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減速の冒険者  作者: 加ヶ谷優壮
第一章 〝二つの幻影〟

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第18話 〝運命の出会い〟


 独りでいると、嫌なことばかり考えてしまう。だから、久しぶりに街に出ようと思った。


 誰でもいいから、誰かの側にいたかった。

 この屋敷では得られない、人の存在を感じたかった。


 広大な庭を歩く。

 外に出るその途中で、両親の墓石が目に入った。瞬間、心の内に秘めていた思いが溢れ出す。


「――どう、して」


 野次馬なんかを庇って、死んでしまったのか。

 自分を犠牲にしてまで、そいつを助ける必要があったのか?

 母さんを泣かせてまで、そいつの命を護る意味はあったのか!?

 

「父さんが……!」


 ――やめろ、言うな。

 

「父さんが死ななきゃ、母さんは死ななかった……! なに、勝手に死んでんだよ! この――」


 ――やめろやめろやめろ。

 それだけは、


「人殺し――ッ!!」


 胸の内から溢れ出る激情に抗えず、オレは墓石の前でそう叫んだ。

 人の命を救った父を『人殺し』と罵った。

 胸が痛い、吐きそうだ。


 でも、間違ったことを言っただろうか。

 父が間接的に母を殺したのは紛れもない事実だ。それに、それに、


「もっと、生きてほしかった……」


 憧れだったから。

 尊敬していたから。

 好きだったから。

 だから、オレは――父に野次馬を見殺しにしてほしかった。



 §



 十五歳を迎えた日、オレは冒険者となった。

 親父のことは関係ない。

 ただ、どうしてもSランク冒険者になりたくて、オレはギルドの門を叩いた。


 準備も怠っていない。

 新しい剣も買ったし、家にあった天の宝玉を使ってイドラも手にした。


 最強と謳われる『劇場のイドラ』を得ることはできなかったが、神速(ディヴェロチタ)という『洞窟のイドラ』を手にすることができた。

 強力な能力だし、不満はない。

 断じてない。


 だが、仲間に関しては不満があった。

 どいつもこいつも、本気でSランク冒険者を目指そうとしていない。

 最初から自分には無理だと諦めている。

 その態度が(しゃく)に障った。


 こんなパーティーから抜けてやろうとも思ったが、仲間の技術を盗んでからにしようと思いとどまった。


 そんな不満を抱えていた――ある日のこと。


「――もういい、こんなパーティー抜けてやる!! 俺はお前らみたいな〝腰抜け共〟とは違って、Sランク冒険者にならないといけないからな!」


 酒場の席から、そんな声が聞こえて。


「お前、名前は?」


 気がつけば、銀髪の少年にそう声をかけていた。水のように透き通った青色の瞳に見つめられる。


「俺は……ナギサ・グローティーだけど」


 運命の出会いが、あった。



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