おまけ
拝啓 お母さま。
お元気でしょうか。
こちらは毎日色とりどりの可愛らしい花が溢れ、マイナスイオンに満ちた癒し溢れる森で素敵な旦那様と可愛い双子の娘に囲まれとても幸せな日々を過ごしています。
「「ママー、まーだー?」」
「ごめんごめん、ユラ、イル、私たちも頑張って用意しようね〜」
玄関でライルさんをお見送りして振り返るとカラフルなリボンやクロスを抱えたとんでもなく美少女な娘達が大きな瞳をキラキラさせて催促していた。
双子なのでほぼ一緒。見分け方は右目尻に小さな黒子がお姉ちゃんのユラ、左目尻に小さな黒子が妹のイル。
エルフの里で初の双子ちゃん。
出産時、二人目がいる事に里のベテラン奥様方がびっくりしていた。
ちなみに、私基準で美少女なため、この里基準ではちょっと…いや、かなり残念な部類になるらしい…。
解せぬ!
今日は春を祝うお祭りで、以前より我が家ではイースターエッグもどきを毎年開催してライルさんとお互いのたまごを隠して見つけあうと言ったほんとにささやかな楽しみをしていた。
それを知った周りからも楽しそうだから春祭りの一環として行う事になったりして、年々規模が大きくなり、今では大々的に春祭りのお楽しみイベントにまで成長していた。
この時期は親子共々たくさんのたまごにペイントしたり探し出すヒントが書かれたカードを作ったりと忙しい。
今日は祭り当日、会場になる村の中央の広場に並べられたテーブルや、子供達がエッグを探すために使うカゴをリボンで飾って用意しなくてはいけない。
ライルさんたち若い男衆はヒントの場所にカラフルになったたまごを隠しに行っている。
たまごはいろんな種類のたまごを使うからダチョウのたまごのように大きいものからピンポン玉くらいの小さいものまで様々で、探すのがとっても楽しい。
子供達も大きくなるにつれカラフルなエッグをいっぱい探し出せるようになってこのお祭りを毎年首を長くして楽しみにしている。
「さあ、ちびっこ諸君!用意はいいか!
去年はあっという間に全部見つけられちまったが、今年は去年よりずっと難しくなったからな!ちょっとやそっとじゃぁ全部見つけられないだろう!
隠されたたまごは全部で50!
制限時間は2時間!このホーンの音が3回鳴ったらまたここに集まるんだぞ!!
では、いくぞー!よーい、スタートだ!!」
青年部のリーダーの合図でカラフルなリボンで飾られたカゴを持った子供達が思い思いの方角にいっせいに走っていく。
「さーて、うちの可愛いお姫様達は今年はいくつ見つけてくるかしらね」
「去年が制限時間の半分も経たずに隠した分を見つけられて青年部が悔しがってたから今年はいくつか難易度を高くしたって言ってたぞ」
「それって、コニーが魔石とかツルッとした石を集めているって言ってたのに関係ある?」
「あぁ、多分な」
今年はフェイクもアリってことかな?
でも、コニーに見せてもらったツルッとした石たちは宝石のようなキラキラしたものとか、天然の模様がきれいな石達でこれはこれで探し出せたら大ラッキーだ。
「そろそろ早い子達は戻ってくる頃かしら」
「そうだな。ユラもイルも去年は簡単すぎてつまらなかったって言ってたから今年は満足してくれるといいが」
穏やかに微笑を浮かべる旦那様は掛け値なしでイケメンである。
なのにエルフの常識としては身の毛もよだつほどの恐ろしい不細工ってどういう事だコラ!
