003.鳴り響く警告音
で、オレが軍人になったってわけ。壮絶で凄絶な物語だったろ? ・・・特に面白みもないか。
宇宙防衛軍に召集されてから既に3か月程が経過している。
最初は改造手術を受け、その後はアメリカの軍事基地で訓練の毎日が続く。改造手術といっても、体を機械にする様なものではなく、ただ身体能力を向上させる注射を打つだけのものだ。
だが、その効果は絶大だった。高校生になったばかりの一般人であるオレが、その手術を受けただけでオリンピックに出ている様なアスリートよりも強靭な肉体になったのだから。百メートルを走れば5秒で完走でき、20キロ程する装備を背負った状態で10キロを走ることだってできる。気分はまさにスーパーヒーローだ。
機械生命体であるオートマタの技術を用いたその手術の効果は、あまりにも驚異的だった。当初無理矢理徴兵されて怒りが心頭していた人々も、超人的な肉体を得たことで誰もが怒りを鎮めていた。
それと手術の中にはもう1つ効果があり、それが言語の習得だ。今では世界各国から集められたオレ達は、全員英語で話している。オートマタの技術で、記憶のコピーや移植が出来るようになったのだ。これで英語の勉強をしなくて済む。
「おーいKZ!クソマズいレーションがあるから食べようぜ」
オレをKZと呼ぶのは、同じ部隊に所属しているアメリカ人のマックス。彼もオレと同じ15歳だったおかげで、自然と話すようになった。見た目は明るい茶色の髪と青みがかった瞳孔と、その顔つきはまさにTHE・アメリカ人って感じの男だ。外国人の顔つきは日本人と違いうというか、大人っぽい顔つきをしているせいで、初めて会ったときは年上だと思っていた。
「嫌だよ。クソ不味いじゃん、それ」
軍用レーションは市販のレーションとは異なり、栄養価が高いが非常に不味い。そんなものを一緒に食べようと誘ってくるなんて正気の沙汰じゃない。
ちなみにオレは外国人にKZと呼ばれている。ケイジが言いづらいらしい。アメリカ人にだってケイジってファミリーネームの俳優やケイトって女性の名前があるじゃないかと聞いた事があるが、流されてケーズィーが愛称になった。
昼の休憩時間を友人と2人、不味い軍用レーションで小腹を満たす。お互いに不味い不味いと愚痴をこぼしながら。食堂に行けばもう少しマシな食事があるが、どんぐりの背比べだ。
そんな平穏な時を過ごしていたオレ達に、現実を突きつける様な警告音が流れる。
『ビーッ! ビーッ! 惑星マザーにオメガを確認。第一中隊から第二十五中隊は出撃準備をして下さい。繰り返します。惑星マザーに――』
惑星マザー。それはオートマタの母星の名前。
地球の科学では観測できない程離れた位置に存在したその惑星は、地球上には存在しない原子が多数存在し、それらで作られる兵器は鉛玉を飛ばすだけの地球の武器とは比較にならない性能をしている。故に惑星マザーの死守しなければ、我々はオメガに対抗する術をなくしてしまうのだ。
そして今回戦場に送られるのは第一から第二十五中隊。オレとマックスが所属しているのは第二中隊。一中隊あたり200人で構成された部隊。つまり今回の戦場へは5000人が出撃する事となる。
適合者は一万人いるが、手術によって得られる超人パワーには個体差がある。オレもマックスもその中でかなり優秀な部類だった為、第二中隊に所属しているが、それでも初めて戦場に赴くという現状に緊張が走る。
「よし! やってやるか! 行こうぜ、ケージー!」
マックスは自分自身を奮い立たせながら、オレに手を差し出す。
「・・・そうだな。あのインベーダー共に思い知らせてやるか」
その手を掴み、オレ達は出撃準備の為移動する。まず、武器保管庫で装備を身に着ける。全身を覆う鎧。中世のファンタジーの様な鎧ではなく、どちらかというとダイビングをする時に着るようなウェットスーツに近いピタッと体に張り付く紺色のスーツだ。
関節部にはプロテクターが付いている。それを身に纏い、頭にはフルフェイスタイプのヘルメットの様な兜を被る。視界が悪くなるが、スーツと連結することで内部のモニターが周囲を表示し、ヘルメットを被っていない素の状態と同等の視界が確保される。
「見てみろよケージー。ロ〇コップみたいだろ」
「どちらかというとG〇ジョーじゃないか?」
マックスと装備を見せつけ合いながら、オレ達は更にアサルトライフルとパルスグレネードを装備する。アサルトライフルはXM7。アメリカ製の銃だ。
装弾数は30発。重さは弾丸込みで約4キログラム。強化された肉体のおかげで反動は完全に制御できる為、全く感じない。
そしてパルスグレネードは、半径10メートルに瞬間的に高電流を流すグレネードで、これでオメガを殺すことは出来ない。ただ数秒足止めできるだけのものだが、スーツを着ている者には効かないという効果のおかげで、囲まれた際にこれを使えば、もしかしたら生き残れるかもしれないというお守りみたいなものだ。
ライフルのマガジンを5つ持ち、パルスグレネードを3個を腰に装着しているポーチに詰め込み、オレとマックスは発着場に向かう。
「準備が出来たものから輸送船に搭乗しろ!」
上官の言葉に従い、オレ達は第二中隊はオスプレイの様な輸送船に乗り、戦場に向かうのだった。




