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×1アラサーダメンズメーカーが幸せになるまで 〜魔法使い予備軍の奥手男子に溺愛されて幸せです〜  作者: 佐藤真白


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不同意

この話では性行為を連想させる描写を含みます。

苦手な方はご遠慮くださいますようお願い申し上げます。

「同僚」

「同僚」とは、同じ職場で働く人、または自分と同じ役職・地位にある人を指し、文脈によっては上司や部下も含めて使われます。


「不同意性交等罪」

不同意性交等罪ふどういせいこうとうざいは、刑法177条に規定される性犯罪であり、強制性交等罪・準強制性交等罪を統合して新設された犯罪類型である。暴行・脅迫、心身の障害、アルコール・薬物などの行為・事由により、同意しない意思を形成し、表明し若しくは全うすることが困難な状態にさせ、又はその状態に乗じて性交等を行う行為などを処罰する。また、わいせつな行為ではないと誤信させ、若しくは人違いをさせ、又はその誤信に乗じて性交等を行う場合や、16歳未満の者に対して性交等を行う場合も対象となる。D V等により精神的加虐による負荷を与え拒否できない状況下にて行為を行ったり、堕胎の強要或いは多数の子供を出産させるなどの悪質性が認められる場合、婚姻関係であっても刑事罰に問える可能性が高い。



新たな環境に慣れるのはなかなかにしんどい。それも仕事もプライベートもとなると二十代とはいえ後半の私には希望や期待以上に戸惑いや気怠さをともなった。



でも仕事はやはり楽しい。今まで見えなかったお客様の顔が見えるという事は私の仕事の価値観を変える出来事だった。





私は卒業後に就職してからずっとこの会社で仕事をしている。大きな会社ではないけれど、この辺りでは名の知れた堅実な家具メーカーとして一目置かれている。

高級家具よりは手が届く価格帯で量産品よりもセンスがひかる、日常の生活に小さなこだわりを…そんなコンセプトが受けている。


幸にも現社長の就任に伴って新卒ながらもインテリアカラーコーディネーターとして採用してもらった。専門時代の選考は空間色彩だった。その後少し落ち着いた色味の多かった商品に新色としてパステルやビビットカラーなどを提案して一定の評価を得ていた。

特にオリジンシリーズと銘打ったセミオーダー家具は新型コロナウイルスによる自粛期間中、家具でテンションを上げたい女性達にヒットして社長表彰ももらった。



でもそんな大好きだった部署の仕事を私は手放した…

家事は全部女性がやるべきだという彼の希望を聞くためだった。本社と販売店併設の支社はそんなに距離が違うわけではないけれど、時間的な制約が支店の方が効くと聞いたのだ。


その分出世の道からも遠のく…それでも構わないと思った。昔からあたたかい家庭を築く事が夢だったから、自分のしたい事を差し置いても良いとさえ思っていた。

だって家庭が1番で仕事はご飯を食べるための手段だと彼も言っていたではないか。

前の部署の上司は私がした選択をとても残念がってくれていた…それでも部署異動の判を押してくれた。


ありがたい事だ。


そう、ありがたい。



ありがたいは私の祖母の口癖だった。

ご飯が食べれるのはありがたい。

仕事がもらえるのはありがたい。

家族がいてくれてありがたい。

屋根の下で暮らせるのはありがたい。

何一つ当たり前では無いのだから、それを甘受するな。働いて家に貢献しろ…。


私は被りを振る。嫌な事を思い出したと思って身震いする。

絶縁状態の祖母は我が家の女帝だった。何をするにも祖母の顔色をうかがって、祖母の望む通りに暮らすのが我が家の暗黙の了解だった。


だから私は早く家を出たくて、私をみてくれる、必要としてくれる人を求めていたのかも知れない。

裕祐は少なくとも私を必要としてくれている。だから私はそれに応えなきゃ…このありがたい生活を続けるために…



「葛山さん?どうしましたか?ご気分が優れない…とか?僕、一気に説明し過ぎましたね。すみません、少し休憩をしましょう」


「あっ、いえ!大丈夫です!少し昨夜の眠りが浅かったみたいで…ぼーっとしちゃって申し訳ありません」


「新生活が始まると気が張ってしまいますよね。朝牛乳を飲んで夕飯前にゆっくりお湯に浸かると寝つきが良くなるらしいですよ」



私は少しドキリとした。寝不足で頭が回っていなかった事が恥ずかしくなったのだ。その寝不足の原因は仕事の緊張ではなく家庭にある事がばれたのでは無いかと不安になった。

昨夜帰宅後、キッチンに置いておいた私愛用の鍋やフライパンは全て粗大ゴミとして捨てられたらしく、そこにあったのは裕祐のキャンプ用のコッヘルと飯盒、ダッチオーブンだった。それらは直火用だったのでIHの我が家では使えず、どうしようと途方に暮れかけた。食器も私が厳選して選んだ物は食器棚からは消え、彼のキャンプ用の木目調のプラスチックの物が我が物顔でそこには鎮座している。


