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77番目の使徒  作者: ふわむ
第二章
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魔道具の使い道2


その後も実験を続けて、いくつかわかったことがあった。


まず、当初使途として考えていた魔力素材の属性判定器としては使えそうもないことがわかった。なぜかというと、魔法陣を光らせるためには一定量の魔力が必要で、それに満たないと感知しなかったからだ。


実際に素材工房で扱う魔力素材を乗せてみたが、魔石を満タンに充填できるくらいたくさん乗せるとようやく光る、といった具合なのだ。

極一部の希少な魔力素材には、それ一つで魔石を満タンにできるような高い魔力量を持つものもあるが、大半の魔力素材はそうではない。少量では魔法陣を光らせることができないのに、たくさん乗せようにも箱の魔道具自体がそれほど大きくない。だから魔力素材の属性判定器としては使いにくいのだ。残念。


それと、これは後から気づいたことだが、もし微弱な魔力でも感知するようなら、私やラミアノさんが手で触れただけでも光る、なんて可能性もあったかもしれない。

兎にも角にも、この魔法陣はある程度の強さの魔力で接触しないと反応しないことがわかった。


他にも。

一号に属性の異なる魔石を置いたらどうなるか。

一号と二号、両方に魔石を置いたらどうなるか。

一号と二号に全種類の魔石を適当に置いたらどうなるか。

・・・これらの検証をしてみた結果、一号と二号に乗っている属性の中で魔力量が一番多い属性の色で光る、ということがわかった。


例えば・・・。

一号に光属性と水属性の魔石を置く。

これで黄色に光るということは、光属性の魔石の方が水属性の魔石より魔力量が多い、ということになる。逆に青く光れば水属性の魔石の方が魔力が多い、ということだ。


一号に光属性の魔石を置き、二号に水属性の魔石を置く。

これでも結果は同じになる。乗っているのが一号か二号か、ということは関係ない。

一号と二号に乗っているものの中で比較され、より多い魔力の属性を判別してくれるのだ。


そして属性の種類が増えてもこのルールが適用される。

火属性、水属性、風属性、土属性、光属性、無属性。一号と二号にこれらの魔石を適当に乗せた場合、一番総量が多い魔力の属性を判別してくれる。

だから、適当に乗せた結果光属性が多いと判別していて黄色い光が出ているときに、その状態から水属性の魔石を追加で乗せていけば、水属性の総魔力量が光属性の総魔力量を超えたところで青い光に変わるのだ。


