173.人を呪わば穴二つ(2)
前二回分(171・172話)ですが、南2地上のマップは入手済みなのに持ってないような表現になっていたので少しだけ加筆修正しました。
内容の変更は特にありません。
どうしてこんなことになった。俺なんか悪いことした?
まさか俺がリリィの不幸を願ったりしたからバチが当たったのか? 人を呪わば穴二つっていうやつ?
俺の服の裾をがっちり掴んだままご機嫌で自分のアイスクレープを齧っているリリィをちらりと横目で見る。
「ウチのことはリリィお姉様って呼ぶといいよ」
「嫌だが!」
「えーっ」
珍獣を発見したような顔すんな。
「なんでなんで? こんな綺麗で素敵なおねえさん、男の子はみんな憧れるもんじゃないの?」
ハイハイ、自称ね。本物の素敵な人はそんなこと言わねえのよ。
「家にはもっと美しくて優しいリアル姉上がいるんで」
「シスコンかよ!」
たしかに自分でもそれっぽいところあるかなって思うけど、コレに言われるとなんか腹立つなあ。
「んもう、仕方ないなあ。じゃあリリィちゃんでいいよ」
「リリィたそ」
「ちょっとぉ、オタサーの姫みたいな呼び方しないでよー」
いや、アンタがやってることってそのまんまじゃん? まさか自覚ねえの?
「てかそもそもさあ、なんで俺とフレンドになりたいの、リリィたそは。何が目的?」
リリィは子供のように首を傾げた。そんなに意外な質問だったか?
「そうねえ。うみぴは最初からウチに本音で対応してくれたから信用できる人かもって思ったんだよね。直感ってやつ?」
「俺の同意はどこ行った? あと本名呼ぶなって言ったろ」
塩対応が逆効果だったらしい。しくじった。けどリリィも周囲のイエスマンを俯瞰して見てる感じだしそれほど馬鹿ではないんだよな。方向性はちょっとおかしいけども。
「うみぴはいちいち細かいなあ。それならカイぴにしとこっか」
ぴから離れろよオイ。
「で? 他に用が無いなら俺もう行くけど?」
「あー、待って待って。ちょうど相談したいことがあるんだ」
服引っ張んな!
「ほら、もうクリスマスまで一ヶ月切ってるでしょ。時間がないんよ」
リリィが真顔になってる。あれ、なんか嫌な予感がするんだけど。気のせい……?
「時間?」
「だーかーらー! 早く彼氏を作らないとクリスマスに間に合わないんだってば!! いま絶賛募集中なの! カイぴも協力してよ!!」
いっきに脱力した。くだらねえ〜! 俺そんなことのためにリリィに捕まってるの? 嘘でしょ?? 一応初対面のはずだが??
