第三十三話「既読」
遠くなったのは距離だけなのか。
それとも、
もっと別のものなのか。
## 第三十三話「既読」
---
十一月の終わり。
---
東京はすっかり冬の空気だった。
---
しょうまは仕事を終える。
---
時計を見る。
---
午後八時。
---
今日も残業だった。
---
駅へ向かう。
---
人の流れに混ざる。
---
毎日同じだった。
---
スマホが震える。
---
通知。
---
しょうまは足を止める。
---
たかとだった。
---
少しだけ驚く。
---
最後に連絡したのは、
いつだっただろう。
---
一か月近く前かもしれない。
---
メッセージを開く。
---
『旧盆じゃなくて夏休みだったな』
---
しょうまは吹き出した。
---
意味が分からなかった。
---
今は十一月だった。
---
なぜ今その話をするのか。
---
数秒考える。
---
そして返信する。
---
『今さらか』
---
送信。
---
すぐに既読がつく。
---
でも返信は来ない。
---
電車が来る。
---
しょうまは乗り込む。
---
数駅過ぎた頃。
---
再び通知が鳴った。
---
『思い出した』
---
それだけ。
---
しょうまは笑った。
---
相変わらずだった。
---
会わなくなっても。
---
連絡が減っても。
---
たかとは、
たかとのままだった。
---
窓の外を見る。
---
夜景が流れていく。
---
ふと、
あの夏のことを思い出す。
---
海。
---
定食屋。
---
コンビニの駐車場。
---
「帰るか」
---
「帰らないな」
---
そんな会話ばかりだった。
---
スマホを見る。
---
トーク画面は静かだった。
---
既読だけが残っている。
---
それでも、
なぜか少し安心した。
---
ずっと一緒にはいられない。
---
でも、
完全にいなくなるわけでもない。
---
そんな関係が、
少しだけ心地よかった。