私のノリタケやマイセンのティーカップなどは一体どこに消えたのか…考えるまでも無い。裕祐は細かい事を考えるタチではない。鍋やフライパンと同様に不燃ごみとして既に回収されているのだろう…。


大人しくその皿を手に取り裏返す。電子レンジ非対応…

しょうがないと思い、私はまだ捨てられていなかったジップロックに鶏肉と調味料を入れようとしてまた固まった。調味料が無かったのだ。正確には私の愛用するものだけ無い。母から教えてもらって取り寄せていた粉末だしや旅先で気に入って買い続けている藻塩、友達から勧められてハマったポン酢などは全て無く、調味料と言えるのは砂糖と焼き塩、卓上醤油と裕祐が何にでもかけるケチャップとソースとマヨネーズだけになっていた。


でもそれでもご飯は作らなきゃと奮闘した。電子レンジ以外使用禁止と書いた紙の貼られたオーブンレンジで蒸し鶏を作り、蒸し野菜も作りレンジだけでなんとか夕飯を完成させた。


でも裕祐は「いつもの味じゃ無い、火の通りが甘い、俺を食中毒で殺す気か?」と宣った。


IH対応じゃなかったから…それにいつもの調味料が無くなってたから同じ味にはならないと反論した私に彼は言った。


「それは甘えだよ。実際料理は出来んだから道具が無けりゃ出来ないなんてはずないだろ?IHが使えないならキャンプ用のガスコンロだってあるんだし、調味料なんて無駄!使わないもの置いておく生活なんかしてたら俺たちは貧乏人と同じだぜ?ワンステップ先をみなきゃな!」


私はキャンプ用のコンロのありかも、使い方も知らない。そんな不満を言い出せず彼が皿の上の料理が見えなくなるほどケチャップとソースをかけるのを眺めた。


「ごめん、私は食欲無いから今日はいいや…」


そう言ってテントの中に隠れた。寝室代わりのそこで寝袋に絡まって1人泣いた。新婚早々なんでこんな理不尽に付き合っているんだろ…結婚ってもっと楽しい物じゃないのかな…。



テントの薄布を隔てた先からは食器を下げるカチャカチャとした音が聞こえる。そして多分流しにおいて水だけ出した音…洗った音は聞こえない。


どのくらい時間が経ったのか、個室と化していたテントの扉が開かれ、不機嫌を滲ませた裕祐が入ってくる。


「そんなに怒るなよ。これで一つ俺たちはステップアップして凡人から脱却したんだから喜べよ……まぁ、確かにガスコンロ出してなかったのは悪かった。明日から出しとくから機嫌直せよ」


そう言ってガサガサと寝袋を弄る。

チャックに触れられて私は咄嗟に内側からジッパー金具を握り込んで抵抗をした。しかし力は彼の方が強くコクーン型の寝袋は剥ぎ取られた。


そして彼は私を食べるのではないかというような激しく貪るようなキスをしてきた。私は抵抗して口を開けないで首を振ってみせたけれど、馬乗りの彼に頭を押さえつけられ、鼻も塞がれる。空気を求めて大きく空いた口内に彼は自分の舌を捻じ込ませる。気持ちが良いキスではない。なんとも独りよがりで乱暴なキスだった。


そのまま彼の手は前戯もしていない秘部へと伸びる。

「チッ、なんで濡れてないんだよ…めんどくせぇな」

いきなり襲われて濡れるはずがないだろうに…


そのスキにパジャマのズボンと下着を脱がされる。


「やめて!気分じゃないの…」


彼は止まらない。

「うるせえな…せっかく仲直りしてやろうって言ってんだから大人しく従っておけよ。ほら脚開けよ」


もう抵抗する気力もない。

私はそのまま彼に身を委ねた。ローションすら勿体無いとケチる彼はペッペと自分の唾で指を濡らし乱暴に秘部を弄ってきた。快楽よりも痛みで顔が歪む。それを彼は勘違いしたまま自分のテクニックはすごいだろ?と自慢してくる。

こうなったら早く出す物出してもらった方が手っ取り早く解放されると私は学んでいた。


「なんだよ、嫌だって言った割にはノリノリじゃん。最初っから嫌がる振りなんてすんなよ、萎えるから」



ふりなどではないが彼には伝わらなかったらしい。人の機微を彼に推し量れという方が酷なの知れない。

私は月経前症候群の治療の為にピルを飲んでいた。だから彼は安心して私の中で何度も果てた。



解放されたのは深夜を回ってからだった。彼は何度も果てては私を組み敷いた。それも柔なベッドの上などでは無く膝をつけば床に当たる程薄いキャンプ用のマットのマットの上で。ヒリヒリと痛む陰部にこっそりと起きてトイレで軟膏を塗ろう…こんな惨めな事を日課になどしたくなかった。しかし、トイレの棚の上にあった私の生理用品一式が姿を消していた。ナプキンもタンポンもサニタリーショーツさえ無い。勿論一緒に入っていた軟膏も無い。

