経緯と悪意
「うーん…………」
同日の夜。なにやら部屋の中で違和感を抱く。
「突然お邪魔してすみません」
「校長!?」
いきなり部屋の中に校長こと九条美音が入ってきた。土足ではなくちゃっかり素足。
どうやら、今回の事件に関して伝えておきたいことがあるとかなんとか。
これといったおもてなしもできず、少しあたふたしていると、構いませんよ。と一声。
とりあえず適当に座ってもらった。
「それで、ご用件は?」
「事件の経緯についてまずお話させてください」
何故俺にそんな事を?と思いながらとりあえず聞くことにした。
殺人犯として逮捕後、彼は持ち前の財力で警察を買収し、自身を死んだことにして釈放。
それから会原は神薙真昼だけでも取り戻そうと計画する。そんな矢先、仕事もメンタルも減りつつある彼女が突然の活動休止を発表。これを機に、会原はあることを始める。
それは、過激なファンを装いSNSで発信。それだけなら彼女も有名人なので、ありふれた状況だった。
しかし、それだけでは終わらず、彼は掲示板で発信し続け、ついには熱狂的なファンを集めることに成功。
トップアイドルをもう一度見たいという熱意が狂気を呼び、いつしか約一万人規模にまで広がっていた。
警察を使って神薙の現在地を調べ上げ、新成都市にいることを特定。そこにいくための対策を立てるため、今度は"ある組織"にコンタクトを取った。
その相手は、研究機関「鳥籠」。
そこから街のセキュリティを突破するための妨害装置を入手。
かわりに鳥籠には資金提供をして取引。
それが今回の事件の経緯。
「なるほど。だから俺に……」
「ええ。あなたが今後狙われる可能性も考えられます。気をつけてくださいね」
「はい……」
既に狙われた。そんな感じだったな。
突然現れた仮面シスター。結局逃げられてしまったが、あれはテロリストの仲間じゃなかった。
鳥籠の人間という可能性が高い。
テロリスト達が街へ突入したタイミングで一緒に来たのか、それともこの街に前からいる人間なのか。
はたまたここの生徒かもしれない。
「桐生君、一つ質問いいですか?」
「……なんでしょうか?」
「既にあなたは藍沢君に神楽島君、主将格を相手に圧倒しています。見ていて実に爽快でした。ですが、何故に殺さないのです?あなたは既にこの学校の真理に気付いているというのに」
俺の事情を知っているというのに、なんて質問だ……。
俺は誰かを殺さない。
あの時からそう決めていた。
「殺しませんよ。______今のところは」
「フフフ!そうですか。いつまでそうしていられるか
楽しみです」
こういう事を言われると実感する。
イカれた学校の長であり、街の統括理事をしている人なんだなと。
この環境に置いてくれたことは感謝しているが、俺に対して情が湧いたわけでもなく、ただ面白そうだから、という理由なのが見え見え。
アンタのおもちゃになるつもりはない。
「報酬は既に振り込んでおきましたので、存分にお使いください。では!」
そう言い残し、彼女はパッと消えた。
報酬として受け取ったマネーは十万円。普通に嬉しい。もうすぐ支給日だが、そちらはあまり期待できない。
初っ端から問題を起こした事を考えると、どこまでプラスでその分を帳消しに出来ているかだな。
査定基準が分からないのでなんとも言えない。
まあ、今は考えないでおこう。
それより、
今回の一件で分かった。
鳥籠の奴らが街に突入出来る手段を持っている事を。またいつ狙われるか分からない。
内も外も敵だらけ。
それでも俺は、
願いのためにこの学校で卒業する______。




