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第十話 プレゼントkiss

 ソファーに倒れ込み、キスを続ける。

 瞬の唇が、徐々に首筋へと落ちていく。

 そこで、真希は我に返った。


「ちょっと、待った」

 急に大声を上げた真希を訝ってか、瞬が首筋に埋めていた顔を起こす。

「何、真希ちゃん」

「今、何しようとした?」

 その問いに、彼は少し顔を赤らめた。

「何ってそりゃ、ナニを……」

「このエロガキ。オヤジ臭いこと言わないでよ」

 真希は瞬の頭を叩いて、ソファーから立ちあがる。

「えー。真希ちゃん。さっきまでせっかく良い雰囲気だったのに。ここまできてそれはないでしょ」

 真希は瞬に向かってベーっと舌を出した。

「今日はここまで。明日はレコーディング控えてるし、今まで強行スケジュールだったんだから、休まなきゃ」

「大丈夫。俺、若いし元気だから」

 瞬が元気をアピールするようなジェスチャーをとる。

「ダ、メ。あんた未成年じゃないの」

「そんな、あと、一週間もすれば、誕生日くるよ」

「だから、それまでお預け」

 真希はそう言って、床に落ちていた鞄を拾う。

 そそくさと瞬の部屋を出て、ドアを閉める。

 瞬が追ってくる気配はない。

 真希はドアに背を預け、大きく息を吐き出す。

 瞬のせいで、早くなってしまった鼓動をおさえるように胸に手をあてた。




 一週間後。

 新曲のプロモーションビデオの撮影を無事終え、真希とWinのメンバーは撮影スタジオをあとにした。

 この一週間。新曲のレコーディングや、ジャケット撮影など。忙しい日々が続いていた。瞬と二人きりになることもなくなり、真希は瞬に告白され、自分も瞬に告白したことが夢だったような気さえしていた。


「あ、そうだ。真希ちゃん」

 芳樹に声をかけられ、駐車場へと向かう階段を下りながら、彼の方へ顔を向ける。

「俺とユウト。今日はタクシーで帰るから」

「え? 何で?」

 驚いて問うと芳樹は悠斗と視線を交わした。

「今日はシュンの誕生日だろ」

 悠斗がニヤニヤと笑っている。確かに、今日は瞬の誕生日。クリスマスだ。だが、それとタクシーで帰るのと何の関係があるのか。

「だからそれが何」

「もう、真希ちゃんってば。俺たちに言わせないでよ。って訳で、俺達行くな。シュン頑張れよ」

 悠斗は真希の声を聞いているのかいないのか、芳樹の背を押しながら瞬に片手をあげて玄関へ行ってしまった。

「ちょっと、シュン」

「何? 真希ちゃん」

 嬉しそうなニコニコ笑顔で問い返されて、真希は思わず脱力してしまいそうになった。

「あんた、まさか私たちのことあの二人に言ったんじゃ……」

「あったり前じゃん。ちゃんと二人には、真希ちゃんは俺の物宣言しといたから」

 馬鹿じゃないの。と言いたかったが、口をパクパクするだけで声がでてこなかった。

 恥ずかしい。恥ずかしすぎる。

 真希が声を出せずにいると、瞬は何を思ったのか真希の手を握り階段をおりはじめた。

「今日は、俺が運転するからね」

 上機嫌でそう言われ、真希はつい彼に車のキーを渡してしまった。




 瞬の運転で連れてこられたのは、有名な高級ホテルだった。

 予約を取っていたらしく、真希は驚きを隠せないままエレベーターに乗って最上階へとたどり着いた。

 案内された部屋に通され、真希は呆然としていた。

 広すぎる部屋に、高級そうな家具がおいてある。

 正面の窓には、素晴らしい夜景が広がっていた。

「どうしたの、この部屋」

 やっとのことで絞り出した声を聞きつけたのか、瞬が真希の横に立って夜景を眺めながら答える。

「借りた」

「借りたって、この部屋、ものすっごくバカ高いんじゃ」

 有名な高級ホテル。しかも最上階の部屋。一泊いくらか考えるだけで恐ろしい。

「真希ちゃん。そういう無粋なことは言わないの。さ、座って」

 真希は瞬に導かれるまま、手近にあった椅子に座る。

 瞬はその正面の椅子に腰かけた。そして、真希の前に何かを差し出す。

 小さな黒い紙袋だった。ピンクのリボンが付いている。

「何これ」

 尋ねると、瞬は嬉しそうな笑みを浮かべた。

「開けてみて」

 言われて、真希は紙袋の中から箱を取り出した。

「あ、コレ」

 箱の中には、月と星をモチーフにしたデザインネックレスが入っていた。

 いつかどこかで見た。

 そう、女優の三上理沙が持っていた雑誌に載っていた物だ。

「本当は、指輪とかの方がいいかと思ったんだけど、真希ちゃん。このネックレスが良いって言ってたからさ」

 少し、恥じらうような笑顔を見せる瞬。

 何気なく言ったことを憶えていてくれたのか。

 真希は嬉しくて、それなのに、なんだか泣きたくなるような、幸福感を味わっていた。

「でも、私。瞬にプレゼント何も用意してない」

 不意に気づいて、大声をあげてしまった。

 瞬は不快をあらわすこともなく、穏やかな笑顔を真希に向けた。

「俺は、真希ちゃんが居てくれたらそれでいいよ」

 ああ、敵わないなぁ。

 本当に、敵わない。

 真希は貰ったネックレスをつけると、立ちあがり瞬の前に立つ。

 瞬が真希を見上げる。

 真希はにっこりと笑顔を瞬に向けた。

「お誕生日おめでとう。あと、メリークリスマス」

 真希は瞬の首に腕をまわした。


 可愛い年下のサンタに、キスをプレゼントするために。




ここまでお付き合いいただき、ありがとうございました。

いかがでしたでしょうか?


今作はチャリティーOne for All , All for One and We are the One ~オンライン作家たちによるアンソロジー~VOL4(2012年1月迄)発売されていた電子書籍に収録されていたものを加筆修正した物となります。


なろう投稿は前後致しましたが、今作は『アイドルLovers』に出てくる真希と瞬のお話になります。時間軸でいいますと、『サンタにKiss』→『アイドルLovers』です。


Winや真希たちを書くのは存外に楽しくて、またいつか彼らを書けたら、もしくは彼らの周りにいる人達をフューチャーして書けたらいいな。などと思っております。


今作に出てくる工藤仁やら、アイドル~に出てくる脇キャラたちもいることですし。


てことで、今回は、サンタ~とアイドル~を芸能界シリーズとしてシリーズの括りにいれました。


いつか、書ける日が来るといいなぁ。と、願いつつ。


次回は、同じく上記アンソロジーのVOL3に掲載されていた『ヒナの王子様』をアップすることになりそうです。


そちらは、こちらと違い、ワイワイガヤガヤ。とした恋愛ものになります。


では、また。

お会いできることを願って。


愛田美月でした。

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