そんな事をぼーっと思い出していたらお姫様達が帰ってきたようだ。
「「ママー!パパー!見てみて〜!すっごいたまごを見つけたわ!」」
振り返り、ライルさんと見た娘達は……
大きな大きな、それは大きなたまごを二人で抱えて帰ってきました…。
「ゆ、ユラ…イル?それは……
すごいたまごだな…どこで見つけてきたんだい?」
ライルさんが見たこともないくらい口の端が引き攣りながらも聞いている。
それもそのはずだ。
だって、あれはどう見ても大型恐竜のたまごと言われてもおかしくないほどに大きな大きなたまごだから。
色は薄い水色にも見えるし、角度が変わればピンクのような…白い菊花石のような花柄に見える模様もあってとても綺麗なたまごだった。
「ねぇ、すっごく大きいから重かったでしょ?パパに持ってもらったら?」
「ん〜ん、
だいじょぶ。このたまごとっても軽いのよ」
「そうなの?」
「うん、ママも持ってみる?
はいどーぞ」
大人の手でもひとかかえもあるたまごだ。軽いと言われてもそこそこの重量があるだろうと思っていたが、抱えた手に伝わる重さは子猫ほど。
本当に軽い!むしろほぼ重みを感じないほどだった。
「わぁ、これほんとに軽いわね!大きいから抱えてるけど片手でも余裕で持てそうね!
ねえ、ライルさんも持ってみて!」
「ほんとだな。これは、中身が入っていないのか?
しかし、強い魔力を感じるが…。」
ライルさんが言うにはこのたまごは、見たこともないほどの大きさで、たまごを産むモンスターでこの親になりそうな程大きいモンスターはこの大陸には居ないからどんなモンスターが生まれるかすらわからないらしい。それに、たまごからはすごい魔力を感じるようで、早く巣に返した方がいいと言うことになった。
なので、青年部の腕っ節自慢の若者を引き連れてたまごを見つけた場所まで来たのだが……。
が、崖!まるで火曜サスペンスで犯人が敏腕刑事に追い詰められて「まて!早まるな!」とか言われてそうな下は荒波の海な断崖絶壁の崖!
しかも、見つけたのは崖の中腹に突き出てる木の枝だそうだ…。
うん、ママは、この高さ見てるだけで血の気が引いていくよ…。
「ね、ねぇ、ゆら、いる?ここ、降りたの?」
「「うん!あのね、手前の木に一回降りてあの木までジャンプすれば簡単におりれるのよ」」
「簡単にではありませーん!
危ないでしょう!ダメよ絶対にダメ!!
ライルさんも言ってやって!」
「そうだな、最初のうちはちゃんと補助になりそうなロープつけて飛んだ方がいいな」
「違うでしょ!ライルさん!可愛い娘が怪我したらどうするの!むしろここから落ちたら怪我どころじゃないからね!」
なんて事!エルフにとってみたら森の中で木を伝って移動や、多少の岩場もひょいひょいと移動しているのは知っていたけど、どう見ても20〜30メートルはあるであろう断崖絶壁も、移動できる道として認識しているのか……。
「まさかライルさん、ユラとイルとお出かけする時もこんな道通ったりするの?」
「ここまで高くはないがあの木までくらいの高さなら何度かは……!っ
で、でもな、この崖下はユイの好きな牡蠣や魚が取れるからみんなよく登り降りするな…
もちろんもっと上り下りしやすい箇所があるからそっちからだがな」
私の怒りの視線に気づいたのか急に焦りだすライルさん。そんな焦り顔もまた大好きです。
しかし牡蠣…。海は見えども海岸に行ったこともなかったから、海に近づくことはなかったが、まさかの崖移動。
「牡蠣…先日のゴベ爺が持ってきた牡蠣もこの崖下の…?」
「まぁ、そうだな。」
まさかのお爺ちゃんまでもがこの崖を降るのか…。
エルフ恐るべし……。
「でも、子供にこの崖は早いわよね?まだ7歳なのよ!」
「「ママ過保護〜!もう7歳なのよ!パパも私たちくらいではトトタン山のてっぺんまで登ったって言ってたよ!」」
トトタン山とは切り立った岩でできたそれはそれは険しい山だ。
熟練のエルフと認められた者が切り立った岩をトトタン、トトタンと軽快に飛び移る事からトトタン山と呼ばれている。
一種の独り立ちの目安ともされている山だ。
「パパと一緒にしないの!
あなた達は女の子なんだから」
「そんなのズルいわ!
