8:後始末
「とまぁ戦闘は終わったわけですが……。」
(後片付けがめんどいんだよなぁ。いくらウチはドロイドがいるといえ。)
「数が数ですからねぇ。戦闘の疲労もありますし。指示を飛ばすだけでも一苦労です。」
「にゃー! 重いにゃー!!!」
「ところでなんでドロ猫は仕事を手伝っているので?」
あの子ウチとは無関係とまでは言いませんが、部外者なのになんでドロイドたちに交じって作業してるのでしょう? あ、『私』にもわからない。……戦力にはなっているみたいですし、手伝ってくれるのならば甘えておきましょうか。
そんな私たちは、無事砂賊たちの襲撃を粉砕。安全を再確保できたため、その後始末に現在追われています。
まぁ死体の処理や、残骸の処理。使える部品の回収など、色々しなくてはなりませんからね。特に死体を放置しておけば危険な現住生物を呼び寄せてしまうかもしれませんし、部品を回収すればいい値段が付くかもしれません。
あと普通に家が近いので、綺麗にお掃除しておきたいという気持ちも。
(客商売ですから景観には気を使いませんと。)
ただまぁ、これらは“目玉”を考えればオマケのようなもの。
死体はいつものごとく燃やし尽くして灰にした後にダストボックスへ。WEBで拾ってきたお経読み上げ24時間ループでも流しておけば満足するでしょう。破材の方は使えそうなものは回収し、不可能な物は分別して溶鉱炉へ。さっさと指示出しをして済ませておくことにします。
これでようやく肝心の……。
「このドレッド、どうしましょうか。」
(結構綺麗に残ったよなぁ。)
私の前に倒れ伏す、三機のドレッド。
ひとつは炉心の誘爆によって上半身が吹き飛んでしまい、下半身のキャタピラ部分のみ。
残り二つはコックピットが吹き飛んでいる以外、比較的綺麗に残っていますが……、万全ではありません。片方の軽装は敵が盾にしていたので見えない所にダメージが重なってそうですし、重装の方は『私』が結構殴っていたので確実に内部へのダメージがあるでしょう。
なにせあの電流が流れる棒でぽかぽかと殴られていたのです。精密機械の塊であるドレッドがダメージを受けていないはずがありません。『私』に見て貰わなければ解りませんが、最悪ただの鉄屑未満に……。
(ん~、ギリ許容範囲だな! 多分元通りに動かせるぞ!)
「ほんとですか!」
大変良い知らせ。流石『私』です。
何をどうすれば大丈夫なのかは技術者ではない自身には解りませんが、彼女が可能といえば出来るのでしょう。軽装の方は私達の『鐵山』と同じ作業用ドレッドのようですが、重装は完全な軍用ドレッドです。もしかすると整備次第で私達のサブ機として使えるかもしれませんし、『鐵山』の新しいパーツとして使える可能性も。
それが出来なくても、外部からコックピット部分のみを買い付け、そのまま埋め込んでしまえば完品のドレッドとして売り出すことが出来るでしょう。軍で採用されるぐらいにはその性能が認められているのです。表のルートでは戦闘用ドレッドが民間に流れない以上、かなりの値段が付くことでしょう。
「ふふ、夢が広がりますね……!」
確かにこれまでも、敵対したドレッドを確保することは何度かありました。
けれどこちらの想定以上に状態が悪かったり、破片しか残っていなかったり、周囲の環境から拠点に持ち帰るのが不可能だったりと色々な問題がありました。けれど今回は、かなり状態の良い形で残ってくれています。しかも運びやすい拠点の近くで。
これは頬が緩むのも仕方のないこと。ちょっとそろばんを弾く手が止まりませんね……!
「といっても、かなり慎重にことを進めるべきでしょうが。」
(そうなのか?)
