表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
77番目の使徒  作者: ふわむ
第二章
28/129

魔法士のお仕事2


「ふんふんふーん♪」

「ラミアノさん、ご機嫌ですね。その・・・子供好きなんですか?」


この部屋まで案内してくれたギルド長は退室し、いまは二人だけになったこの部屋で、私は鼻歌混じりのラミアノさんに聞く。


「そりゃねー。でもあたしんとこは産まれてくる子が男の子ばっかでねー。あたしの子供たちも腹違いの子供たちもみーんな男の子でさ。やっぱ女の子が可愛ぃんだわー」


どうやら女の子を可愛がりたかったらしい。

ラミアノさんは第三夫人だが、第一夫人も第二夫人も産んだのは男の子ばかりなのだそうだ。


「おいでおいで。仕事教えるよー」


ラミアノさんは椅子から立ち上がると私を手招きして、部屋の奥にある布が被せられた台座の前に立った。台座は家庭用洗濯機くらいの大きさだ。

いよいよ仕事の説明が始まることを感じ取り、私は気を引き締める。


「まず、この建物は素材工房と呼ばれていてね。獣、鉱石、草花といった様々な物が運ばれてきて、それらを一階で解体しているのさ。そうして沢山の素材が生成されるんだよ」


ふんふん。この部屋に来る途中ギルド長も言ってたね。ここまでは前置きだろう。

ラミアノさんは一呼吸置いて続けた。


「どんな素材でも一定の魔力が含まれているんだけど、その中でも魔力を多く含む素材、あるいは魔力を取り出しやすい素材ってのがあってね。ここ二階では、そういった素材から魔力を取り出し、魔石に移す作業をしているんだよ」


へぇー。魔力ってどんな素材にも含まれているんだ。知らなかった。もしかしたら、私達は日々の食事で栄養だけじゃなく魔力も摂取しているのかもしれないね。

魔力を素材から魔石へ移すことができるってのも面白いなぁ。


ラミアノさんは台座から離れた場所の棚から網袋を持ってきた。網袋の中には幾つかの石が入っていた。


「これ、魔石ですか?」

「そうさ。見たことあったかい?」

「はい、一度だけ。ランタンタイプの照明の魔道具を見せてもらったことがあって、その時に魔石も見せてもらいました」

「あー、あれ便利だよねー。冒険者やってたときにあれ欲しかったなー」


冒険者のときの話は面白そうだが、今は脱線させちゃまずい。

私は深堀りしたい気持ちをぐっと抑えた。


ふとラミアノさんの視線に合わせて先程の棚を見ると、何か入っている網袋がいくつも置かれている。

ああ、あの網袋一つ一つに魔石が入っているのか。


「ランタンに使用する魔石は光属性の魔力を充填するんだよ。無属性とか他の属性でもいけるんだけど、明るさや効率が全然違ってくるからねー」

「もしかして、魔力持ちにおける魔法士の価値ってそこですか?属性を扱えるところとか?」


私が何気なく発した言葉にラミアノさんは驚いた顔をした後、目を細めて口角を上げた。


「いやー。エルナは本当に鋭いわねー」


どうやら正解したようだ。

ということは逆に言えば、魔法士は属性を扱うことができるけど、一般の魔力持ちはその扱いに難がある、もしくはできないのだろう。


私のこの推測は的を得ていたようで、続くラミアノさんの説明でより明らかになる。


ラミアノさんはまず魔法士による属性の付加を説明してくれた。

例えば光属性の魔力を魔石に充填したい場合。

魔法士は魔力を素材から魔石へ移すときに属性を付加できるのだ。だから無属性の素材から取り出した魔力に光属性を付加し、それを魔石に充填する。

対して一般的な魔力持ちは属性を付加することができない。ではどうするかといえば、光属性の素材を用意して、取り出した魔力をそのまま魔石に充填する、ということになる。

つまり一般的な魔力持ちと比較して、魔法士は素材の属性に左右されないという決定的な強味があるわけだ。


次に素材の説明だ。

素材によって含まれる魔力の属性が違う。素材全般では無属性の素材が最も多い。だけど無属性の素材が価値が低いというわけではない。魔力を多く含んでいたり、あるいは魔力を取り出しやすい素材は利用価値が高くなる。魔力は貴重なのだ。

対照的に光属性の素材は最も数が少ない。だが価値が高いかといえばそうでもない。なぜなら魔法士によって、無属性の魔力に光属性を付加することができるからだ。

属性を付加する魔法士の存在によって、魔力を簡単に多く取り出せる素材は属性に関わらず重宝される。希少性より有用性が重視されるということか。


続いて仕事の注文について。

手順としては、まず客から注文を受ける。この魔石には光属性を、この魔石には無属性を、という具合に注文がくるのだ。そしてその注文ごとに客から魔石を預かる。

この部屋の棚にはたくさんの網袋が置いてあるが、入っているのは預かった魔石だ。網袋には客の名前と注文した属性がわかるように札が付いていて、私たち魔法士は、その注文に従って魔石に魔力を充填していく。


・・・なるほど。いままで漠然としていたけれど、ここまで説明を聞いて大まかな仕事の流れがわかってきた。


「よし、そんじゃ実践だ。まず最初に、一階の運搬作業を止める必要があるのさ。実はこれがとても大事なんだよー」

「運搬作業、ですか」

「そう。ここの真下あたりにある部屋が転送室と呼ばれていてねー。転送室には魔力素材が随時運び込まれてくるんだよ。運搬作業とはそれのことさ。運搬作業を止める、というのは具体的には運搬作業員に作業を止めるよう伝えて、転送室に鍵を掛けてもらうのさ」

「転送室には何があるんですか」

「そりゃあ転送魔法陣よ」

「!?」


出たっ!ファンタジーなワード!!

