第1話:クズなイケメン四人組発見!
クズなイケメン四人組を、ただ観察するはずだった話です。
気軽に読める会話多めのラブコメです。
私は桜林大学の2年生、吉野 瑞希。人間観察を趣味としている。
この学校には、イケメンの仲良し四人組がいる。
全員顔が良くファンクラブができるほどモテるのだが、同時に悪い噂が絶えない。
最近の楽しみは、学食でその四人組の会話が聞こえる位置で、関係性や人間性を想像しながらご飯を食べることだ。
昼休み、私は食堂に来て、ご飯を食べていると向こうからあの四人がやってきた。
辺りを見回しながら席を探している男が来た。
この男は雨宮夜霧、3年生。
「…やはり食堂はいつも混んでますね。空いている席を探しましょう。」
この男は言い寄られるとすぐに完璧な作り笑顔で、女の子のハートを貫いている。
恐ろしいやつだ。
見た目だけで言うとミステリアスな執事といった印象だ。
「めんどうやなぁ!なんでこんな混んでんねん。腹立つわ〜」
やたらと声がでかいこの関西弁の男は鶴見 湊同じく3年生。
この男は顔がタイプな女の子を見るなり手当たり次第にナンパしてお持ち帰りをしていると豪語している。
この男が、この四人の輪の中心にいる気がする。
「当たり前です。みんな同じ時間に来るのですから」
メガネをかけたこの男は神宮寺理人、3年生。
この男は策士で、優しさの仮面を被った皮肉屋。
口を開けば皮肉が出るが、見た目は上品で貴賓あふれる立ち振る舞いをしている。
裏で何をしているかわからないが、なんでもできる男。
「俺さぁ…早く座りたいんだけどぉ。」
最後にふらふらと三人についていくこの男は風間 澪、3年生。
家泊めてと言っているところの目撃情報が多く、お金をくれる人についていく習性があるようだ。
同級生の女子は期待をしているようだが、私は正直、絶対に泊めたくない。
見目麗しく、非常にモテる男達ではあるが、近づくと痛い目を見るのはわかりきっている。
そして私はこれからそんな彼らのランチタイムの会話を聞きながら人間観察をするところだ。
彼らの方が見える位置でランチを食べ始めるが、気付いた様子はない。
四人は空いている席を見つけたようだ。
夜霧がふっと微笑んだ。
こんなもの、世の女子が見たら卒倒する。
「おや、あそこが空いていますよ。ちょうど四人分です。」
「お、ラッキーやん。」
夜霧が最初に席に座り、その隣に理人が腰を下ろす。
湊は理人の向かいドカっと座り、澪はだるそうに椅子を引いて夜霧の前に座った。
理人は丁寧にトレーを置く。
「ところで、今日の午後の講義サボります?私、他にやることがありまして。」
怖いな、何をすると言うのだ。
「いいねぇ…サボろぉ!俺ぇ、寝てたい〜」
「お前、いっつも寝とるやろ。授業中もかわらん。」
「えへへ〜」
授業は寝るものではない。
夜霧は切れ長の目を細めて理人に耳打ちし、理人が呆れたように笑った。
わずか数メートルの距離。何か恐ろしいものを見た気がする。
これが、私のちょっとした楽しみだ。
「つーか、昨日また合コン行ってんけどや、一人めっちゃ可愛い子おってん!」
メガネを直しながら
「…で、持ち帰ったんですか?」
「当たり前やん!俺を誰やと思っとるん、聞くまでもないやろ!ガハハ」
下品すぎる話題だ。
微笑みを崩さず、
「ふふ…相変わらずですね」
下品な笑い声が食堂の喧騒に響く。
周囲の女子学生がちらちらと視線を送っているが、当の本人たちはまるで気にしていない。
澪が頬杖をついて、
「ねぇ湊ぉ、その子の家泊まったの〜?」
「せやで〜。朝起きたらもうおらんかったけどな!」
メガネの奥で目が細められ、
「最低ですね…」
その通りである。
「お前に言われたないわ。この前も後輩に奢らせとったやんけ。」
「あれは彼女が勝手に払っただけですよ。」
理人が涼しい顔で言う。
四人の中で一番紳士的な顔をしているくせに、だからこそタチが悪い。
夜霧が箸を止めて、ふと。
「そういえば昨晩のお相手、連絡先消してしまいました。まあ困りませんけど。」
本当にクズだ。
