放課後と住居
入学式を終え、教室に戻った。
「お疲れ様でした〜。放課後、各自指定された部屋に移動してくださ〜い。スマホで確認できますよ〜。あっそれと、明日は皆に自己紹介してもらいますので、よろしくお願いします〜」
自己紹介か。難易度が高いな。
そして帰りの挨拶をし、放課後を迎えた。
「なあなあ、早く見に行こうぜ!!」
「おう!」
「お昼何食べよっかー?」
「ガッツリいきたーい!」
仲良くなっている面々は、楽しそうに教室を出ていった。
さて、俺も腹減ったし何か食うか。
部屋はその後にしよう。
「ん?」
隣人イヴの姿はもうない。早いな。
他の人とも話してみたかったが、今日はなんだかどっと疲れた。明日は前の席にいる男子生徒に話しかけてみようと思う。
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学校を出て、徒歩五分で着くコンビニに寄った。
そこでゼリー飲料二本と天然水を購入し、住居に向かう。
向かっている途中に、これから住む場所のことを学校案内というアプリである程度調べてみた。
……どうやら、これからとんでもないところに住むみたいだ。
というかこの端末、アプリが少ない。生徒手帳のアプリにルールも載っているのを確認した。
先生がさっき言ってた事も載っている。
あとは常識的な事だな。
そうだ。スマホの画面ロックを設定しておこう。
「凄いな……」
これから住むのは、三十九階建て。地下二階のタワーマンション。しかも家具は備え付けだ。
大理石のエントランスに圧倒されながら入る。
入ってすぐのところに受付があるが、
中には人がいない。
案内によると、そのまま奥の自動ドアへと進み、
手前に設置されている台座にスマホをかざし、認証をしろとのこと。
物凄く厳重だな。
別に悪いことしてるわけじゃないが、
通るたびに緊張しそうだ……。
認証を済ませて奥に行くと、広めのエレベーターホールに着いた。
左右に五個ずつエレベーターが備わっており、
対談用のソファがちらほら設置されている。
二階から四階までは共用スペースとなっており、
フィットネスルームにライブラリーラウンジ。
PCが備わったメディアラウンジ。
使うか分からないがパーティールームやミーティングルームまであるようだ。それから映画鑑賞ができるスクリーニングルームなんてのもある。
とにかく共用施設がとんでもなく多い。
何故ここまで優遇されているのか分からないがな。
俺の部屋は十一階。1105号室。
居住区はエントランスと違い、全体的に黒で統一されており、落ち着いた雰囲気だ。
だが、廊下は部屋と部屋の間が若干暗く、しばらくは迷子になりそうな気がする。
「おお」
真っ黒なドアを開けると、中は白を基調とした明るい空間になっている。
そして、コンシェルジュが運んでくれた服の入っているキャリーケースが置かれていた。
玄関横にはシューズラック。その横には可変棚と傘が立てかけられる収納スペース。その中にはブレーカーがついている。
シューズラックの向かいには風呂や洗面所、トイレなどの水回りだ。
奥のドアを開けると、十二畳のリビングについた。
手前にはキッチンと備え付けの冷蔵庫。
天井にはエアコンが埋め込まれており、見慣れない見た目をしている。
バルコニーからの景色は、もう一棟のタワマンが見えており、日当たりはやや微妙。
しかし駅はかなり近いようだ。
そしてリビングに隣接しているドアを開けると
寝室。ベッドも親切に置かれている。
部屋を一通り見終え、中身スカスカのスクールバッグを置き、バルコニーに出た。
さっき買ったゼリー飲料を一気に飲み、目を閉じる。
「…………明日の自己紹介、どうしようか」