明後日まである彼の結婚休暇が終わる頃にはこの家に私の物も、私が選んだ物も残っていない気がして気が遠くなりかけた。


大人しくヒリヒリと痛む恥部を庇いながら寝室代わりのテントへと入れば彼は既に高鼾をかいて眠っていた。


そのまま私も寝ようとしたけれど、何とも自分が惨めに思えて寝付けなかった。


翌朝は5時に叩き起こされた。

寝付けたのもついさっきの感覚の私に彼は「早起き出来たから、今からジムに行くぞ!24時間利用可のジムなんだから今から行こう!それに気付いたんだけど家で風呂に入らないでジムでシャワー浴びれば一石二鳥じゃん」とご機嫌で提案してきた。

そして当然のように拒否権のない私をずるずると引き摺ってクローゼットから運動着を投げよこす。


反抗したらまた不機嫌になる…それが嫌で私は従った。

ジムでは私達は1時間程ランニングをして汗を流した。サニタリー用品が捨てられていた為に下着に不快感があって集中出来なかった。昨日の彼の欲情の痕だ。

そんな不快感の私を横目に彼は「朝からいい汗かいてる俺たちって勝ち組じゃね?」と少年のように笑っていた。


「そうだね」と彼が不機嫌にならない程度に相槌を打ってやり過ごした。


彼はまだ結婚休暇で休みだった為見送られて家を出た。家を出た瞬間に何だかホッとした。

それにしても、何故結婚休暇をこのタイミングでで彼はとっているのだろうか…私の会社にも結婚休暇はあるけれど、私は取得していない。移動のタイミングもあったし、何より結婚式の時の為に取っておきたかったからだ。彼はその時には休みを取ってくれるのだろうか…そんな事を考えながら満員のバスの中で10分ほど深い眠りに落ちたのを思い出す。



その寝不足が祟っての今だ。

私は雑念を払うように素早く頭を振ってから徳丸さんへと返す。


「へぇ、そうなんですか!徳丸さんそういうのお詳しいんですか?」


「いえ、お客様からの受け売りです。僕、趣味のネットゲームとかで夜更かししがちで…寝不足のまま店頭にいたらお客様に以前叱られました。3食食べてしっかり寝て、休日には心に栄養を与えなきゃだめだと…」


「いいお客様ですね」


「はい、そのお客様はオリジンシリーズのファンなんですよ。あれ確か葛山さんのプロジェクトでしたよね。社内報で表彰の記事読みました。物販でも問い合わせが毎週入ってくるくらい人気なんですよ」


「反響あったのは知ってるんですけど、現場の方から聞くの初めてで…何だか嬉しいですね」


私がそう答えると徳丸さんは近くの自販機に社員カードで決済を済ませてミルクティーを私に渡してくれた。


「僕、言われたものだけ忠実に作れば良いって思ってたから、あんな風にお客様のこだわりを感じながら一緒に作れる家具って感動しましたよ。お客様からの評判も良いですし、誇って下さい。あと…お節介かも知れないですけど葛山さんは笑顔の方が似合います。折角お客様と直接会えるセクションなんで笑顔で頑張りましょう…って僕の方が苦手なんですけどね、笑顔」


そう言って徳丸さんは頭をかいた。


休憩中には何でミルクティーを選んでくれたのか聞いた。

そしたら徳丸さんは視線を一度天に向けて答えてくれた。

「不快に思われるかも知れませんから先に謝っておきますね、すみません。葛山さんは新婚と聞いていますので、もし、今妊娠されていたらカフェインって良くないんじゃないかなって思って…あと、僕缶コーヒー飲むと胃が変な感じになるんで、あんまり飲まなくって…」


思わず私は吹き出す。

「気を回しすぎですよ、徳丸さん。私まだ妊娠してません。してたら言ってますよ。でもありがとう御座います。それと、私も缶コーヒー飲むとちょっと調子悪くなるんで助かりました」


そう返せば少し苦笑まじりで「すみません、でもそれならよかったです」と返された。



初日からの接客研修を終えてその日の午後から徳丸さんの後について接客を学ばせてもらった。


徳丸さんの接客は丁寧だ。そして家具の作り手ならではのセールスポイントでお客様の関心をひいている。確かに笑顔は苦手みたいだけれど、一生懸命さは伝わるもので冷やかしのお客さんさえ見積もりの依頼を下さった。


お客様の生の声が聞こえてくるのも嬉しかった。以前の私が今の私を肯定してくれている。そんな気さえしてくるほどに新たな部署は私の心を支えてくれた。



大丈夫。私の居場所はここにもある。

そう思えた。


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