表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
二重人格パイロット、銀河辺境砂漠型惑星にて  作者: サイリウム


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

21/24

21:誘爆



「おうおうおうッ! 大漁だなオイ! あはははッ! 人がゴミのようだッ!」


(どこの大佐ですか?)


「2000年前のミームは解らんッ!!!」



精神内でそう会話しながら、左腕を動かしていく。


普段こういうのは『アタシ』の担当だが、この状況を見ると、な?


そんなことを考えながら、ホバーを全力稼働。敵軍の中へと突っ込む。


これだけ聞けば自殺行為かと勘違いされそうだが、実際は逆。『アタシ』の方の知識にはなるが“無双ゲーム”みたいな状況だ。腕を振るえばそれだけ敵が消えて、盤面が変わっていく。あぁ確かに、昔の人類が好んでいたってのも解る状況だ。気持ち良いなぁオイ?



「でありゃァ!!!」



声を上げながら、操作幹を押し切る。


同時にアタシたちの鉄山が唸りを上げ、手に納めた棒が軌道を描いて行く。後は吹き飛んでいく車両や命を眺めながら、次のエモノの算段を付けるだけ。


いつもは面倒なのと、やるなら大物狩りをしたいってことで雑魚の相手は『アタシ』。それも遠距離からチクチクと削ってもらうってのが定石だが……。アタシたちの弾丸ってのは限りがある。無駄な乱発はアイツの怒りを買うし、金も掛かる。対ドレッド用に取って置くことを考えれば、序盤がアタシ担当になるってのは納得のいく采配って奴だろう。



(爽快ですねぇ。……まぁ、ちょっと相手が可哀想になってきますけど。)


「これがホッケーってやつかァ!?」


『ひぃぃぃ!!!』

『ぎゃぁァァァ!!!』

『熱、逃げ、無ッ!』


(ま、熱核ジェット、ですものね。)



アイツの言葉に精神の中で頷きながら、棒状の武器。『甘樫』を振るい更にエンジンを回す。


直前に軍の奴らと決めた担当を考えれば、アタシたちの役目は敵ドレッドの殲滅。


車両など無視して一気に距離を詰めたいところではあるが……。敵もただの木偶の坊じゃねぇ。そう易々と道を開けてくれるわけではねぇし、車体で道を塞いだり、弾撃ち込んできたりもする。アタシが拵えた『鐵山』の装甲を考えれば多少命中しても困るもんじゃねぇが、一か所に集中されれば流石に困る。特に足回りのエンジン、ホバーに使ってるところはマジで誘爆厳禁だ。



(故に吹き飛ばし、そして轢き殺していくと。)


「ご名答ッ!!!」



武器で車両を掬い上げながらそう叫び、叩き起こすのはモーションデータ。


ドレッドの関節たちが唸りを上げ、浮き上がった車両に全力のスイング。


奴らが打ち込んでくる弾丸やロケットだけでなく、“車両”までも同時に弾き返し、一気に吹き飛ばしてしまう。中にいる人間もいい感じにシェイク……、いや弾け飛んでいることだろう。ま、アタシたちの拠点に攻め込んできたんだ。お代として命を支払うって考えれば安いもんだろ。


ま! これじゃ赤字になっちまうけどなァ、『アタシ』ッ!!!



(お口が悪いですねぇ? まぁいいですけれど。ではちょっと借りますよ?)


「おうッ!」



肉体の操作権。左腕だけが一時的に切り替わり、ドレッドが大きく足を開く。


そして周囲に叩きつけられる、熱の奔流。


この星は地球ってやつに比べて各段に暑いらしいが……。


その数百倍だ。



(周囲の空気を取り込み、エンジンで熱しながら吐き出すことで巨体を浮かせる、でしたか。その風圧、その熱量。……知識が無くて良かったかもしれませんね?)


「お、解説してやろうか?」


(ご勘弁。)



見上げるほどに巨大な鉄の塊を浮かせるんだ。その出力は『アタシ』の想像よりも多いだろう。


2000年代の感覚で言えば、ジェット機の噴出口ってやつか。宙間移動とかそう言うのが発展しすぎて、空力関係が軒並みロストテクノロジーになってるせいか“ジェット機”って言われてもピンとこねぇんだが……。まぁ仕組みは解る。


そいつよりも何倍も強く、そして熱い風が叩き込まれるわけだ。付近に立っている人間は木っ端みじんに消し飛ばされるだろうし、車両も同様に溶かされることだろう。


中に乗っている人間は今頃ドロドロ。とっても怖いよなぁ?