「なによう、素敵な彼氏が欲しいって、そんなに悪いこと!? 若い子がそんな態度だから日本の出生率が下がりっぱなしになるんだよ!」
俺のぐったりした反応に、リリィは唇を尖らせた。いや、どうでもいいから俺を巻き込まんでくれ……。
「その前にアンタさあ、スカーレットの人たちはどうしたんだよ。みんなに手を出してサークルクラッシュしたって噂じゃん」
リリィはすっと視線を逸らした。
「だって……樋口先輩、えっと本命で狙ってた人の後だとなんだか見劣りしちゃって……」
ええ? そんなん手を出す前に分からなかったか? この女アホなの? ……うん、アホだわ。ほんと、それでスカーレットを辞めることになった緋炎とノインが気の毒すぎる。そして半年余りコレと行動を共にしていた彼らを改めて尊敬するぞ。
というか、リリィって樋口兄のあのキラキラした王子ヅラが好きなんだな。俺からするとすごく嘘くさいと思うんだけど。普段小汚い耕助さんのほうを見てるからそう感じるのかね。
「でさ、ネットによればカイぴはK大法学部だったよね」
「個人情報道端で喋んな」
「ねえカイぴ。男の素敵な先輩いない? 四年生とか院生でさ」
「はあ?」
こんなやべえ女を知り合いに紹介したら恨まれそう。それ以前に、一年生の俺はまだゼミにも入ってないから先輩なんて剣道部の人くらいしかわからない。
「……女装趣味でゴスロリ大好きな人とか。女装趣味でセクシーお姉さんのコスプレしてる人とか?」
「女装趣味しかおらんのかい!!」
リリィが叫んだ。
「他にイイ男の知り合いとかいないの? クリスマスが終わったらお正月なんだよ? 初詣ひとりで行くなんて嫌でしょ?」
俺は姉ちゃんと行くから別に問題ないけど。
「それなら年越しもゲームしてれば? みんなリリィたそのことチヤホヤしてくれるでしょ」
「嫌だってば! クリスマスや大晦日にログインしてたらぼっちだと思われるじゃん!」
はいはい、その通りですねえ。めんどくせえ。
「そんな付け焼き刃の彼氏なんてどうせすぐに別れるだろ。もうこの年末は見送ってバレンタインに賭けたら?」
「そんなことしたって状況は変わんないでしょ。先延ばし癖は良くないよ」
時々賢しいこと言うのやめてもらえませんかね。
「いや、会社員て年末にボーナス出るんでしょ? そうしたらゲーム機とかソフト買ってオビクロにも新規が入ってくるじゃん。そこでさ、こう、綺麗な聖女プレイヤーが優しく助けてくれたらどうよ? リリィたそはちょっとアレな噂もあるけど新規はそういうの知らないわけだしさ。人の噂も七十五日、つまりは二ヶ月半でしょ、それならバレンタインにも間に合うって計算なんだけど」
めっちゃテキトーなことを言ってる自覚はあるけど、リリィは頷きながら聞いている。
「策士ね。カイぴを選んだウチの目に狂いはなかったみたい」
いやそこは俺を褒めろよ。
「しばらくは心を入れ替えて真面目にプレイしてたらいいんじゃない? ま、アデリン様だっけ? 新しい聖女様もいるみたいだから無理にとは言わないけどさ」
「…………は?」
突然リリィから地の底を這うような低音ボイスが返って来た。あれっ、この食い付き、話題を変えられそう?
「あのお人形がなに?」
なんかリリィから黒いオーラが噴き出してきた。うわあ。やっぱりリリィはアデリンに良い感情を抱いてないのか。ヒカリの読み通りだ。
「あー、ほら、最近人気じゃん? 今度南2の地下で神殿長になるって聞いたし、リリィたそもここで頑張らないとファン取られちゃうかも、キャラ被ってるし」
「はァ!? 冗談でしょ! あんなお人形、ウチの敵じゃないし!!」
「そうかなあ」
わざとぼかした返事をすると、リリィはむーっと頬を膨らませた。
「わかった! そんならウチのほうが上だって証明してやる! 聖女リリィをコケにした奴らを全員ギャフンと言わせてやるんだから!!」
ギャフンなんて単語、実際に口にした人見たことねえけどな……ってのは置いといて。なんかいい感じに焚き付けられたみたい?
「ウチ行くから! カイぴまたね!!」
キッと街の中心の方向を睨みつけると、リリィはあっさり俺の服から手を離して風のように去っていった。
はあ……なんかよくわからないけど疲れた。あと、「また」は要らないからな!
エネルギーをいっきに消耗して重い疲労感を抱えたその後は、俺も街の中心部へと移動しイベント終了までお店を冷やかしたりカフェに入ったりして過ごした。午後には姉ちゃんたちにも遭遇したのでポケットにあったレッドジェムをあげた。
「えっ、いいの? ありがとうカイくん!」
うーん、本物のお姉様の笑顔、プライスレス。リリィから受けたダメージが癒されるわあ……。
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