君が見せたかった光景は?
みなさぁん!チートのじーかんーだよぉー!
『決意の少年』杉原清人
「アル、クィンジェ…!!」
急に風が吹いた。
風はリリップの元に吹き荒れ、収束する。
余りの風圧に目を瞑り、そして次に開けた瞬間。
「よく、見てて」
ガラガラと音を立てながら黄死筵邸が崩壊し土煙を立てた。
咄嗟に天地深夜を呼び出しこちらに飛び出す瓦礫を切り裂き、回避しながら外へと飛び出す。
外は暗かった。まるで夜の帳が下りたかのようだ。
違う。これは巨大な影だ。
何の脈絡も無しに巨大生命体が出現した。
いや、これはー魔獣?
リリップは見ててと言った。つまりはこれが心象解放状態なのだろう。
「これが、心象解放か…!」
ゾクゾクとした感覚を覚えた。
気分が高揚して仕方がない。
これが新たな力!
肌で感じる圧倒的な力。
「Potentilla!!」
Potentilla、それは雉筵の英名。
その花言葉はー。
「これが、心象解放。輝ける黄薔薇」
明るく輝いて。
邸内で見た白い骨と黄色の花弁が黄金色の鱗粉を纏い煌めく。
綺麗だと思った。
凡そその姿は禍々しく見るものを狂わせるような造詣をしている。けれど、そこには清廉さが同居していた。
禍々しく神秘的でもあるそのチグハグさはー恐らく彼女自身の心の在り方に起因するのだろう。
ひたすらに純粋で、自分に厳しく他人に甘い。
ルピナスみたいだ。
もし、俺がもっと早くに彼女と出会っていたなら心底彼女に惚れていたのだろう。
「凄い…」
思わず感嘆の言葉を漏らす。
「ンンッ?その手は食いませんよ?当然deathねンンッ」
「え…?」
ゆっくりと緩慢な動作で手を振り上げる。
その所作には一切の焦りを感じなかった。
だからだろうか。俺は咄嗟にアルクィンジェに背を向け逃げ出した。
「神の気まぐれよ、在れ」
それは剣に見えた。
実際は幾千もの光の束だったかも知れない。
けれど確かな事。
その光の束はリリップを呑み込み。
その体を余す事なく消し飛ばしたということは分かった。
灰の一つも残してはくれなかった。
彼女は揺らめくように命を掻き消されたのだ。
「知恵の盃回収、death!いやぁンンッ、これで有給取れますねぇ」
最早意味が分からなかった。
人の命が有給と等価?笑えない冗談は吐かないでくれ。
とー某然と立ち尽くす俺に狂った相貌は向けられた。
某然と立ち尽くす俺の心象、それは言うまでも無く。
激怒であった。
「返せよ…。それはリリップの知恵の盃だ」
「ンンッ?逃げた弱虫が何を喚いているのdeath?」
俺は、逃げた俺の弱さが許せない。
俺は、あり得ない等価という理不尽が許せない。
俺は、自分の無力がただひたすらに。
呪わしい。
「テメェ!それ以上やったら!?」
構うものか。
コイツを殺せそえすれば良いんだよ。
「ヒャハ?」
くふふっ。
俺の番だぁ。
ヒロインは殺さなくちゃ、ね?