(あ、射線通ってますね。回避行動入ります。)


「……まぁアタシからすればこっちの方が怖いけど。」



彼女が精神の中でそう言った瞬間、両腕の操作権が『アタシ』へと移動。


直後弾かれたように動き出す『鐵山』。


そして先ほどまでアタシたちが居た場所に、かなり大き目な砂柱が立ち上がる。


言葉通りに、『アタシたちから、かなり距離のある敵ドレッドの砲撃を察知し、回避した』ってことなんだろうが……。普通にドレッドの姿、視界に入ってないぞ『アタシ』? 砂の起伏とかのせいで全く見えてないところからの砲撃だぞ『アタシ』?


何で解るの……?



(いやなんでって言われましても……。感覚? あ、応射しますんで左腕だけ借りますね。)


「お、おう。」



そう言いながら肉体の操作権を借り受け、左腕だけで射撃を始める『アタシ』。


こっちも負けじと右腕だけで武器を振るい、近くの敵車両や戦車を吹き飛ばしていくが……。連なる射撃音と、そこから数拍後に響き渡る爆発音。ドレッドの炉心に誘爆し、吹き飛んだ音だ。ノールックで撃破したよこの人。


い、いや解るよ? ウチのドレッドの主兵装、その口径は200㎜。言い直せば20㎝砲で、地球の“古代”。1900年代じゃ数百mの巨大な戦艦とかに乗せられてった大砲だ。目視できないレベルの距離、地平線の先にまで届く砲弾だからさ、見えない場所に“届く”のは解るんよ。


でもなんで当ててるんですか……?




(残りドレッド12,車両は220程ですか。80も単身で減らせば圧も減りますし、後は例の御二人に任せて……。あれ? どうしましたか『私』?)


「いや、相変わらずやべぇな。って。」


(お互いさまでは?)



近接とか技術関連じゃどう足掻いても勝てないだろ、って? い、いやまぁ言わんとすることは解るけどさぁ。『アタシ』が生まれ変わる前の時代、いや国って下手すら一生銃とか握らない国だったんだろう? なのになんでこう、色々出来てるんだ?


……こ、こっち来てからした訓練? さ、さいですか。



「し、しッ! 気合入れ直していくぞオラァ!」


(えぇ、敵車両集団に若干の怯えが見て取れます。ドレッドに取り掛かっても、あちらがちょっかいを掛けてくる可能性も低いでしょう。単身では『給油所』を狙われるので最後の1兵まで追い回す所ですが……。)


「あっちには軍属の2人がいる! あとは任せて“本番”ってわけだなッ!」



ホバーを全力で孵化しながら、爆発音がした方に向かって進んで行く。


こっちとしてはちと暴れたりねぇが、軍の奴らにも仕事は割り振ってやるべきだろう。それに、ここまでノーダメージだったとしても、“関節”にかかる負担は無視できねぇ。燃料に関しては“コア”があるおかげで気にしなくてもいいんだが、ドレッド自体への負担はどうしてもあるからな。


どんな武器でも使い続ければすり減って行くように、ドレッドのパーツ。特に稼働が多い関節部への負担はかなりデカい。戦闘用のチューニングをしてあるから十数回戦っても動くには動くだろうが、どっかでダメージを受けたり、想定外の故障が引き起るのは常に考えなくちゃならねぇ。


故に戦闘時間は短く、スマートに。ノーダメで綺麗に対象をデストロイ。


ま、その辺りのバランスを取って、敵ドレッドに突撃ってわけだな!



「……ッ! み・つ・け・たァァ!!! 『アタシ』ッ!!!」


(目視確認。回線開きます。索敵は此方で適宜共有、戦闘に集中を。)


「助かるッ! おらおらおらオラぁぁぁ!!!」



『っち! 来たぞ!』

『散開! 散開!』

『射撃に警戒!』



「まずは3匹ッ!」



もう一人の『アタシ』が爆砕した機体から少し離れた所。


そこで周囲への警戒を行っていた敵ドレッドが3体。


全てキャタピラタイプのドレッドだが、その機種は全て違うドレッド。一瞬寄せ集めかと思ったが、統一された動きをすぐに返してくるあたり、単に機体の種類が違うってだけだろう。んで、遠目に見ただけでかなりの練度。“私服の熟練兵”ってやつだ。


