066.勝利条件
オメガとの戦争の勝利条件。コマンダーが要点をまとめた上で、それを説明してくれた。
『端的に言ってしまえば、敵の親玉を殺せば勝利だ。ただ、それがどこにいるのかまだ特定できていない』
「見つけるのがそんなに難しいのか?」
『そうだ。その親玉がいるのは、地球や惑星マザーがあるこの宇宙域ではなく、アールヴヘイムと同じく別の位相の世界だ』
・・・ん? 一瞬で話が分からなくなってしまった。別の位相の世界って何だ?
『この内容でも理解出来ていない様に見える』
「う、うるさい。別の位相って何なんだ?」
『地球と惑星マザーはいくつか離れた銀河に位置する。その為、物理的な距離しか存在しない。宇宙船さえあれば移動できるという事だ』
地球があるのはアンドロメダ銀河だったはず。つまり惑星マザーは銀河数軒分離れた別の銀河にいるだけのご近所さん。会おうと思えば宇宙を漂っていれば会えるという事だろう。
『一方で、アールヴヘイムは異なる位相に位置する世界だ。つまりどれだけ宇宙の中を進もうが、絶対に見付ける事は出来ない』
「んー。分からん」
『分かりやすく言うと、今我々がいる宇宙とアールヴヘイムがある宇宙は繋がっていないのだ。行き来するには位相を移動する為のポータルを通る必要がある』
「はーん・・・。何となく分かった気がする。建物で例えるとさ、地球と惑星マザーがあるのは1階。だから部屋の行き来は簡単に出来る。でもアールヴヘイムがある2階にはポータルっていう階段を使わないと行けないって事だな?」
『正解だ。非常に分かりやすい例えだ』
「お? お前が褒めるとは珍しいな」
少しだけ嬉しい。少しだけだけど。
「で、オメガがいるのは何階か分からない。だからそれを見付けてオメガを量産しているヤツを倒すか、オメガの生産工場をぶっ壊せば勝ちなんだな」
『その通りだ。だが何度かクラーケンの後を追ってみたが、親玉の居所を探しているのを感じ取られると戦闘態勢に入って逃亡を諦める。そのせいで未だにその位相を見付けられずにいる』
輸送型オメガ クラーケン。いつも宇宙から卵型ポッドを射出してくるヤツだ。オメガ自体知能がそこそこあるのは知っていたが、中々厄介な状況なんだな。
「ふーん。クラーケンに発信機を埋め込むとかは?」
『無駄だ。認知していない別の位相の情報を掴むのは不可能だ』
「ならしらみつぶしに別の位相を探し回るのは?」
『位相の数は無限にある。それもアールヴヘイムの様な狭い世界ならば可能だが、どの位相にいるのかも分からなければ、広大な宇宙のどこにいるのかも分からない。そんな中からオメガの巣を見付けるのは我々オートマタの技術でも不可能だ』
「手詰まりじゃん。ならどうやってアールヴヘイムを見付けたんだ?」
『偶然だ。宇宙を漂っていたクラーケンを発見し、追跡したところポータルを通るのを確認した。そのポータルを解析した結果、アールヴヘイムの位相に移動する事に成功した』
まぐれだった訳だ。次も偶然遭遇するのを狙って何年も宇宙を探索するのは現実的じゃない。先程も言ったけど本当に手詰まりの状態だ。
『とは言え手がない訳ではない』
「そうなの?」
『新型オメガが鍵だ』
・・・分からん。何で新型オメガが鍵になるのか、全く見当もつかない。首を傾げるオレにコマンダーはしっかりと説明してくれた。
『今までのオメガは知能が低く、簡単な命令しかこなせなかった。例えばトウテツは近くの生物を殺害するという命令を実行するだけの殺戮マシンだ』
動物がベースになっている感じがするから、脳内にあるのは食って寝て種を繁栄させるだけみたいな感じなのだろう。
『だが、新型オメガはクトゥルフ以降知能が高くなっている。それによって複雑な命令をこなす事が可能だ。例えばクトゥルフは弾丸はサイコキネシスで防ぐ。群れで行動する時は狩りに重力場を発生させる等。行動パターンが増えている』
ベルゼバブも無音で近付いて相手を洗脳し、同士討ちをさせる。
バエルは透明化を維持して相手に接近してから殺す。
アンラ・マンユはその高い戦闘能力から敵陣に突っ込んでかく乱させる。
確かにトウテツやベヒーモスと比べると知能が上がって戦闘能力も向上しているのが分かる。
『もっと知能が高いオメガが出現すれば、それに伴った能力を有している可能性がある。君がその力を宿す事で、もしかしたら位相の特定が可能になるかもしれない』
・・・オレ? 責任重大過ぎない?
「そんな都合良くいくか?」
『可能性はゼロではない。もしくは知能の高いオメガの記憶を読み取るかのどちらかだ。知能の低いオメガの記憶を読み取ったところで、得られる情報はたかがしれている』
そっちの方が現実味を帯びている気がする。テレパシーやサイコメトリーみたいな超能力でオメガの頭を覗くなんて事したくないんだけど。脳が汚染されたらオレ本当にオメガになってしまう気がする。
オレは後者の方法でオメガの親玉を見付けられる事を心の中で密かに願った。
とにかく、ボスを見つけ出してぶっ殺す必要がある。サーチアンドデストロイっていうヤツだな。
オメガとの戦争の終着点を知り、満足していたら、会議室にガブリエル大統領が入ってきた。
「おや。私の娘を誑かしたウルシハ騎士団長ではないか」
オレの肩を組み、面倒な絡み方をしてきた。いや、本当の事なんだけどさ。そもそもそうなる様に仕向けたの貴方なんですけど。