「えぇ、何しろ“コレ”は、軍からの盗品でしょうからね。……証拠となりそうなコックピット部分は消し飛んでいますが、警戒するに越したことはないでしょう。」
コックピットは、その機体の“脳”にして様々な情報が集まる場所です。
軍のものとなると、パイロットの情報などが入ったコンピュータやOSなどが集まり、同時にビーコン。発信機なども設置されていることでしょう。先程の攻撃によって綺麗に消し飛ばすことが出来ましたが……。“そこ以外”に仕込まれている可能性もあります。
前世の地球、そのどこで聞いた話か解りませんが……。とある機械部品の裏側、正解を知らなければ解体しても解らない様な場所に、識別コードが刻まれている存在などがあったそうです。この星の軍は腐敗しあまり頼りにならないのは確かですが、そう言った仕掛けが無いとは言えません。
「警戒するに越したことはないでしょう。」
(……ドロ猫に装備取られてるような軍だぞ?)
「…………何も言い返せませんね、うん。」
この星の軍は、あまり規律を保っているとは思えません。
何せドロ猫が『ぎゅーって抱きしめてお酒一緒に呑んだらなんか色々教えてくれたにゃ!』と言っています。情報漏洩への対策が全然なっていません。ここだけ聞けば軽視しても仕方のない存在なのですが……。それは“今”の話。
もしかすると違うかもしれませんが、流石に成立した当初から軍がゆるゆるだったとは思いません。当時定められた対策、盗難対策などがまだ生きている可能性があります。成立からかなり時間が経っているので既に形骸化した可能性もありますが……。やはり注意は必要でしょう。
「それに、“発覚”した時のリスクを考えれば、ね?」
(あ~、腐敗してるからこそ、ってやつか。)
「えぇその通り。」
規律を保っておらず、腐敗している。
そう考えると、軍は我らを守ってくれる存在ではなく、単なる武装した賊にまで落ち込みます。勿論真面目に業務を熟している人間もいるにはいるでしょうが、外れを引いたときが不味い。
もし私達が軍のドレッドを販売しようとしているのが見つかれば、確実に“奪い”に来るはず。
いくら盗品を確保したモノであっても、それを証明する人間はもういません。もし証明できたとしても、聞き流されるのが関の山でしょう。なにせ高値で売れるのです。私達から盗品として奪い取り、自分たちで売る。むしろそれで済んだらいい方で、公権力を以て我々の資産全て没収とする、とかして来るかもしれません。
もしそうなれば抵抗はしますが……。
この『給油所』も『鐵山』も、無事では済まないでしょう。
(マジ? って言いたいけどなんか想像出来ちまうのがなぁ。)
「もし勝てたとしても敵対した時点で指名手配は確実、社会的に死にますからね。“胸”の原材料がこの星でしか取れないことを考えると、別の星に逃げるとかも出来ませんし。」
私達の胸に埋まる、『グリオナイト・コア』の原材料となるグリオナイトはこの星特有の鉱石です。
この星であれば何処にでも落ちている石ころですが、“星外”から取り寄せるとなると、流石に足が付きます。どんな相手だろうと身を守れる力を持たない我らにとって、この命綱に繋がる情報は極限まで隠さなければなりません。
それにこの『給油所』は両親から受け継いだ大事な土地、命には代えられませんが愛着があるのです。私も、『私』も。そう簡単に捨てることは出来ないでしょう。
「かといって馬鹿正直に申告するのも……。」
(駄目そうだよなぁ。)
正直に『軍のドレッド拾いましたー』といっても、おそらく丸ごと奪われる可能性が高いでしょう。
この星の軍上層部の考えは解りませんが、現場の人間でも十数機のドレッドを動かすことが出来ると聞きます。私達が持つドレッドや、今回鹵獲した品々。後はこの施設に旨味を感じれば、人を送って奪いに来てもおかしくはありません。
つまり何も変わらないわけですね。
(となると……、どうすんだ? いつもの業者に頼むか?)
「大口の取引先ではありますが、専門が食品なのでドレッドは無理でしょう。少々危険が伴いますが……。流すのであれば“裏”でしょうね。といっても、伝手など欠片もありませんが。」
(『アタシ』、そういうの嫌いだしなぁ。)
あたりまえでしょう? あんなのただの賊の集まりなんですから。
私達が“裏”と呼ぶ、巨大なマーケット。この星の政府に認可されていない品々が集まる場所ですが、その“商圏”は星を覆うレベル。規模が規模ですから黙認している存在です。この星で生きていて関わらない方が難しい奴なのですが……。非合法故に多種多様な落とし穴が転がっています。
確かに私達も正規では手に入らない品を取り寄せるために、WEB経由で使用したことはあります。
「“買い手”と“卸先”では求められる信用の差が段違いでしょう。信用できる良い伝手があれば話は別ですが……。」
(やっぱこの前の話受けておいた方が良かったんじゃね?)
