拡がる 前編
ヒートショック:
急激に寒い所から暖かい所に移動したときにおきる一時的な失神等を指す。
ガチャ、キぃー、と決められた役割を果たしたように戸が音を立てる。
現在時刻、17時30分。今日は体が重く、鉛のように体が鈍り腐っている。
…風呂にでも入るか。 そう脊髄反射し、体は風呂の方向へと動き出す。
億劫だが、仕方があるまい。
シャーっ、カパン、と最期静かに締まるタイプの引き戸を閉め、脱衣に取り掛かる。
ポトポトと脱衣し、本身を露わにする。 すべてが作業的だ。
そこからなんやかんや洗髪、身体洗いなどなどを済ませ、やっと湯船に浸かった。
嘆息を漏らし、黙って天井を見つめ、湯気が天井に昇華されていくのを見つめる。
10分弱入っただろうか。湯船の底に手全体を付き、浮力をおこして体を浮かす。
熱い湯に浸かったため、全身が熱く、火照る。
急に足を伸ばして立ち上がった…
3秒経ったとき、ブーーンというボイラーの音に交じって耳鳴り。鼻の裏に血の香り。咄嗟に手すりにつかまる。付随して視界に黒く、藍色や群青色ともいえる砂嵐のような靄がかかる。
何をしている?何が起きた?意識が体から逸脱して離脱していく。
自分の機能を紛失していく。頭から血の気が引く。何も思考できず、ただ運命に逆らう。ときすでに遅し。後の祭り。覆水盆に返らず。
あゝ、私はもう死ぬんだ、と直感で感j、
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24歳。人っ子一人いない一人暮らしのアパートにて。桶や風呂の蓋がけたたましくなる音を境目に
何も記憶にない。
次章:拡がる 後編