「ふーん。結局魔力の充填には使えないってことが確認できただけかー。転送魔法陣の試作品って聞いたときは仕事の効率上がるかと思ったんだけど、ぬか喜びだったねー」


ラミアノさんは腕を組んで、期待外れだったように感想を述べた。


でも、私は違う感想を持った。

これは便利だ、と。


仮に素材工房の一階と二階に設置したらどうだろうか。

一階と二階で光る色を設定できて、相手が設定した色を見ることもできるのならば・・・。


二階の私達「運搬止めしてほしい」→黄

運搬作業員「了解」→青

運搬作業員「運搬止めしました」→赤

二階の私達「了解」→青


こんな感じで色の意味を決めておくだけで、私達と運搬作業員との連絡が取れる。

わざわざ人が一階と二階を往復する必要がなくなるわけだ。


この使い方をするかどうかはさておき、便利だとわかったがゆえに確認すべきことがもう一つある。

それは通信可能な範囲の確認だ。

この魔道具の有効範囲って、一体どれくらいなんだろうか。


「ラミアノさん。こんなお願いがあるんですけど・・・」


私は魔道具の一号を建物の外に持ち出す許可を貰いたいと言った。

私が持ち出すのは無理だろうが、ラミアノさんが持ち出すならどうだろうか。


「んー。ギルド長(ダル)に許可貰ってくればいいのかい?」

「はい。今日一日、ラミアノさんに携帯してほしいんです」


持ち出す理由について、信号の仕組みなどの詳細は説明しなかった。

魔道具を使った通信技術はこの世界にはないものかもしれないからだ。

なので、実験の一環として部屋からどれくらい離れたら光が消えるのかを確かめたい、とだけ説明した。

ふんふんと頷きながら私の説明を聞いていたラミアノさんは、最後にやや前のめりになってじーっと私を見た後、体を起こして言った。


「エルナには何か考えがあるみたいだねぇ。ま、いいよ。そろそろ昼食だ。食堂でギルド長(ダル)に掛け合ってみるよ」

「ありがとう、ラミアノさん」


悪意のある隠し事をしているわけではないが、深く説明はしていない。

私の態度や言葉から全部を話していない事をラミアノさんは察していただろうが、それ以上尋ねてくることはなかった。


実験を終了して机の上を軽く片付けた私達は、少し早い昼食を取ることにした。

食堂へ移動すると、既にギルド長が席に座っている。

私はカウンターのところから会釈だけした。


「それじゃ私は弁当もらって待機室行きますね」

「あー、そうだったね。こっちの昼食が済んで仕事場に戻るときに声掛けりゃいいのか。そりゃ安心だ」


お互い顔を見合わせて笑う。

ギルド長のテーブルへ向かうラミアノさんを見送ったあと、私は一人で素材工房まで戻り待機室に入った。

自室に戻らなくて済むのは本当に楽だなぁ。待機室に感謝だよ。


椅子に座ってゆったりと弁当を食べながら、箱の魔道具の扱いについて考える。

午後は有効範囲を調べよう。手順はこうだ。

二号を仕事場に置いて魔石を乗せておく。当然ながら一号と二号が光る。

その状態で一号を部屋の外に持ち出し、訓練場まで移動する。

もし途中で光が消えたら、そこが転送魔法陣の限界。魔力を受信可能なおおよその距離がわかるだろう。


頭の中で手順がまとまると、今度は用途について自然と考え始めてしまう。

連絡用に使うとしたら、冒険者ギルドなら受付で使えるかなぁ。

上役を呼び出したり、トラブルに巻き込まれそうなときに警備の人を呼んだり、とか。

マルティーナさんが喜ぶかもしれない。


ギルド長にどう説明しよう。

企画書とか書いた方がいいのかな。

ふーむ。


既に弁当は食べ終えていたが、色々な発想が浮かんできて結構時間が経っていたらしい。

不意に扉がノックされ、扉の外から声が掛かった。


「エルナァー。午後の訓練始めるよー」

「はーい。すぐ準備しまーす」


ハッとして反射的に返事をする。

いっけない、まだ着替えてないや。食べる前に着替えても良かったな。次からそうしよう。


ちなみに着替えや小弓は背負い袋に入れて今朝の内に持ち込んでいる。

私は急いで小間使いの服から動ける服に着替え、背負い袋を持って扉を開けた。


「ごめんなさい。お待たせしました」

「いーよいーよ。そんじゃ行こっか」


既に冒険者服になっているラミアノさんは、大して気にせず訓練場へ向かって歩き出そうとした。


「あ、待って、ラミアノさん。ギルド長から魔道具持ち出しの許可は出ましたか?」

「ん?あー、許可は出たよ。常にあたしの手元に置いているのが条件だけどね」


良かった。それじゃ予定通り実験だ。


「訓練場に行く前に、一緒に仕事場に寄ってもらえますか。少し説明もします」


ラミアノさんと共に仕事場に入り、昼食前に軽く片づけた机の前に行く。

私は手頃な無属性の魔石摘まんで二号の魔法陣に乗せた。

魔石が乗った二号と、何も乗せていない一号の魔法陣が同時に白く光り輝く。


「ラミアノさん、一号を持ってください。で、このまま訓練場に行きましょう」

「ふぅん。なんかわかんないけど面白そうだねぇ。このままだと目立つから布を掛けて持ち出すか」


そう言うと、仕事で使う台座の魔道具に掛けてあった布を引っぺがして一号に被せた。

確かに光を遮断できる布だけど・・・いいのかなぁ。


「それで、あんたの予想だとどうなるんだい?」


楽しそうに私の顔を覗き込むラミアノさん。

私は顎に手を当て、少し考えてから答えた。


「・・・たぶん、訓練場に着くまでに魔力が転送できなくなって光が消えると思うんです。逆に、光っている場所までなら魔力が転送できるということなので、その距離を確認しておきたいんですよね」

「なるほどね。意味はあんまりよくわからないけど、やりたいことはわかったよー」


私達は仕事場を出て訓練場に向かって歩き出す。

渡り廊下を通って、本館二階へ。立ち止まったラミアノさんが魔道具に被せている布をぺらっとめくる。私もそれを覗き込む。


「まだ光ってますね」

「そうだね。一階に降りるよ」


階段で一階に降りる。魔道具はまだ光っていた。

そのまま訓練場への下り階段を降りて、とうとう訓練場に着いた。

しかし、魔道具の光は消えることはなかった。


「エルナ・・・。光、消えてないね」

「・・・はい。二つ隣の建物くらいの距離は転送できる、ってことですね」


正直予想外だ。

仕事場である素材工房の隣がギルド本館であり、その隣が訓練場である。

ここに来るまでには光が消えると思ったが、そうはならなかった。


「予想は外れちゃいましたけれど、これはこれで実験の成果ですから」

「そうかいそうかい。まぁ一旦忘れて訓練始めるとするよー。いつものように魔法からだ。準備しなっ!」

「はい!ラミアノ先生、よろしくお願いします!」


昨日、たった一日ラミアノさんが休みだったことで気付かされる。

日課ともいえるこういうやり取り、なんかほっとするよ。

ああ、そうか。これが今の私の日常なのだ。

その思いを強くすると同時に、気付かぬ間にホームシックから解放されていたことを自覚するのだった。


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