「うわ、お前ほんまにクズやな〜」
「貴方にだけは言われたくないですねぇ。」
「二人とも似た者同士じゃん〜」
と澪がくすっと笑う。
安心しろ、みんなクズだ。
一瞬、間が空く。
夜霧と湊が同時に澪を見たが、当の澪はすでに興味を失っていた。
理人が呆れたように小声で、
「今週何人目ですか…」
夜霧も小声で、
「数えてませんよ。理人さんこそ、この前の後輩さんとはどうなったんです?」
にこやかに
「円満に終わりましたよ。…金銭的な意味で。」
怖い日本語・・・・
顔がいいだけあって男四人、揃いも揃って女癖が悪すぎる。
顔面レンタルさせてくれないかなぁ
澪が急にあくびをする。
「ふ、ぁ…ねむぅ……帰っていーい?」
「まだ飯半分も食うてへんやんけ」
「今お腹すいてないしぃ、誰かのお財布でデリバリーでも頼もうかなぁ」
夜霧が微笑みながら、
「あら、それならワタシの代わりに注文してくれません?今日も人に奢ってもらう気分でして。」
「知らんわ!自分で頼めや!」
まだ食べるのか。
理人が立ち上がり、
「…はいはい、じゃあ私がまとめて注文しますよ。その代わり後で割り勘ですからね。」
「え、お前が払うんちゃうん?」
笑顔で、
「死んでも嫌です。」
ママじゃん…
東海は笑顔を崩さないまま、しっかり線引きをする男だった。
優しそうな顔して絶対に損はしない。
そこがまた良い。
理人は笑顔を崩さないまま、きっちり線は引いているらしい。
優しそうな顔立ちのくせに、絶対に損はしなさそうだ。
「なあなあ!さっきからあそこの席のやつ、ずっとこっち見てへん?」
湊が私のいる方向を顎で指した。
…バレたか?
理人のメガネが光る。
「ん?ああ、確かに…誰です?あれ。」
夜霧が目を細めた。
「さあ……見覚えがないですね。」
反射的にちょっと顔をしかめて、目を逸らす。
澪は気だるそうにちらっと見る。
「ふぅん……普通の人だねぇ。」
言ってくれるじゃないか。
「なんやろな!俺らのこと知っとるんかな…ファンとか?」
メガネを押し上げて、
「自意識過剰じゃないですか。」
「いやお前、ちょっと嬉しそうやん」
「…」
四人の目が一瞬だけ私を捉えたが、すぐに興味は散っていった。
この微妙な感覚は陰キャにしかわからないだろう。
「あ、なんか今めっちゃ嫌そうな顔されたんやけど。」
陽キャのこういう発言が一番怖い。
「ふふ…嫌われてますねぇ〜。新鮮でいいじゃないですか。」
そう言って怪しく微笑む。怖い。
「いやなんで嬉しそうやねんお前。」
理人が呆れなら言った。
「…まあ放っておきましょう。他人の顔色を気にするほど暇じゃないでしょう、アナタ。」
「それもそうやな。あー、午後マジでどないするー?」
澪がうとうとしながら、
「サボるって決めたじゃぁん……もう考えなくていいよぉ……」
そのまま机に突っ伏した。理人が肩を叩くが反応はない。
チャラ男くん、女癖最悪だけど悪い奴ではなさそうだ。
なんというか…裏表がない。そこだけは信用できるな、多分。
伸びをしながら、
「あー、今日このあと暇やしナンパでも行こかな。」
理人が呆れたように、
「またですか。懲りませんね本当に。」
「だって可愛い子見たら声かけるやろ普通。」
イタリア人なのか。
完璧な笑みを浮かべて、
「普通ではないと思いますよ。」
「うっさいわ!お前は毎日違う女と寝るほうがおかしいやろ!」
「愛がなくても体は満たされますから。」
目が笑っていない。会話が、ゲスい。
「最低の発言を笑顔でするなや!」
湊は顔を真っ赤にして怒鳴っているが、本気ではない。
この二人のやり取りはほとんど漫才だ。
理人が吹き出す。
「……ぷっ。」
口元を隠して笑っていた。
この男も普段は作り笑顔を貼り付けているが、これは素の表情。
こんな顔もするんだな。
湊が理人を指差す。
「おい、お前今笑ったやろ!俺のことバカにしとったやんな!?」
「いえいえ、微笑ましいなと思いまして。」
「どこがやねん!!」
澪が顔を上げた。
「うるさぁい……!静かにしてよぉ。」
「寝とったくせによう言うわ!」
理人はメガネを直し、余裕の顔に戻る。
