違和感
キャサリン様が教室を出て行った。
「髪飾りの事、簡単にわかりましたね。」
あんなに悩んでいたのは何だったんだろう。
王子から貰った髪飾りを見せながらユリウス様を見るとユリウス様も髪飾りを見ていた。
「まさか、何人もの令嬢に渡していたとはなぁ」
「婚約破棄をする為の証拠になりますか?」
二人でため息を吐いてしまう。
「何も無いよりも良いとは思うけど、ロザリエンヌ様の話を聞いて期待してたからなあ」
「そうですね。ロザリエンヌ様の言い方だとジルベール殿下が約束の証を渡したように思えたんですが、違いましたね」
「とりあえず、今日は帰ろう。教室に二人でいるのも良くない」
言われて気付いた。(これはいけない)
公爵令息で美青年のユリウス様は殿下と並び令嬢からの人気が高い。こんな所を誰かに見られたらどうなるかわからない。
「そうですね。私は今日の事をお爺様に報告します」
「私も、父上に言っておこう」
誰もいない事を確認して教室をでた。
伯爵家に帰ってお爺様の執務室に向かう。
髪飾りをお爺様に渡し、今日の話をする。
「でも、お爺様。何かおかしいとは思いませんか」
王子に感じた違和感をお爺様に相談しよう。
「お爺様、髪飾りなのですが、ジルベール殿下は何人もの令嬢に贈っているそうです。
ただ、ロザリエンヌ様はその事を知らないようで、殿下が自分だけに渡したと思っていて、その結果、ユリウス様との婚約破棄や王太子妃という言葉がでたようです」
少し考えて、話を続ける。
「でも、私には、それは、ロザリエンヌ様の思考を誘導してるようにもみえます」
「ロザリエンヌ嬢に殿下の婚約者になれるかもしれないと思い込ませているというのか?」
お爺様は、驚いて私を見る。
「はい。私の考えすぎかもしれませんが」
「どうして、そう思った?」
「はじめは少しの違和感でした。
家格のせいか侯爵家のロザリエンヌ様と公爵家のキャサリン様がいつも殿下の近くにいたのですが、殿下は表面的な対応をしていると感じました。
エリシア様にあのような態度をしていたので誰か他に好きな方がいると思っていたのに、皆を平等に扱っていたのが不思議でした」
そうなのです。王子はいつも穏やかに微笑えんでいるのですが、それがまた胡散臭いですね。
話を続ける。
「何度か食事をご一緒させていただきましたが、ロザリエンヌ様は積極的で殿下の関心をひこうとしてました。時々強引になって殿下が困る事がありますが、そういう時はキャサリン様が話をはぐらかすのです。
キャサリン様は殿下を狙っているというより守っているように思えます。」
「うむ」
お爺様も何か考えていますね。
「そして今日です。
昨日ユリウス様がマーカス様に髪飾りの事を話したばかりなのに、今日、キャサリン様に呼ばれました。
呼ばれて行くとマーカス様、キャサリン様、だけでなくジルベール殿下までいらして、私に髪飾りをくださいました。
昨日の今日なのにです。
さらに、ロザリエンヌ様に髪飾りの事を内緒にするように言われました。他の令嬢にもそう言っているようです。
ロザリエンヌ様の性格を考えて内緒にした方がいいと言われればそうかもしれませんが」
「違うというのか」
「はい。私にはロザリエンヌ様に勘違いさせるように誘導しているように思えます。
殿下とマーカス様とキャサリン様には何か考えがあるのではないでしょうか。
それでエリシア様にあのような対応をしているのではと思います。
私の憶測ですが」
私は今まで思ってきた事をお爺様に言った。
お爺様は顎をさすってずいぶん考えていた。
「明日、スタンジェイル公爵に会ってみよう」
お爺様はトマスを呼び、明日の話をしていた。




