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一歩、二歩、三歩。  作者: ともり。


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32/32

第三十三話「既読」

遠くなったのは距離だけなのか。

それとも、

もっと別のものなのか。

## 第三十三話「既読」

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十一月の終わり。


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東京はすっかり冬の空気だった。


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しょうまは仕事を終える。


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時計を見る。


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午後八時。


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今日も残業だった。


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駅へ向かう。


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人の流れに混ざる。


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毎日同じだった。


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スマホが震える。


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通知。


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しょうまは足を止める。


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たかとだった。


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少しだけ驚く。


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最後に連絡したのは、


いつだっただろう。


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一か月近く前かもしれない。


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メッセージを開く。


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『旧盆じゃなくて夏休みだったな』


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しょうまは吹き出した。


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意味が分からなかった。


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今は十一月だった。


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なぜ今その話をするのか。


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数秒考える。


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そして返信する。


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『今さらか』


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送信。


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すぐに既読がつく。


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でも返信は来ない。


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電車が来る。


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しょうまは乗り込む。


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数駅過ぎた頃。


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再び通知が鳴った。


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『思い出した』


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それだけ。


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しょうまは笑った。


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相変わらずだった。


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会わなくなっても。


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連絡が減っても。


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たかとは、


たかとのままだった。


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窓の外を見る。


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夜景が流れていく。


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ふと、


あの夏のことを思い出す。


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海。


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定食屋。


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コンビニの駐車場。


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「帰るか」


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「帰らないな」


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そんな会話ばかりだった。


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スマホを見る。


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トーク画面は静かだった。


---


既読だけが残っている。


---


それでも、


なぜか少し安心した。


---


ずっと一緒にはいられない。


---


でも、


完全にいなくなるわけでもない。


---


そんな関係が、


少しだけ心地よかった。


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