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黎明を灯す光 ~神に至る道~  作者: Mr.Z


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072.特攻型オメガ オケアノス

 命からがら、アンジェ達と地上へとたどり着くと、思いがけない光景を目にした。


 先程卵から生まれたばかりの青いクラゲのオメガが、ビルの窓を割って触手で内部を漁っていたのだ。そして人を捕食して、更に大きくなっていた。そのサイズは高層ビルをも超える程だ。


「テイラー上等兵! 民間人の救出を! 一人でも多く救うんだ!」


「了解であります!」


 アンジェ小隊が犠牲者を一人でも減らそうと、触手を射撃して切断を試みるも、体が大きくなるに伴って太くなったそれは容易に切断する事はできない。


 だからといって諦めるという選択肢がある訳ではない。彼女達は襲われているビルの上層階に移動し、直接人々の救出に向かった。暗いトンネルではあれほど怯えていたのに、オメガを相手にする時にはその様子は微塵も見られない。さすがだと感心せざるを得ない。


 こちらも仕事しますか。オレはビルの段差や壁を蹴っては、近くの高層ビルの屋上に上る。そこはクラゲオメガが襲っている高層ビルと同じ高さのビル。道路を挟んだ向かい側だが。。


「よお」


 真正面にクラゲオメガを捉え、声を掛ける。すると3本の触手がこちらに向かって伸びてきた。その速さは音速よりやや遅い程度。今のオレなら難なく避けられる。ギリギリで避けると、生臭い臭いが鼻に突き刺さる。


 吐き気を催しつつ全ての触手を躱し、最後の1本に剣を突き刺す。痛みを感じているかは分からないが、慌てて3本全ての触手を引っ込める。刺さったままの剣とそれを握ったオレごと。


 振り落とされない様に剣を強く握り締め、クラゲオメガとの距離がある程度近付いたタイミングで触手から剣を抜く。そしてそのまま触手を足場にして跳躍。ヤツの眼前に接近する。クラゲオメガもそれに気が付くも、既にこちらの間合いだ。魔剣を開放し、伸びた刀身をヤツの頭部に突き刺す。


 ジュブリッ――と、まるでトマトに包丁を刺したかの様に、いとも容易く剣が頭部を貫く。触手はそこそこ硬かったが、頭部は非常に柔らかい。突き刺した剣を上に振りぬき、ヤツのブヨブヨした頭部を両断する。


 今回はビルという足場があったから頭部まで辿り着けたが、もし平地だと面倒な敵になり得る。だが、都市部では逆に討伐しやすい。その分、エサとなる人間が多いという問題もあるが。


 新型にしては案外、簡単に倒せたな。そう思っていると、今いるビルの下からアンジェの声が聞こえた。どうやら触手に絡めたられた民間人の救出を行っているみたいだ。


 オレも下に降りて手伝うか。剣を腕輪の状態に戻し、彼女の元へ向かおうとした時、クラゲオメガの体の色が青から赤に変色し始めた。そして左右に分かれた頭部が膨張し始める。


「嘘だろ・・・」


 誰がどう見ても、それは『自爆』の合図だった。オレは急いでクラゲオメガの下部に回り込み、サイコキネシスで上空へ吹き飛ばす。が、ビルに絡まった触手のせいで全く動かない。咄嗟に剣を出し、魔剣を開放して回転斬りを放つ。


 触手を全て切断し、改めてヤツの頭部だけを上空に吹き飛ばす。ビルの屋上。そこから更に500メートル程サイコキネシスで移動させたおかげで、およそ上空800メートルの地点まで吹き飛ばす事に成功する。


 青かったオメガクラゲの頭部が真っ赤になり、そして光り輝いたと思った刹那――


 ドォオオオオオオオオオオオオオオオンッ――


 空を埋め尽くす勢いの爆発が起こる。


 その衝撃波は周囲3キロメートル以内にある建物の窓を全て粉砕する程強力なものだった。そしてそれに一番近い位置にいるのはオレ。高層ビルの屋上でその衝撃波を浴び、全身が砕ける感覚を味わうと同時に暴風に巻き込まれた紙切れの様に宙へ舞う。


 視界が二転三転として上も下も分からない状態のまま、他の建物の外壁に体がめり込む。


「ぅぐっ」


 アダマンタイトの骨が折れる程の衝撃。それは普通の人間ならば四肢が千切れる程の威力だ。アンジェは無事だろうか・・・。


 三半規管が正常に戻るのと同時に、肉体の再生が終わる。外壁から何とか抜け出し、クラゲオメガの触手に絡まっているビルの上層部に向かう。どこの階にいるかは分からないが、触手が入り込んでいるオフィスを手当たり次第に探す。


「アンジェ! アンジェリカ! 無事か!」


 呼び掛けると、どこからか弱々しく返事が聞こえた。


「こ、ここであります・・・」


 どうやらオフィスにあるデスクの下に隠れていた様だ。机の下から手を振っていた。ただその声量はいつもより小さい。


 近付いて無事か確認すると、彼女とその隊員が民間人をかばっていたのかデスクのバリケードを作っていた。が、いきなりの爆発音で鼓膜にダメージを受けて眩暈(めまい)を起こしていたらしい。


「だ、大丈夫か?」


「大丈夫じゃないであります・・・」


 命に別状はないけど、しばらくは動けそうにないな。彼女達が動ける様になるまでの間、他の小隊の安否を確認して集合する事にした。とりあえず隊の中に死人はいない。民間人は数十人程クラゲオメガのエサになってしまったが。


 ビルから出て、近くにあった広場に全員が集合した事で改めてコマンダーに連絡してみるが、やはり返事が返ってこない。コマンダーが返事をしないなんて今まで一度もなかった。


 数十、数百にも及ぶマルチタスクを同時にこなせるヤツが、作業中という理由で返事をしないとは考えにくい。だが、試しに左腕の端末から転送装置を起動してみるも、光の柱が現れる事はなかった。


 もしかして向こうで何かトラブルでも起きているのだろうか?


 そう考えていると、上空から大型の輸送船が1機飛んでくるのが見えた。どうやら直接迎えに来たようだ。


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