香澄の体当たり
亜梨沙を助けるため、単身不気味な部屋に踏み込んだ香澄です。
※本連載は横書き用に最適化して書いてます。
「香澄なんて⋯居なくなっちゃえ」
亜梨沙の言葉と共に、教室の暗闇から現れた巨大な触手が私を薙ぎ払った。
「あうっ!」
反射的に腕でガードするも、机から転落してしまう。
着地した足が床にめり込み始める前に、慌てて隣の机に飛び乗る。
そこへ再び触手が振り下ろされる。
「亜梨沙?! どうしたの?」
叫びながら更に隣の机に飛び移る。
間一髪で先の机が触手で粉砕された。
「嫌、嫌、嫌、嫌⋯居なくなって⋯」
亜梨沙は繰り返し呟く。
その間にも次々襲って来る触手をギリギリで避け続ける。
しかし、狭い教室内で残された机の上を逃げ続けるには限界がある。
しかも触手は次々と増えてゆく。
数回移動した所で完全に触手を避ける事はできなくなり、何度も打ち付けられた。
ガードこそしているものの私も傷だらけだ。
「ううっ、このままじゃ⋯」
焦る私にミツキの声が届いた。
『七海ちゃんからの言葉を伝えるよ! 亜梨沙を眠らせて壁は何とかして、だって』
『いや雑! 何とかって』
『それ、亜梨沙ちゃんが関わってるっぽい』
『わ、分かった』
どうやらミツキが七海に状況を伝えてくれたらしい。
こういう時、シンクロしているのは助かる。
私は一旦教室の奥まで逃げて触手を引き寄せ、そこから反転ダッシュで亜梨沙の隣に向う。
追いすがる触手を何とか掻い潜り、最後はパルクールの要領で触手を飛び越え、亜梨沙の隣に着地。
「嫌・嫌・嫌⋯」
俯きながら亜梨沙はずっと呟き続ける。
「亜梨沙、ごめんっ⋯!」
パチッ!
その背中に触れて一瞬の電撃を流した。
亜梨沙はガクリと床に崩れ落ちる。
同時に、部屋の中で荒れ狂っていた触手達はふわっと掻き消えた。
でも、相変わらず床や壁は柔らかいまま。
ズブズブと机が沈み続けている。
「これ、何とかって言っても⋯」
私はヌラヌラと粘液を纏いながら微かに蠢く教室の壁を見直した。
生き物の内臓の様に見える。
私はいわば鯨に飲み込まれたピノキオ?
と言っても潮吹きしてくれる気配は無いし⋯。
先の七海の言葉を思い出す。
蛤か蛸⋯?
それはつまり海産物と言う事?
言われてみれば、教室で暴れていた触手には吸盤の様な物があった⋯気がする。
避けるのに必死だったから、うろ覚えだけど⋯。
それじゃ、この部屋が蛸の内側だとして、脱出するには⋯?
そうして私の頭に浮かんだのは、何故かスーパーの鮮魚コーナーだった。
スチロールのトレーに収まった蛸。
それをどうにかする⋯?
「そうか!」
私は教室のドアの前に立ち、足が沈むのも構わず両手を触れる。
『熱くなれ、熱く⋯』
私は両手が灼熱する様子をイメージした。
要は海での七海との特訓の応用だ。
この壁の温度を上げて、焼いてしまえば。
ジュワジュワ⋯。
私が触れた所から湯気が上がり始める。
と言っても、手の触れた部分だけ。
これじゃ全然足りない。
『もっともっと⋯』
私は掌だけでなく全身の温度を上げる。
体の周囲にゆらゆらと陽炎が立ち始めた。
『焼けろ焼けろ、熱くなれ⋯』
遂には発火点に達した制服が燃え始める。
どうせもうボロボロの制服だ。
気にせずどんどん温度を上げる。
私の周囲に炎が渦巻く。
じわじわと炎の色が変わり、遂に青く輝き始めた。
「えーーいっ!」
私は巻き上がる炎を纏ってそのまま壁に向かって全力で突っ込んだ。
ジュワーーードカン!!
水蒸気と蛸の焼ける美味しそうな匂いを上げながら、私は教室の扉を打ち破った。
バキバキバキバキッ!
「あたた⋯きゃっ」
勢い余ってそのまま廊下まで転倒する。
そのまま数回転がり、ちょうど七海の足元で止まった。
「⋯力技」
その私を見て七海が呆れたような顔をした。
「だって、七海がそう言ったんでしょ」
「そうだけど⋯」
言いながら七海は教室の中に入ってゆく。
先程までの暗闇は消えて、諸々が散乱しているだけの、普通の教室になっていた。
部屋の中央に進んだ七海は足元の小さな欠片を拾い上げ、呟いた。
「誰がこんな物⋯」
「亜梨沙っ!」
私はその間に倒れていた亜梨沙を抱き上げる。
⋯⋯呼吸は正常。
怪我は擦り傷程度。
一見、大事は無さそうだけど安心はできない。
早く保健室に⋯。
「香澄、ストップ」
七海が亜梨沙を抱き上げた私を制止した。
「え、なんで?」
「そのままだとエロ女王になる」
「は?」
と、私は制服が既に消し炭状態で、僅かに身体に張り付いているだけの状況に気が付いた。
「ちょっ!」
慌てて腕で体を隠す。
ここが七海と亜梨沙しか居ない教室で良かった。
「私の服、着る?」
七海が制服を脱ごうとする。
「いや、それはまずいよ」
七海が肌を晒してしまっては意味が無い。
いや、むしろ問題が大きく成りそうだ。
それに小柄な七海の制服ではサイズが合わない。
「服位、作れば良いのに⋯」
「それは流石に無理だよ」
服を作るのは水や蛸を加熱するのとは次元が違う。
構造も複雑だし、組成も難しい。
とても全てを想像する事なんてできない。
私が作れるのは、せいぜい服に縫製する前の裁断された布止まりだろう。
しかし。
『私、できるよ!』
悩む私の頭の中でミツキが答えた。
作者のやる気は イイね や 感想 で出来てます(笑)
ここまで読んだらもうひと手間、評価をポチっと!
宜しくお願いします。
ぜひぜひ御意見、お聞かせ下さいませ。
気に入った部分だけでは無く、ここが“読みにくかった”“分かりにくかった”も、とても参考に成ります。
感想書いて下さる人には本当に感謝です。
また、連載形式で数日ごとアップしますので、読み逃し無いようお気に入り登録も宜しくです。
他にも小説家になろうに色々作品アップしてますので、良かったら見てみて下さい。
ファンタジーからSFまで色々揃えてます。
ちょっと不思議なラブコメ「幼馴染がいろいろおかしい」
https://ncode.syosetu.com/n2628lw/
ドタバタ異世界転生「社畜リタイア求職中が異世界転生でお姫様と出会って結婚する話」
https://ncode.syosetu.com/n2774mh/
ミステリー探偵物語「ファインド・アイズ」
https://ncode.syosetu.com/n3869lm/
ファンタジーラブコメ「ウチの弟が弟じゃない」
https://ncode.syosetu.com/n4758lk/
近未来アイドル「えれくとろんあーく」
https://ncode.syosetu.com/n6524ld/
近未来アイドル第二弾「神崎涼花の逆襲 〜えれくとろんあーく2〜」
https://ncode.syosetu.com/n7959li/
ファンタジーバトル「リサイクルショップで手に入れた杖がとんでもない魔道具だったせいで魔導争奪戦に巻き込まれた(冥界送人改題)」
https://ncode.syosetu.com/n1995lg/