そんなことを考えていた瞬間、マズルフラッシュ。



「甘めェッ!」



光が見えた瞬間、ホバーを全開。


砲弾が突き刺さる場所よりも前に、前進する。


直後、背後から響く爆発。



『なッ!』

『二脚じゃない! ホバーだッ!』

『こんな片田舎でかッ!』


「田舎もんで悪かった、なァ!」



勢いそのままに、更に前へ。


相手が放ってくる砲弾の合間を縫いながら、出力するのは一つのモーションデータ。


人類が古来から使い続けた“投げ槍”の動きを、鉄の巨人がトレースしていく。


撃ち込むのは、アタシの武装。


狙うのは、その足元。



「だラァッ!!!!!」


『ッ! 車輪がッ!』



敵ドレッドのキャタピラ、それを回す車輪たちの間に差し込まれるソレ。


代償としてその先端が折り曲げられてしまうが、確実にその足を止める。


そして、それだけの時間を稼げれば。



『おい、前ッ!』


「初めましてだなぁオイッ! んで死ねッ! “スイッチ”ッ!」


(交代。コックピット確認、打ち抜きます。)



敵から絶えず放たれる砲撃、それを避けながら武器を投擲し、足止め。


その間に距離を詰めきり、完全な0距離へ。


そして“代わる”ことで、私の手によって弾かれる200㎜。


跳弾を目的として作られた鋭角。その先端に向けて撃ち込まれたソレは、こちらの想定通り“頂点を潰して”突き進んでいきます。そして完全に“押し潰し”、その動きを止める敵ドレッド。えぇえぇ、確かに私でも『相手を倒す』ことは出来ますが、どうしても弾数が増えてしまいます。何せ長距離からチマチマと打ち合いしか出来ませんもの。


しかし彼女であれば、避けながら接近が可能。


そしてここまで近づいてくれれば、外すなど不可能です。



「流石ですね、“スイッチ”。」


「だろうッ!!!」



即座に切り替わり、ホバー移動。


さっきぶっ壊した亡骸を含めて、こっちに向けて打ち込んでくる弾丸たちを全て避けきる。ここまで近づいて、発砲時の光さえ収められれば回避なんて軽く出来る。後はその合間を縫い、より接近。懐から取り出すのは、圧縮しておいた『甘樫』のストック。


基盤を押し込みバネを解き放てば、手のひらサイズから見慣れた長棒へ。


後はそれで……。



「殴る……、って思うよなぁッ!!!」


『なッ!?』



長棒をあからさまに見せつけ、振り上げてみれば、それに合わせた防御に動こうとする敵機。


だがこっちが取るのは、武器の振り下ろしではなく“全力の蹴り上げ”。


わずかに空いた両腕。防御の為に掲げたその合間に、吹き上げたホバーと共に跳躍。本気の蹴りをお見舞い居してやる。タンクタイプと二脚タイプ。重量差はあっちの方が上だが、ホバーとコアのおかげで出力はこっちの方が上。そんなもんに蹴り上げらまえば、結果は明白。


完全にその重心が崩れ、後ろ側へとひっくり返っていく敵ドレッド。そして曝け出すのは、完全に無防備な“腹”。



「“左”!」


(了、斉射。)



右腕で棒を振るい、残りの敵が撃って来た砲弾を弾きながら。左腕だけの操作権を『アタシ』に譲る。


そうすれば即座に銃を引き抜き、撃ち込んでくれる彼女。炉心を狙ったのだろう、引き金を引くと同時にドレッドのホバーが後退を始め、爆裂と同時に離脱を完了してくれる。



(残り1。お返しします。)


「あぁ! んじゃパッと行くぞォ!」


(了解。起動しましょう。)



コアの制御をアイツに任せながら、接近を続ける。


最初は賊の集まりか何か、って考えていたが……。どうやら結構ガチの奴らみたいだ。ドレッドどころか武器も統一がない傭兵みたいなやつらだが、連携も出来れるし、味方が一気に2機も消されたって言うのにコイツはまだ戦意を保っている。『商会』お抱えの兵士、ってとこなんだろう。


ま、どっちみち結末は変わらねぇが、こういう“ヤル気”を最後まで見せてくれる方が“狩りがい”があるってもんだ。



『ちィ! なら近接ッ!』


「ノリが良くて結構ッ!」


(グリオナイト・コア出力上昇開始。)