もう流石に自覚してしまった。私、こういう言葉好き過ぎるでしょ!

むふー、わくわくが止まらん!

思わずラミアノさんに詰め寄ってしまう。


「転送魔法陣ってどんな事できるんですか!見てみたいです!」

「え?え?あー、見てみる?」

「見ます!見ます!見てみます!!」


私からの圧を受け、ラミアノさんは戸惑いながらも手招きする。そして台座に掛けてあった布を取った。


「え?」


その台座には不思議な文様が描かれており、淡い青色に光っている。それでいて浮き出ているような、前世の記憶だとホログラムのような不思議な視え方がする。


「綺麗・・・あ、あれ?これが転送魔法陣ですか。ここにもあるんだ」


てっきり一階の転送室に降りて見せてもらえるのかと思って、完全に意表を突かれてしまった。


「この転送魔法陣は、一階の転送室にある転送魔法陣と繋がっていて、魔力が通った状態になっているんだよー」

「転送っていうからには、一階から素材がここに転送されてくるんですよね?」

「んん?」

「・・・?」


ラミアノさんが目をぱちくりさせている。私、変なこと言ったかな?


「いやいや、物体は転送されてこないって。流石にそれはお伽話でしょーよ。転送されてくるのは魔力だよ」

「あ、ああ、そっか。なるほど」


つまりこういうことか。

この素材工房の一階では解体が行われ、色んな素材が生成される。そして魔力を獲得するための素材がその中から選別され、転送室に随時運搬されてくる、と。

転送室には転送魔法陣があり、この二階の転送魔法陣に魔力が転送される。

そしてその魔力を使って、魔法士が魔石に充填をする。

二階で作業をするときに一階の転送室に鍵を掛けるというのは、おそらく事故防止のためじゃないかな。


私はラミアノさんに、自分の考えを確認する。


「そうだね。大体あってるよー。今、転送魔法陣が青色に光っているでしょ。これは水属性の魔力だよ・・・っと、この言い方は正確じゃないなー。水属性の魔力に色が付いているわけじゃぁなくて。正しくは、一階の転送魔法陣に水属性の素材が多く乗っかっていて、魔法陣はそれを読み取って青色に光っているのさ」

「へぇー!魔力の転送だけじゃなく、属性もわかるんですね!」


なんと驚きの属性判定機能付きである。

ラミアノさんは他の属性で光る色についても説明を加えてくれた。

火属性が赤、風属性が緑、土属性がだいだい、光属性が黄、無属性が白に光るのだそうだ。そして水属性が今光っている青、と。


この魔法陣、一体誰が作ったんだろう。作った人は間違いなく頭のいい人だ。

でも、・・・何だろう、この違和感。私にはこの魔法陣が前世の記憶と相まってとても(いびつ)な存在に感じる。感じるんだけど、その理由がさっぱりわからないんだよ。

うーん・・・なんだか喉に小骨が刺さっているような、すっきりしない違和感が残ったままだけど、でも案外大した理由じゃないのかもしれない。


よし、違和感については一旦忘れよう。


「さて、話を戻すよー。一階の運搬作業を止める必要がある、って話ね。このまま二階であたしらが作業をすると事故が起きる可能性がある、っていうのは大体エルナが予想した通りだよ」


二階に転送されてきた魔力を使っているときに一階で運搬する人がいると、魔法陣が転送室に入って来た人の魔力を吸い取ってしまい、意識を失ってしまうことがあるらしい。想像でしかないが貧血を起こすような感じなのかな。とはいえ、それで死に至るようなことはない、とのこと。なぜなら魔法陣は人に対して魔力枯渇するまで吸い取るようなことがないように、安全のマージンが取られているからなのだそうだ。作った人ほんとすごい。


「というわけで、今から一階へ行って運搬作業の担当者に声掛けてくるんだけど、一つ注意があるよ」

「えっと、なんでしょう?」

「一階の解体、運搬作業をする人よりも、あたしらが上役ってことだ。あたしらが指示を出す側だから、時には頭を下げられることがあるよ」


ラミアノさんは偉い人の肩書を幾つか持っている。

わかっているだけでも、子爵夫人、魔法士、四等冒険者。

だから一応確認しておこう。


「それは、ラミアノさんが子爵夫人だから、ですか?それとも、魔法士だから、ですか?」

「後者だよ。身分ではなく、あくまでギルド内での仕事上の立場ゆえ、さね」

「私はラミアノさんの小間使いですけど、それでも上役なんでしょうか」

「もちろんそうさ」


上役・・・か。

私は今まで何人もの偉い人達に頭を下げてきたけど、頭を下げられた経験はない。

ただ、一つ知っていることがある。


「もし頭を下げられたら、楽にしてください、って言えばいいですか?」

「え?あれ?」


不意を突かれたらしく、ラミアノさんは一瞬固まった。


「えっと、エルナ。知ってたの?」

「はい。でも、それしか知りませんよ?」

「ふーん。エルナは優秀だねぇ。今日はそれだけ知ってればいいよー。他の事はおいおい教えてあげるねー」


ラミアノさんはにっこりしながら手招きして、部屋の扉へ歩き出した。私も付いていく。

部屋を出た私たちは階段を降りて一階へ向かった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