●第37話
「王宮騎士団は期限ギリギリまで鍛えるとして。問題は王宮魔法使いたちよね」
私は王宮魔法使いたちが使っている研究室前で、大きく深呼吸をした。
「私が説得できなかったら、ルーベンが交渉をしてくれるとは思うけれど。でもルーベンは忙しいから、なるべく手を煩わせたくないのよね」
ルーベンは私との話し合いのために時間を作ってくれているけれど、一国の王子が予定外の時間を捻出するのは大変なことのはずだ。
これ以上、ルーベンの時間を削るわけにはいかない。
「私に出来ることは私がやらないと。だって今の私は、何の仕事もしていないのだもの」
王宮騎士団を鍛えているのも、王城内に監視魔法を掛けて回ったのも、仕事ではない。
ただ単に組織を潰すためにやったことだ。
それがこの国を守ることに繋がるとはいえ、私は自分の目的のためにしか動いていない。
タダ飯食らいと大して変わらないのだ。
そんな私が、自室でのんびりしていていいはずがない。
「さあ、行くわよ!」
私は自身に気合いを入れると、研究室の扉を開けた。
「ごきげんよう、王宮魔法使いのみなさん」
「ジェイミー様! 先日の結界は見事だったそうですね。あたしも同行したかったです!」
「この魔術式ですが、ジェイミー様はどう思います!? 僕はもっと簡略化が可能だと考えているんですが」
「それよりもこの魔法道具を見てください! ジェイミー様のアドバイスをもとに改良を加えてみました!」
研究室に入るなり、王宮魔法使いたちに囲まれてしまった。
一緒に結界を張ったことで、私の魔法の威力を知った彼らは、私に異様なほど懐いてしまったのだ。
敵対しているよりはいいけれど、これはこれで厄介だ。
全員が一斉に喋るものだから、何を言っているのか聞き取れない。
「みなさん、落ち着いてください」
私の言葉を聞いた王宮魔法使いたちは、落ち着くどころかさらに興奮して話しかけてくる。
「ジェイミー様はあたしの知る中で最高の魔法使いです。そのジェイミー様と話すチャンスを逃すわけにはいきません!」
「魔術式について、魔法に詳しいジェイミー様の意見を伺いたいんです!」
「頑張って魔法道具を改良したので、ジェイミー様に褒めてほしいです!」
だから一斉に喋られると誰の話も聞き取れないのだけれど……もういいや。
先に私の言いたいことを言ってしまおう。
「みなさんの話を聞きたいのは山々なのですが、今日は私からお願いがありまして……」
詰め寄ってくる三人の王宮魔法使いたちを両手で引き離しながら、話を続ける。
「ジェイミー様があたしたちにお願いですか!?」
「どのような魔法をご所望でしょうか!?」
「もしかして魔法道具の作成依頼ですか!?」
「実は、近々みなさんに頼みたいことがありまして……危険が伴うことなので、無理強いはしたくないのですが……」
「危険? まさか王宮騎士団の戦闘訓練に付き合えって言うんじゃないですよね?」
「騎士団との戦闘訓練なら僕はパスです。そういうの、好きじゃないんで」
「私もです。騎士団の戦闘訓練に付き合ってる時間があるなら、魔法道具を作りたいですからね」
また三人が一斉に喋ったけれど、「王宮騎士団との戦闘訓練は嫌」という気持ちだけはしっかりと伝わってきた。
そして直前までグイグイと来ていた三人は、蜘蛛の子を散らすように私の前から去っていった。
私は、自分の研究に戻ろうとする三人を急いで引き留める。
「待ってください。みなさんが戦闘訓練に付き合いたくないことは知っています。ですので王宮騎士団に関しては、これからも私が指導をします」
「それならジェイミー様は、あたしたちにどんなお願いがあるんですか?」
三人の魔法使いは振り返って私のことを見つめた。
この様子を見る限り、簡単には話に乗ってくれない気がする。
どう説得をしようか。




