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黎明を灯す光 ~神に至る道~  作者: Mr.Z


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052.母の想い

 母艦内部にある最深部。そこにはオートマタの本体とも言えるコアがあった。その存在の名は『マザー』。惑星マザーにて一番最初に意識を持った、オートマタの原初とも言える存在だ。


 その見た目は金属で出来た人間だった。青みがかった銀色の金属、『オリハルコン』で全身が形成され、人間と同じ二足歩行、二本の腕、そして頭部。顔はコマンダーやアンドロイドと同様、中心部にカメラがあり、そこからは青いが発していた。


 コマンダーはその存在の前で頭を垂れていた。そのマザーから、コマンダーにある提案がされる。


『し、しかしマザー。それはあまりにも突拍子だ。そして根拠もない』


 その提案の内容に、コマンダーが珍しく焦りを見せる。


『確かにこのままでは彼が目覚める可能性も低い。だが、「それ」が成功するという保証もない。可能性は限りなくゼロに近いと断言できる』


『それ』が成功する可能性が低い為、命懸けの博打になると考えたコマンダーは提案を否定する。だが、マザーはそれの打開策を提示する。


『・・・マザー。それならば可能性は高くなる。だが、やはり危険だ。その間はこの船が無防備になってしまう』


 リスクヘッジをした結果、コマンダーはやはりその提案を否定する。コマンダーの中で守らなければならない最優先対象はマザーとプログラムされているからだ。所詮は機械で出来た生命体。組まれたプログラムに準じた行動しか出来ない。


 マザー自身は、惑星マザーに存在するオリハルコンが小さく分かれ、偶然意識を持った存在だった。度重なる偶然の事を、必然ともいうが。マザーはそんな自身の存在意義を、自身が生み出したオートマタという種の繁栄だと思っていた。


 だが、最近になってその考えを改める様になった。そのきっかけは、今も尚眠り続けているある少年のせいだ。


 その少年は、オートマタの中で最も合理的な思考を持たせたコマンダーに気に入られ、死亡した今も彼の蘇生を試みている。もし少年以外の人間が、同じ力を持っていたとしても、ここまで優遇しなかっただろう。


 あの少年にが何かがある。コマンダーが執着し、マザーと呼ばれる自身すら、自らを危険に晒してでも助けたいと、助けなければならないと思う程に。その思いを抱く理由は不明だ。もしかすると、その体を形成しているオリハルコンが彼に共鳴しているのかもしれないが、その原因までは分からなかった。そしてそれを確かめる術はマザーは持ち合わせていなかった。


 マザーは、親とも言える存在である自身を最優先で守るという『プロトコル』を、コマンダーから削除した。そのおかげで親は子離れし、また子供も親離れする事になった。


 そして再度先程と同じ提案をする。


『・・・提案を受諾。早速取り掛かろう、マザー』


 コマンダーは先程とは打って変わり、その提案を受け入れる。そしてマザーに背を向けてすぐに部屋を去り、少年の元へと向かってしまった。


 その姿にマザーは呆然とするも、数瞬遅れてからコマンダーのその行動に対して、ある動作をした。


 人間を真似て口元に手を当てる。それはまるで笑っているかの様に――


 マザーの提案を受け入れ、コマンダーは初めて討伐されたアンラ・マンユの死骸がある研究室に赴いた。その頭部から抽出された液体をシリンダーに詰める。その中身は、アンラ・マンユの因子。それを持って、コマンダーは彼の元へ向った。


 初めて自身の演算能力の向こう側に辿り着いた存在。初めて心を教えてくれた人間。初めて軽口を叩く間柄になれた相手。初めて友と思えた相棒。


 そんな彼を助ける為ならば、この身を危険に晒す事など厭わずに救ってみせよう。


『我々が、いや「私」自身が助けたいのだから』


 この思いはマザーの命令でも、オートマタの指示でもない――


 全としてではなく、個として彼を救うのだ。医務室で眠る彼を見て、コマンダーはそう決意した。


 最初にマザーから告げられた提案の内容は、船の全ての機能を、これから行う彼の手術に割り当てるというものだった。それには船の浮遊と姿勢制御の為の処理、それ以外の全エネルギーを彼の為に使うのだ。


 その中には『防衛機能』も含まれている。


 防衛機能をオフにすれば、船だけではなく、惑星マザーをも危険に晒すという事だ。今や惑星マザーを守る為に造ったソルジャーやアンドロイドは、いつでも地球とアールヴヘイムに派遣できる様、全てこの船の中にいるのだから。


 それでも、コマンダーは止まる事はなかった。彼をヒーリングポッドから出し、手術台に乗せる。既に抉られた左目や切断された左肩、刺された腹部の傷は完治している。


 では何故彼が目覚めないのか。コマンダーは、脳に残っているダメージの除去が必要だと考えていた。それを実行する技術はオートマタになかった。だからこそ、方向性を変える事にしたのだ。


 脳を治すのではなく、再生させる――


 再生する力を持つ特殊型オメガ アンラ・マンユの遺伝子情報を使って。


『これより、彼にオメガの因子を結合させる手術を行う』


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