第315話 大団円……
「嘘でしょ。あの怪我がエコーバードに握り潰されて出来た怪我だったなんて……」
センの魔法で全てを見たメロディは、衝撃を隠せないとばかりに、よろめいた。
死体の状態から考えれば、容疑者はミュジカかポヨポヨビーストの二択以外に考えられなかったし――
そして、もう一つ。
メロディがミュジカを犯人だと確信するに至った理由が、あったのだ。
「じゃあ何であの子は、この子達を必要以上に庇ってたのよ……」
それはポヨポヨビーストがケンスを殺した犯人だと街中に認識されてから、今まで街に寄り付く事すらなくなっていたミュジカが、急にメロディに接触するようになってきたのだ。
そして、食べればポヨポヨビーストが美味しい事を伝えてきたり、意図的に人間に危害を加えるような事なんてしない筈だなんて。
どこか後ろめたそうな様子で訴えてきたのである。
その態度からメロディは、ミュジカこそが子ども殺しの真犯人であり、罪の意識からポヨポヨビースト達を庇っているのだと考えていたのだが――
「……もう俺は街の連中には嫌われてたからな。俺がコイツ等の罪を、全部被ってやればいいって思ってたんだよ」
そこでいつの間にか起きていたミュジカの口から、真実が告げられる。
死体の状態を知ったミュジカは、自分が犯人でない以上、ポヨポヨビースト達がケンスを殺した犯人だと思い込んだ。
それならば、まだ街の人間に慕われていたポヨポヨビースト達が、街に溶け込める可能性を残す為に。
自分こそが犯人だと疑わせるべく、あえて怪しい態度を取ったのである。
「街の様子を見た感じ、あんまり意味はなかったみたいだけどな……」
「それは――」
だが、メロディはポヨポヨビーストよりミュジカを守ろうとした。
ミュジカこそが犯人だと思いながら、それをあえて街の人間には一切伝えず、ポヨポヨビースト達がケンスを殺したのだという噂を否定せず。
むしろ、死体の状況から、それ以外は考えられないとばかりに肯定した。
誰もミュジカを疑わないように。
「……ごめんな。お前等の事、信じてやれなくて」
「ポヨポヨ!」
ミュジカが申し訳なさそうにポヨポヨビーストの身体を撫でるが、ポヨポヨビーストは何も気にしていないとばかりに、嬉しそうに身体を擦り付ける。
実際、本当に何も気にしていなかった。
ポヨポヨビーストからすれば、すぐ傍に居ながらケンスを守れなかった時点で自分達が殺したと言われても仕方ないし。
自分達の為にミュジカが動いてくれていただけで、嬉しかったのだから。
「それで二度とケンス君のような被害者を出さない為に、ポヨポヨビースト達は今まで以上に周辺を見回るようにしたそうです」
そこで研一から服を渡されて着替えていたセンが、二人の話に加わる。
ポヨポヨビースト達は何も悪くないという流れを強化し、当初の遠征の目的であったポヨポヨビースト達の退治という目的を消したかったのだ。
「今まで以上に、ね……」
センの言葉にメロディの表情が、何か苦い物でも口に含んだように曇る。
そして一瞬だけチラリとポヨポヨビースト達に視線を向けると、話しているセンの方に視線を向け直した。
「そうなんです! 自分達が嫌われているから、それまでみたいに魔獣に襲われている場面に加勢しようとしても追い払われてしまう。それなら街の人達に危険が及ぶ前に、先に自分達で魔獣を倒しておく事にしたんですよ!」
人間は簡単に死んでしまう。
だが、もうケンス殺しの犯人だと思われてしまったポヨポヨビースト達は、人間に近付くだけで追い払われてしまい、守る事は出来ない。
それならば先回りして魔獣達を倒す事にしたのだ。
もう二度と、ケンスのような悲劇を生み出さない為に。
「この子達は倒さないといけないような悪い魔獣なんかじゃないんです! とっても良い子達なんですよ!」
「なるほど。よく解ったわ……」
「ですよね!」
センの話に全て合点がいった、とばかりにメロディが頷く。
これで無駄にポヨポヨビースト達が殺される事もないと、センは胸を撫で下ろす。
初めて見た時から凄く可愛いと思っており、何とか退治せずに済む道はないかと悩んでいただけに。
ポヨポヨビースト達が子どもを殺してないと知った時は嬉しかったし、これで全て解決だと安心していた。
「コイツ等を生かしておく事が出来ないってね!」
だからこそ、反応が遅れてしまう。
メロディは隠し持っていた魔武具を使い、一番近くに居たポヨポヨビーストに襲い掛かる。
魔武具の名は『エコーカイザー』。
それは古の時代。
空の覇者と謳われたエコーバードの中でも、最も強く多くの人間を殺して帝王等と恐れられた嘴から作られた、ソヌス国の党首に受け継がれてきた宝剣であり――
刺突に特化した鋭い形状に加えて、秘められた膨大な魔力は、打撃や衝撃に強いポヨポヨビーストの身体を貫き、核を撃ち抜けば仕留める事さえ出来るだろう。
(ポヨポヨビーストには心音のように音を鳴らす場所がある。そここそがポヨポヨビーストの核であり急所!)
そして、高位の音魔法の使い手であるメロディには、集中するだけでポヨポヨビーストの格の位置が手に取るように解かる。
宝剣の正統後継者であり、裏で剣の修練を積んでいるメロディの一撃が吸い込まれるようにポヨポヨビーストの核を打ち抜く。
筈だった。
「あの話の流れでこれは納得出来ないんで。さすがに邪魔させてもらいます」
けれど、そんな悲劇は起こらない。
どこかメロディの雰囲気がおかしい事に気付いて警戒していた研一が、猛然と割って入り、メロディの剣を受け止めていたからだ。
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