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女神様は観察日記をつけるそうです。  作者: みかげ
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Ep.001「リベンジマッチ」

桃音ちゃんメインです。

越神は気づいている。この世界を見ている、あなたに。


「今日は、そうね。この話を聞かせてあげる」


彼女は「観察日記」を手に取り、ページを開く。


「桃音ちゃんが、リベンジを持ちかけられた時のお話よ」


―――――――――――――――――――――――――――――


ある日の放課後。


桃音とみくもは地元からはなれた町で、ゲームセンターをハシゴしていた。

しかし桃音はむー、と不満げにほほを膨らませている。


「桃音、あんまり怒ると面白い顔になるよ?w」


「笑いごとじゃないよ、みくもん!」


彼女はみくもに向き直り、後ろ向きに歩きながら語る。


「だってさー、どこにもVSガンシューティングないってどうなの?クレーンゲームばっかり」


この辺のゲームセンターは驚くほどに、陳腐なゲームラインナップだったのだ。

桃音が得意とするガンシューティングはおろか、みくもが好むリズムゲームの類すらなかった。


「うーん、やっぱり家庭用のゲームで妥協する?」


ちなみに二人から「地元で」という選択肢は出なかった。二人とも、有名すぎるため有事の時以外は出禁なのである。


桃音がゲームのクオリティの違いにより妥協するか悩んでいる時。


「ここであったが百年目ぇ!!」


桃音の背後から声がかけられた。向き直るとそこには桃音を指差し、仁王立ちしている茶髪のウェーブヘアをした女性が立っていた。


「…え、だれ?」


覚えていない桃音はそう口に出していた。さまざまな大会に出ているのだ、対戦相手の顔などいちいち覚えたりしていない。


みくもがこっそりと耳打ちしてくる。


「あんたがこないだのVRガンシューティング大会の、準決勝で完封勝利決めた対戦相手だよ。八城さんだっけ」

「あー、八城さんね。それで、何かご用事?」


彼女は息を大きく吸い込み、一言。


「リベンジマッチ!!ですわ!!」


「「……へ?」」


八城の家に行き、VRガンシューティングゲームで戦う事になったのだ。





あれから30分後。


八城は震えていた。身に染みて知っていたことだが、桃音の強さはおかしい。

10連負けだ。しかも完全試合で。八城には、チートをしているとしか思えなかった。


「こんなのおかしいじゃないですか!!コイツ、チートを使ってるに違いありません!!」


「へ?」


「私の攻撃に全く当たらないのはありえないでしょう!!必中技を回避なんて、言い逃れ出来ませんよ!?」


確かに桃音は相手の必中攻撃を含めて、全ての攻撃を回避していた。ゲームにアシストシステムはロックオン機能程度しかないため、回避はプレイヤースキル頼みとなる。



「そんな事するわけないじゃないか!…桃音は、避けただけだよ。チートなんて一切使ってない。断言する」

みくもはライバルにチート疑惑を向けられていい気はしなかったためか、若干怒りをはらんだ声になった。


「…通常攻撃は、まだ良いとしましょう。銃の向きなどから事前回避は大いに出来ますからね。でも、私の使った攻撃スキル『神がかった一撃』は、必中補正があるから必ず当たりますよね?」


はぁ、とため息をつく桃音。


「必中補正の定義、知ってる?」


「それはもちろん。対象に必ず当たる、でしょう?」


「うーん、そうじゃなくてさ。『どの時点で、必ず当たった事になる』のか、だよ」


「……」


「必中攻撃ってのは具体的には『狙ったオブジェクトの即死ポイント』へ当たるように軌道修正しながら、『対象オブジェクトに接触するまで』飛ぶ攻撃なの。相手の頭に飛ぶわけだね。でも、実際頭をかばって手で受けたりしても、そこで必中効果は切れるんだよ」


「……」


「それと、このゲームの銃弾ね、当り判定は『オブジェクトにぶつかったところ』にあるけど、ダメージ判定は『肌に接触、または肌に一定以上の衝撃を加える事』なんだよ。つまり、『装備に当たった時点で必中した』ことになるの。ダメージになるかは別としてね」


「……それが、どう関係ありますの?」


「ネタバラシだけど。『頭に飛んでくる銃弾を、手袋つけた手で受けながした』だけなんだ。手袋には当たったから『必中した』事になってるけど、衝撃を逃がす当たりかたをしたからダメージにならなかった。それだけ」


「え……ちょ、てことはあなた……音速の銃弾を視認しているの?」


「そんなことしたら、人間やめちゃうでしょー。視認したりしないよー」


「出来ない、じゃなくて『しない』なのですね?」


「あ……」


「……まあ、理屈は分かりましたわ。馬鹿げた回避技術ですわね……でも、楽しくない!」


ゲームは楽しくあるべき、それは桃音も分かっている事なので少し同情する。

しかし、同時にゲームで手加減するのは相手に失礼、という気持ちもあるため難しい。


そんな八城の隣…空いてるほうにみくもが座り、つげる。


「じゃあ私とやろっか!桃音よりは下手だしねー、私は」

そういってみくもは軽くウインクする。


八城は不覚にもドキッとさせられていた。





「嘘じゃないですか!!何が、下手なもんですか!!」


八城はみくもに対しても10連負けだった。


桃音は全攻撃回避する怪物だが――


「え、だって桃音と違って完全試合じゃないよ?さすがに必中攻撃は回避できないし」


みくもは桃音の強さを基準に自分の強さを計っている。

そのため、若干感覚が麻痺していた。


「貴女も大概じゃないですか!!なんで?どうして銃弾を銃弾で撃ち落とせるんですの?!」


確かにみくもは必中攻撃を回避できるほどの反射神経を持たないため避けてはいない。

だが、当ってもいなかった。


「そりゃ、銃弾同士でも当り判定はあるし、当てれば落とせるよ?」


「なんで当てられるんですの!?」


「発砲のタイミングと銃の種類と銃弾の種類で座標計算して当ててるだけだよ?」


「……」


「みくもんーかかってこいやー」

「お、今日は新しいテクニックに挑戦するよ?さすがに今日こそは、勝って見せる!!」


そのバトルを一人眺める八城。

静かな戦いではあるけど、桃音は相変わらず全て回避。みくもは走りながら射撃、ジャンプしながら射撃、跳弾を混ぜた弾幕射撃など、互いにやってることがおかしくて頭を抱える八城だった。


その日、桃音60勝0敗。みくもは10勝50敗。八城は0勝60敗。


「……もうやだ何この化け物たち…」


一人、場違い感にうなだれる八城であった。

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