機械仕掛けの終末
ドリフターズの時間ですよん★
『困惑』杉原清人
「ティア・マティナ?」
「あァそうだ。俺の真名だァ。知れて良かったなァ」
知恵の盃のように振る舞うこの女は誰だ?
俺は少なくとも知らない。
黒尽くめのダボついたローブから覗くのは病的に白い肌と整ったー整いすぎて恐怖すら覚える様な顔立ち。
若干犬歯が長いだろうか。あとは研究者然とした丸眼鏡を掛けている。
一部深い隈が刻まれているがそれでも十分以上な美女。
その容姿からは全く誰なのかは分からなかった。
だが、デウス・エクス・マキナは知っている。
デウス・エクス・マキナは神々の酒宴に参加しなかった神の一柱だ。
まさか知恵の盃がデウス・エクス・マキナ?
「丁度良く知恵の盃の欠片を回収出来たからなァ、真の姿ってやつだァ」
そうやって手の内をこちらに向けると金色の破片が出現した。
「これが、知恵の盃の欠片」
確かめる様にそう呟く。
「おォ、これのお陰でやっと本来の姿に戻れたァ。テメェには感謝してるゥ、が。テメェは今回何を犠牲にしたか知るべきだァ」
唐突に視界が切り替わりー壊れた街を見た。
広がるのは一面の紅い色彩。
俺が力を望んだから死んだ人々。
俺が力を望まなかったら生きていた人々。
その中に一人の青年が混ざっていた。
「リガルド…」
そう、真っ先に案内をしてくれて、一緒に酒を飲んだ彼は物言わぬ死体と成り果てていた。
また鏖殺してしまった。
ただ、前と唯一違う事、それは面識だ。
彼らは余所者の俺にも気さくに挨拶をしてくれたし、けっして邪険には扱わなかった。
俺はそれを知っている。
喪失感から涙が溢れた。
髪の毛を掻きむしりながら暖かい布団の中で泣き喚きたかった。
そんな事をしても誰も救われちゃくれないが。
けれど、罪悪感は消えない。
改めて俺の無知が憎かった。
何故こんな事になると想定出来なかったのか。
他に案は無かったのか。
「感傷のところ悪いけどよォ、アルクィンジェをくたばらせてから、だろォ?」
くたばらせて?
何だ?
これだけ殺してしまったのに本命は生存?
巫山戯るな。
奥歯を噛み締める。
まだ俺は殺せていないならー。
心象解放は数多に分岐する可能性からたった一つの最適解を導き出しそれ以外の可能性を削ぎ落とす事、そして魔獣の力を解放する事で初めて効力を発揮する。
今俺が知恵の盃との会話中でさえ無限の分岐が存在する。
可能性は削ぎ落としても次の瞬間には瞬く間に生まれ出る。
Q.じゃあ、どうする?
答えはー。
「それは早計だァ。言っただろォ?楽しい終末の提案をしに来たってよォ」
「……」
「まァ、ちょっとした例だァ。コレ、押せよォ」
次の瞬間、俺は何かのスイッチを持っていた。
「これは…」
「そのスイッチがテメェにくれてやる終末だァ」
飾り気はない。ただ、紅い色が付いているスイッチ。
まるで自爆スイッチのようだ。
だから。
俺は躊躇する事なくスイッチを押した。
「さて、聞きたいことは後で聞いてやっからァ、それまで待ってろ」
そう言って知恵の盃は消えー。
俺は酷い終末を見た。
成る程、機械仕掛けの終末か。
俺はこの目で初めてのー。
爆破オチを見た。