ママがウンチなだけでしょ!」
「どこで覚えたのそんな言葉…ママは、ママは、運動音痴なんかじゃないもの!エルフの人達が凄すぎるだけなんだから」
「あー。ユラ、イル、あまりママをいじめちゃダメだぞ。ほら、ママと仲直りのギュウして」
ライルさん…なんか違うよ…。
はぁ…と、肩を落としているうちに、たまごがあったであろう場所まで青年部のカロンという若者が、それこそひょいひょいと飛び降りて行って、このたまごはここで産み落とされたんじゃなく、どこかから運ばれた最中にこの枝に落ちてきたんじゃないかって推察してきた。
親がこの木にとまった形跡はないが、たまごが引っかかっていたであろう枝のさらに上の枝が上から押されて折れたようになっていたらしい。
なので、このたまごの親はここには居ないって事になり、このたまごを破棄するかなんとなく育てて孵化したらまたその時に対処するかって話になったんだけど、そんな話、子供の前で言ってたら答えは決まってるよね。
「こわすなんてダメ!このたまごは私たちのなんだから!ほら!まだあったかいのよ?割っちゃったらダメなんだからね!」
と、言う事で、後の対応がまるっとライルさんに放り投げられたのだ。
そんなたまごを拾ってから3年が過ぎた。
たまごはその年の終わりに無事孵化し、刷り込みなのか、ユラとイルにべったりなドラゴンになった。
そう、ドラゴンだ。名前はぴーちゃん。
この大陸にはドラゴンはいない。
はるか昔の言い伝えでは、神の使者としてドラゴンがこの世界に存在しているとされている紛う事なき伝説のドラゴン様である。
そんなドラゴンだが、まだ子供のせいか、カンガルーのように二足立ちをしているとお腹がポッコリと出っ張っていて、大きな蝙蝠のような皮膜の翼をいくら羽ばたかせても一度も飛んだ事がない。
最近では首回りにキラキラと輝く乳白色のオパールのような虹色を内包するふわふわな羽毛が生えてきている。
大きさは大型犬くらいで、見た目はぽってりしているのにやはり重量はかなり軽い。なのでかなり抱っこが大好きな甘えん坊さんだ。
食べ物は主に果物だが、ライルさん曰く、娘達と寝ている間に娘達から溢れている魔力を吸収しているからそちらが主食なのではないかと言っていた。
そう、娘達と一緒に寝ているのだ。
可愛い女の子の枕元にぽってりとしたぬいぐるみのようなドラゴンが双子の頭を包み込むようにして寝ているのだ。毎夜覗くのが楽しみで仕方がない。
ライルさんと今日もまた一緒に娘達の安眠を確認し、二人の寝室に戻る。
エルフとしては類を見ない凶悪な見た目と畏怖されていたライルさんも今では近寄り難いのはまだ多少あるようだが、本人には自覚がないが、子煩悩で、奥さん大好きな家族愛ダダ漏れな姿を晒しているので今では村のイベントはもちろん、人々との親交も深められ、村の誰もがライルさんに邪な目を向ける者はいなくなった。
たまにライルさんと公園で仲良くベンチで遊ぶ双子を見守っていると青年部の若者などに「ほら見ろ、ライルさんでもあんなにイチャイチャできる奥さんがいるんだから我々もきっと彼女ができるさ!」と仲間を慰める常套句として使われている。
これもライルさんほどの残念な見た目でも幸せになれるって思われてるからなのはわかるが、せめて聞こえないようにしてくれ。そしてライルさんも私もブサイク違うからな!
ま、なんにせよ、村人達との距離も近づき、家族揃って元気に仲良く過ごす幸せな日々だ。
拝啓 お母さま。
お元気でしょうか。
またまた家族が増えました。
イケメンで素敵な旦那様と、旦那様にそっくりな美少女な双子ちゃんに、新たにぽっこりお腹がキュートなドラゴンが家族の仲間入りを果たしました。
我が家の中はイケメン、美少女、ゆるキャラという癒しの三種が揃い踏み状態で、日々幸せで充実しております。
親不孝者と思われるでしょうが、この世界にこれてとっても幸せです。




