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彼と彼らと私のおはなし  作者: たいやき
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私と祐兎くんとお話 2

次の日、祐兎くんと話をすることはなかった。

話しかけるタイミングはいくらでもあったし、聞きたいことも山ほど抱えていたのに話しかけることができなかったのだ。

祐兎くんは昨日のことなど忘れてしまったのかと思うほど自然に一日を過ごしていた。

自然ではあったけど、どこか不自然でもあった。

明らかに私を避けていた。

私の近くを通らないようにしていたし、通ったとしても足早に去っていったのだ。

私はそれに気づいていた。

でもそのせいで余計に話しかけづらくなってしまった。

なんだかほのかたちに相談する気にもならない。

これは自分で何とかしないと、何も進展しないような気がする。


そう考えて私は再び、彼に話しかけることを決心した。


その決心から数日。

一限の授業が終わり、次は移動教室。

私はいつも通り、教科書を取り出すふりをしながら横目で祐兎くんの動きを目で追っていた。

彼は座ったまま大きく伸びて欠伸をしている。

よっぽど授業が退屈だったのか、ただ疲れたのか。

理由がなんにせよ、祐兎くんのああいう姿はとても可愛らしく見える。

いつも一緒にいる友達に「早く動け」と急かされているが、全く気にしていないようだ。

私は教科書を机の上にわざと広げて片付けるふりをする。

このふりの間、横目で彼を観察するのが私の習慣なのだ。

祐兎くんの友達は、先に出て行ってしまったようだ。

教室からはどんどんと人がいなくなっていく。

私はほのかのことを目で探したが、席にはいないし、教室内にも姿は見当たらなかった。


(ほのかも行っちゃったか)


私はそろそろ移動しようと思って席から腰を上げる。


「ねえ春川さん」


教室のどこかからか、声がした。

私が横目でずっと見ていた彼の声だった。


「ねえって」


私はそっちを見るのが何故か怖くて、下を向いたままフリーズしていた。

横目でそっちを見ようにも、垂れてきた髪の毛が邪魔をして全く見えない。

話しかけるつもりではあったが、話しかけられるのは想定外だったから脳内の思考が完全に停止してしまっている。


「俺と話がしたいんじゃないのー?」


いつも友達と話している時の祐兎くんとは違った話し方だった。

この前話した時も、ちょうどこんな感じの話し方だったことをよく覚えている。


キーンコーンカーンコーン


教室中に授業開始のチャイムが響いた。

次の授業は移動教室。

つまり、授業が始まった今、この教室には私と祐兎くんしかいない。

髪の毛で視界が遮られていてもこれだけははっきりと分かる事実だった。


「あーあ。授業始まっちゃったね。まあいっか。

 ねえ、春川さん、いいよね?授業行かなくても。」


少し笑いを含んだ言い方だった。

私も途中から教室に入るのは嫌だけど、この教室に50分間も二人きりというのもなんだか…。


「そろそろ話をしませんかー?」


祐兎くんが少し大きめの声で言う。

確かに、ずっとこうやっているわけにもいかない。

恐る恐る顔をあげて、祐兎くんのほうを向く。


「あ、やっとこっち見てくれた」


祐兎くんは自分の机の上に脚を組んで座っていた。

そこでニコニコ笑ってこちらを見ていた。


「で、俺の病気のことは分かった?」


「・・・分からなかった。

 調べてみたけど、祐兎くんの気になる行動が分からなくて・・・。」


「はは、そっか。」


彼は少し笑って、私から視線を外した。


「春川さんはさぁ、俺とどうなりたいの?」


「え」


「君は俺に告白して振られたわけでしょ?でもまだ俺に気がある。

 君は俺と付き合いたくて横目で俺のことチラチラ見てるの?」


(私が横目で観察してるの気づかれてた!?)


いつもさっとさりげなく見ていたから気づいていないと思っていた。

知られていたと分かったら急に恥ずかしくなる。

私は赤面しつつ顔を伏せる。


「それとも俺が頭のおかしい精神病患者だって分かってそれで興味本位でってこと?」


今しがた伏せた顔を勢いよく振り上げて「そんなんじゃない!」と否定する。

私は本当にそういう気持ちで彼に近づいているつもりじゃない。


「私は、私は本当に祐兎くんが好きだから!

 だからこそあきらめきれないの!!

 ちゃんと納得してないのに『うん分かった諦めます』なんて言えないの!」


「・・・だから俺の病気のこと知りたいってことね」


そうだよ、と言いつつ「私、この間もそういったよね」とつぶやく。


「じゃあここですっきりさせたいことがあるんだけどさ」


祐兎くんは人差し指を立てて私の目を見つめてくる。

何をすっきりさせるんだろう。

私は何の話か分からなかったがとにかく頷いた。

今この機会を逃したらもう祐兎くんとちゃんと話せる機会がなくなってしまう気がした。


「まず一つ目。ここでなんの病気か俺から直接聞く。

 まあ多少時間がかかるけど、君にとって最良な方法かもしれないね。

 手っ取り早くて確実だ。

 で、これを選んだ場合、もう俺には必要以上に近寄らないでもらう。」


二本目の指を立てる。

私は思った。

彼はここで私との関係をすっきりさせたいんだと。


「二つ目。自力で俺の病気を調べて当てる。

 この場合は今まで通り俺のことを横目で観察しててもいいよ。

 ただし、答えられるのは一回だけね。

 間違えたら俺たちの関係はただのクラスメイト。

 友達でもなんでもなくなるってことで。」


彼はどんどん条件を提示してくる。

私は彼の口から溢れ出る言葉を聞き逃さないようにただ聞き続けた。

三本目の指が立ち上がる。


「三つ目。これが最後ね。

 今ここで俺と君の関係を消す。」


「関係を、消す・・・?」


「そう。

 三つ目を選んだ場合は君ができるだけ早く俺を忘れられるように努力するよ。

 もちろん俺も、君との出来事を忘れるようにする


 で、どれにする?」


彼はニコニコしながら回答を求めてくる。


思考をフル回転させて考える。

とにかく三番はありえない。

私は彼との関係を消したくはない。

一番・・・、これもダメだ。

必要以上に近づくなっていうのがどうも引っかかる。

伝達事項がある時しか話しかけちゃだめとか?

それだとしたらとても困る。

私は祐兎くんと色々話をしたいし、せめて友達でいたい。

そうなれば残るは二番。


「ひとつ、質問してもいい?」


「何?」


「二番を選んで、もし私が一回で当てたらそのあとは?」


「・・・そうだなぁ。

 まあ、その時は春川さんの好きなようにしていいよ」


「じゃあ二番!!」


即答。

絶対に彼の病気を当ててやる。

そして彼にもう一度告白してやる。

私の恋をまだ終わらせないんだからね!!


「おっけー。

 じゃ、俺の病気を調べるためにせいぜい頑張ってね

 あ、俺に聞いたりしちゃだめだよ?

 他の人に聞くのももちろんだめだからね

 あとは好きにしていいよ」


「分かった」


私は二度目の決心をする。


絶対に彼の病気の正体を暴く!!



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