隙のない男だ。
夜霧がふと思いついたように声をかけた。
「そういえば皆さん、来週の金曜空いてます?知り合いのパーティーに誘われたんですが。」
「お、ええやん!女の子おる?」
夜霧が静かに微笑んだ。
「もちろん。上玉揃いですよ。」
怖い。
湊はノリノリだ。
「行くわ!」
理人は即答した湊を見て、ため息をつく。
「現金ですねぇ…」と、息を吐く
気づけばランチは食べ終わっていた。
もう少し聞いていたくて、飲み物だけで粘る。
財布を見て深くため息をつく。
空のトレーの前でドリンクだけをちびちびやる姿は、なかなかに虚しい。
むくっと起き上がって
「ねぇ理人ぉ、やっぱお金貸してぇ。」
「…何回目ですかそれ。」
「んー……わかんなぁい」
理人は額に手を当てた。
「この人ほんとに……」
「いいじゃないですか理人さん。減るもんじゃなし。」
箸を持つ手がわなわな震えている。
「減るんですよ。私の財布から。しっかりと。」
「俺もちょっと今月ピンチやねんなー。」
「知りませんよアナタの事情は。」
三方向から金をせびられている理人。
顔は穏やかだがこめかみがぴくぴく動いていた。
かわいそうに。
一番まともそうなのに。
「……はぁ。千円だけですからね。利子つけますよ。トイチで。」
前言撤回、闇金だ。
「闇金か!」
湊と同時にツッコんでしまった。
ちょっと飽きてきた…けど、なんとなく目が離せない。
だらだら居座る四人に、周りの学生たちも迷惑そうな顔をし始めている。
特に理人と夜霧の間の席は通路を塞ぎ気味で、人が通るたびに睨まれている。
湊がひらっと千円を受け取った。
「サンキュー!やっぱ持つべきものは友達やわ!」
いいんだ、トイチで…
「友達じゃないです。搾取先です。」
ツンデレだ。
「ひどっ!」
澪も理人からお金をもらう。
「理人、やっさしぃ〜。」
こっちもか…いいのかそれで。
「何が優しいですか。地獄に落ちろと思ってますよ。」
夜霧は一切たかる気配もなく、優雅にコーヒーを飲んでいる
この人はまだまともなのかもしれない。
いや、セフレに奢らせているとか言ってたな。
…などと考えていると、向かいの女子二人組が夜霧に話しかけに行った。
「あの、すみません。写真一緒に撮ってもらえませんかー?」
夜霧は静かに微笑んだ。
「ええ、喜んで。」
夜霧はすっと立ち上がった。
さっきまで奢らせただとの言っていた男が、今は無料でファンサービスをしている。
どれが本当の顔なのか、見当もつかないところが恐ろしい。
それを見た湊が
「切り替えはっや」と半歩引いた。
同感だ。
女子二人は夜霧を挟んで、頬を赤く染めながらスマホを構える。
夜霧は慣れた様子でポーズを取り、完璧な表情を作る。プロだ。
「きゃー!ありがとうございます!あの、連絡先とかって……」
女子が言いかけた瞬間、夜霧は人差し指を唇に当てた。
「秘密、ということで。」
断っているのに、切り捨てない。
さすが魔性の男。伊達ではない。
これが一本釣り…いや、2本釣りか。
それを見た湊が口笛吹いた。
「かーっ、あざといなぁお前!!」
理人がぼそっと、
「…あれで何人引っかかったんでしょうね。」
たしかに。
夜霧は席に戻りながら、
「さあ?数えてませんよ。減るもんじゃなし。」
減らんやろ。
理人がじとっとした目で、
「……さっき私に言ったことそのまま繰り返さないでもらえます?」
そこに湊が身を乗り出した。
「しっかし、もったいなー。あの子ら結構レベル高かったやん」
確かに可愛かったよね。
「まあ、そうですね。でも今はそういう気分じゃないので。」
恐ろしい男。
「お前って、ほんまずっと気分やな……」
理人がちらっと時計を見た。
「そろそろ行きません?昼休みも終わりますし。」
ようやく動き出す気配。
私のドリンクはとっくに底をついている。
四人がぞろぞろと立ち上がったのを見届けると、
私はその背中を見送りながら、空のトレーを手に取った。
ここまで読んでいただきありがとうございます。
次回から少しずつ関係が動きます。クズ男ってなんか惹かれますよね。