相手が銃を投げ捨て近接用のランスを取り出し走り出した瞬間、こっちの準備も出来上がって来る。


アタシたちの胸からどんどんとエネルギーがくみ取られていき、叩き込まれるのは『甘樫』。単なる鉄の棒がどんどんと熱を発していき、一気に真っ赤に。


後は慣れ親しんだように。



「ヒートッ!」


『ッ! そこッ!!!!』



そのコックピット目掛けて、叩き込まれようとする長棒。


けれどその形状から、相手の想定内の行動だったのだろう。


即座に眼前の動きが変わり、“潜り込ませる”ものへ。


アタシたちの棒を逸らしながら、ランスを此方にだけ叩き込もうとする動き。敵の攻撃を無効化し、逆にこっちのコックピットを貫こうとする策。確かに、上手い。なにせ両者ともにかなりの速度を出した“騎馬突撃”の構え。回避は難しく、下手に動かすと機体に無理が掛かる。つまりコレを回避できたとしても体制が崩れ、追い打ちを受ける可能性が高い。


だからこそ、



「“スイッチ”ッ!」


「近接戦は苦手なんですけど……、ねッ!!!」



騎手丸ごと、変えてしまう。


即座に態勢をずらし、選ぶのは“凡手”。もう一人の「私」であれば最善手ばかり選べるでしょうが、私には不可能です。せいぜい及第点をギリギリ拾えるくらいが限界でしょう。けれどここ、対ドレッドという高速で状況が変化していく環境においては、それが“通じ”ます。


相手からすれば、急に乗り手が変わったようなもの。まぁ人格ごと入れ替えているので間違っていないのですが……。ま、明確な“ズレ”を彼方だけでに押し付けることが出来るのです。


何せこっちは常に状況を共有していますからね? 引継ぎもバッチリと言うわけ。



『なッ!』



相手のコックピットを狙う動きから、別のモノへ。


敵もそれに合わせようと動いてくるが、何せ乗り手が違う。狙う箇所も、取る戦法も、機体の動かし方も。


高速で動き続けるがゆえに“予測”を前提として動くドレッド乗りからすれば、明確な隙。


後はそれごと、叩ッ切るだけ。




「“ヒート・スラッシュ”」




ホバーで円を描く様に動き、選択するのは袈裟斬り。


赤熱化し崩壊寸前まで熱を蓄えたソレを振り回し、敵のランスごとその機体を斬り結びます。


機体への負担や、その動きの稚拙さなど。彼女からすればお粗末なモノでしょう。実際、敵を両断しきることが出来ず、立ち切れたのはその半身のみ。けれどコックピットだけは……、うん、ちゃんと溶かせてますね!


……あら、操作権が。『私』、何故急に? あとドレッドも急速発進させてますが何故?



「何故っておま動力、ッ!!!」



直後、背後で巻き起こる大爆発。


あまりもの威力で一瞬機体が宙に浮きますが、即座に彼女が姿勢制御。砂をまき散らしながら何とか着地に成功します。機体へのダメージも……、最低限に納まってますね。



(……も、もしかして私。炉心、丸ごと切っちゃいました?)


「ぎ、ギリな? でも先端綺麗に抉っちまったから爆散してった感じ。……最悪切りつけた瞬間

、その場でアタシらごと消し飛ぶ可能性もあったからマジビビった。」


(…………き、近接戦はもう全部任せます。)





〇“スイッチ”


セファたちが愛用する戦術の一つ。遠距離戦を得意とする『私』と、近距離を得意とする『アタシ』を適宜入れ替えながら戦うもの。本人たちは得意ではない方を“苦手”と言うが、平均よりも上回っているのでかなりの脅威。


ホバー移動の平均速度が時速400~kmであり、またキャタピラタイプでも200km近く出るため、ドレッド対ドレッドの戦いは接近戦に於いて“予測”に重きを置いた勝負になっている。遺伝子操作によって人類が耐えうる速度も大幅に上がってはいるのだが、このレベルの戦いになって来ると流石に“見てから動く”のはほぼ不可能。技術的にその対応をAIなどの機械に任せることも可能だが、予測して動いたり、直感で動いたりできる人間の方が強いため、あまり主流ではない。


そのため、急に“乗り手が変わる”のは無法に近く、対処は難しい。


ちなみに複座式を用いることで似たようなことも可能だが、セファたちのように“二人で一人の身体を動かす”感覚が無ければ難しく、これをするぐらいであれば『操縦を片方に、索敵や通信などをもう片方に』という戦車のような操縦をした方が効率的であるため、滅多にみられない。




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