表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
Transparent Dark  作者: 文字塚
肆:素晴らしき世界、新しい仲間
73/160

72.夜も更けて

 深夜迫る時刻になった。

 灯りを点けたまま国樹はマリーの部屋で横になっていた。

 ひとっ風呂浴び身体が少し火照っている。

 ネリーの自宅で入る最後の風呂なら、順番も最後。ヨシカ達が先でゼスも無理やり入れておいた。本人は抵抗したが、身体は自分で洗うという条件で受け入れさせた。


「どうせ入るならタガロとがよかった。あの二人耳の後ろが洗えてないとかうるさいんだよ」


 ゼスは愚痴るがそれは断る。女性化を見た後だ。万万が一またそうなれば勢い余りたぶん殴ってる。空気読め、男に戻れ殺すぞ、ぐらいは言ったろう。それで戻るか(はなは)だ疑問なので、全く以って救いがない。


 グーシーは荷の整理に忙しく、データと行程の再確認もしているのだろう。先ほどから蓋を閉じたままだ。

 彼は本当に機転が利く。二人がシルケントに向かってすぐネリーに取引を持ち掛け、脱出ルートについても話し合った。その際ネリーに多少事情を伝えたのは、最低限の礼儀でありこちらとしても許容範囲だ。マリーを案ずるのは姉として当然である。


 彼の機転はこれに留まらず、国樹達が無事帰還した後のことも考えていた。恐らく長居はしない。そして帰国を決意するかもしれない。その際、蹉跌の塔を再訪問する可能性もある。


 最も面倒なのはインドまでの道中、更に入国後。また襲われるかもしれないと考え、グーシーはネリーに火器弾薬の調達を相談した。ネリーにしてみれば「この箱はなにを言っているのだ」となり、事情を話した理由にはこれも含まれる。


 夕暮れ時、ネリーとグーシーが二人で訪問者に対応したのは、物資を受け取るためだ。火器類、弾薬まで調達出来たのはネリーの顔の広さ所以か。狭い国だ、日本とは事情が違う。

 警察や軍との繋がりを問いかけた際、彼女は言外に匂わせた。

 ネリーがあっさりと我々を受け入れ、役所の手続きがスムーズ過ぎたのはそのお陰かもしれない。


 もう立ち去るこの国と世話になった人物を疑うのは気乗りしない。だが目に見えない知識特権階級がいるとしたら……いや、やはり考えても仕方ない。

 もう寝よう、明日は早い。二人に告げるため寝返りを打つと、ゼスがこちらを見ていた。


「タガロ、なに考えてたの?」

「別に。そろそろ寝るかなと」

「僕さ、不思議で仕方ないことがあるんだ。それ考えてた」


 ゼスはそう言うと頭を捻るポーズを取った。


「シヴァとアナスタシアはなんであんなに違ったんだろう」


 なにが、と国樹は身体を起こす。片や封印されし謎の存在、片や宇宙空間にいたロシア系。違うに決まってる。


『多賀朗、二人の対応の違いを不思議に思っているらしい』


 いつの間にか蓋を開けグーシーがボードを出している。なるほど確かに対照的ではあった。


「シヴァはさ、僕を毛虫みたいに追い払った。アナスタシアは誘惑? してきた」


 懐柔(かいじゅう)かなと国樹は頷く。


「なんで?」


 素朴な疑問であった。しかし分からない。恐らく、シヴァと呼ばれた女はそのままゼスに興味がなかった。アナスタシアはザドキエが傍にいる。知識のあるなし。違う、どちらも知っていた。


「正直分からん。それを確かめるためにも蹉跌の塔に戻るんだ」


 国樹は日本語に切り換え応じる。ゼスも合わせて日本語で話し始めた。


「僕シヴァと会いたくないな。あいつ誰のお陰で……殴っていいなら行くけどさ」


 殴るのか、大して痛くないだろうがやめて欲しい。そもそも連れては行かないのだがついて来る気か。


「言葉の暴力ぐらいなら構わんよ。敵に回すとまた俺の頭がやられかねん。口で言い返せ」

「ラップバトル的な?」


 ほう、ディスり合い。ちょっと見てみたいがまずゼスに勝ち目はない。というか相手にしてもらえないだろう。ゼスは「出来るかなあ」と想像している。正気か、いいけど。


『ルートはそのまま、他の国は入らずでいいのだな』

「ああキルギスやカザフ、ロシアは遠回りだ。これだと二人が怒る。寒いの嫌だし」

『了解だ』


 もう零時に近い。そろそろ寝るべきだなと国樹は灯りに手を伸ばした。


「もうひとつあるんだけど」


 ゼスの結構真面目な顔がこちらを向いている。寝たいんだけど……。


「なんだ」

「タガロはヨシカと充希、どっち信用してんの?」


 なんだその答えづらい問いかけは。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