!
~登場人物~
森 美月21歳 1浪大学2年生 ITビジネス科 SNS名【森美月】
6/12生 何かと人に相談されがちな事が少し気になる今日この頃 体系にコンプレックスを持っている 男兄弟の真ん中 ブラコン 敢えて鈍感 年下に甘い
山崎 颯太21歳 1浪大学2年生 エネルギー制御科 SNS名【Sota.Y】
7/28生 美月の彼氏 幼小中 高校別なのに同じ1浪して同じ大学で再会した 美月が初恋っぽい
松本 琴音20歳 服飾学校3年 SNS名【松本Koto】
2/15生 美月と中高一緒の友達 今年で学校卒業の年。卒業制作に忙しい。
太田 陽葵 20歳 地元の短大に通っている 保育士志望
12/7 大らかで朗らかな性格 よほど悪い人でない限り誰とでも話してみんなと仲がいいタイプの人
永田 輝 20歳 エネルギー制御科1年
4/12生 1浪生 響と同じ年 前髪長めで背が高い 友達思い 家が車で1時間半かかる遠方 割とすぐに酔うが酔ってから普通にお喋り時間が長い 普段より少しお喋り