「あんなものどう考えても罠でしょう。」
彼女が言う、以前あった話。
此方が何度かドレッド関連の品を買っていたことから、傭兵の一人だとみなし持ちかけられた仕事。確かに報酬額は良かったのですが……、叩けばきな臭い話がどんどんと出てくる話でした。即座に此方に繋がる情報を『私』に頼むことで消し飛ばし、違うアカウントを複数用意することで事なきを得たのですが……。
そもそも、生き残るだけなら真っ当にお仕事した方が効率がいいんですよ。確かにハイリスクハイリターンかもしれませんし、私達ならそのリスクを乗り越えられるかもしれません。しかしそんな場所に長くいれば、確実に要らぬ注目を受けることでしょう。
“騙して悪いが”が横行する世の中なのです。関わらない方が賢いでしょう?
(まぁ確かになぁ。……んで? 結局どうするんだ?)
「とりあえず全体的に軽く調べた後、軍属のものは一旦放置し、それ以外は修理して“表”に売却する感じでいきましょう。その間に“裏”への伝手を探す、って感じですね。」
この軍の重装ドレッド。有用なのは確かですが、処分するのであれば早めに済ませたい所。
残すか売るかは『私』の管轄なので口を出すことはありませんが……。売るのであれば早急に捌いてしまいたいもの。手元に置いた場合は『私』が原型が無くなるまで魔改造するので問題ありませんが、売る場合は手元に置いておくだけリスクが高まります。
軍が何かを嗅ぎつけてくる来るより先に、対処しなければ。
「少し危ない橋を渡るかもしれませんが……、仕方ありませんね。っと、とりあえずこのドレッドたちのこと、頼みました。」
(あたぼうよ! んじゃ、重装の方から確認するとしようかねぇ。)
あ、そうそう。
あの下半身だけになったドレッドですけど。そのままじゃ多分スクラップとしての値段しかつかないでしょう? でしたらいっそのこと装甲車として作り直すのはいかがですか? 軽装でもドレッドの装甲ですから固さは十分ですし、吹き飛ばした車たちの中で生き残ったジェネレータを使えば、動くようにはなるはず。
其方の方が高値が付くでしょうし、売れなくても再利用が可能です。時間ある時でいいので、お願いできますか?
(お、いいなソレ! りょーかい! んじゃそんな感じで進めてみるわ! とりあえず動作確認とか始めるから右手と右目だけ貸してくれ。ドロイドへの指示も並行してやるし、装甲車の設計も合わせてやっちまうから。)
「も、もうそこまでするのなら全部……。ってもう作業入っちゃいましたか。」
体をそのまま彼女に渡そうとするよりも早く、こちらの意思に反して動き出す右腕と右目。
昨日夜遅くまで体を使っていたが故に、私の時間を奪いたくないという配慮なのでしょうが、絶対凄い見た目になってますよね……。
まぁ既に集中し始めてしまった彼女に声をかけ、それを乱してしまうのはこちらも本意ではありません。ドロイドたちへの指示も適当に終わらせて、彼女が問題なく集中できるようなサポートに入るとしましょうか。
っと、その前に。
「ドロ猫ー! 貴女、今日も泊って行くのですかー!?」
「え! いいにゃ!? 泊まりたいにゃ! ごはんたべたいにゃ!」
「解りましたー! だったらドロイドたちの指示をよく聞いて働いてくださいねー! お夕飯はこちらで用意しておきますからー!」
「やったにゃー!!!」
はいはい、じゃあ私達の分も含めて何か作らねばなりませんね。勿論野菜多めで。
……にしても、ただの砂賊がドレッドを3機も持っているとは。
車だけでも滅多に見ない規模でしたし、もしかすると賊の中でもかなりの大物だったのかしれません。
「それが消し飛んだわけですから、少しはこの砂漠も安全になると良いのですが……。」
ま、期待し過ぎないようにしておきましょう。
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