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黎明を灯す光 ~神に至る道~  作者: Mr.Z


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024.第五中隊

 操られた隊員による射撃で試作型ソルジャーは破壊されていなかったので、回収を司令部に要請する。そして住民を守りながら戦闘している第五中隊の元へ向かう。


 オレがいた旺角(おうかく)と第五中隊がいる尖沙咀(チムサーチョイ)は直線距離にしておよそ3キロメートルと近いからだ。


 道路を走り尖沙咀に向かう。道中、警戒しながら移動していた事で、3分程の時間を要して現地に到着する。


 海がすぐ近くにある広場で、第五中隊は戦闘していた。戦闘中に数が減っていたのか、第五中隊はおよそ40人程度になっていた。通信にもあったように弾薬も少ないのか、銃声もあまり聞こえない。


 そんな中、数百体程のトウテツに囲まれており、ぱっと見ただけでも30人以上いる住民を守る為に、その場から動けずにいた。中には道路標識を振り回している者さえいた。


「第五中隊! 加勢する! そのまま戦闘を続けろ!」


 オレの声は第五中隊に届いたのか、士気が上がり雄たけびが響く。オレもトウテツに攻撃する為、レーザーライフルで射撃するも、動きが早く、数の多いトウテツとは相性が悪い。


 仕方がないと、レーザーライフルを地面に置き、予備で持っていた刃渡り30センチメートル程のナイフを取り出す。オメガ相手の接近戦は初めてだったが、怖じ気づいている場合じゃない。


 ナイフ1本でトウテツの群れに飛び込む。囲まれるのを防ぐ為、斬っては下がり、刺しては下がるのをひたすら繰り返し、確実に数を減らしていく。最中、不意に飛び掛かってきたトウテツの牙を左腕を犠牲にして防ぐ。噛みつかれ、腕が潰されるのを覚悟するも、一向に痛みは襲ってこなかった。


 それが新しいスーツのおかげか、コマンダーに無理矢理された改造手術のおかげかは分からないが、今のオレにとってトウテツは恐れるに値しない敵だという事に気付く。今も尚左腕に噛みついているトウテツの喉元にナイフを突き刺し、スライドさせて喉を掻き切る。


 すぐにトウテツは絶命し、顎が外れて左腕が自由になる。噛みつかれても大丈夫なら、ヒットアンドアウェイで戦う必要なんてない。オレは下がるのはおろか、トウテツの攻撃を避けるのもやめ、ひたすらナイフで命を刈り取っていった。


 およそ30分程の交戦の後、第五中隊と共にトウテツの殲滅に成功する。


「助かった、ウルシファ伍長。他の隊員達も応援に?」


 誰がウルシファだ。第五中隊長と思わしき黒いスーツの一人が敬礼しながら言う。歳は30ぐらいのアメリカ人の男性だ。確か名前は・・・マイク・ガードナー曹長だったはず。オレもすぐに敬礼を返し、首を横に振った。


「ガードナー曹長。第一中隊は壊滅しました。生き残りは他にいません。新型オメガが予想以上に厄介で後手に対処できず、遅れを取りました」


「そちらもか。こちらもあの青いのに操られた隊員達が発砲してきたので仕方なく・・・」


 撃ち返した、とは言わなくても分かった。


「『あれ』は腹足類(ふくそくるい)の虫に似ていて、足音がしないので接近に気付けなかった」


 ああいった生物の事を腹足類と呼ぶのを初めて知った。確かにあれの接近に気付くのは難しいだろう。

オレが未だに生き残っているのは、ただ運が良かっただけだ。誰かを犠牲にして生き残っただけに過ぎない。ただ、今はお互いに死者を悼んでいる暇はない。


「悔やむは後にしましょう。今は生き残っている他の隊を助けなければ」


「そうだな。近くにいる隊から連絡してみる」


 そう言ってガードナー曹長は通信装置を使い、他の中隊に連絡をする。オレは第五中隊の隊員達に指示を出し、住民を近くのビルに避難させる。これから香港の外に出るよりも現実的だ。それに味方の数も敵の数も不明な状況で、人員を割くわけにはいかない。


「ダメだ。どの中隊も応答がない」


「既に全滅、と考えた方がいいでしょう。新型オメガに洗脳された者が生き残る方法は、おそらくありませんから」


「・・・そうだな」


 仲間の全滅。それを認めてしまえば、作戦に参加した2千人の兵士の生き残りが、オレと第五中隊の計43人しかいないという事を認めてしまうという事だから。初めての任務でそれは辛いだろう。オレだって3回目の任務とはいえ、これだけ多くの人の死が辛くない訳がない。


 とは言え、これだけ減ってしまった以上、オレ達に出来る事はもう少ないだろう。敵の殲滅は試作型ソルジャーに任せ、帰還も視野に入れながら今後について話し合う。


「司令部から連絡があったが、敵は既に殲滅した様だ。残った新型オメガを中国軍の狙撃部隊がヘリから仕留めたらしい。我々はこれから脱出ポイントに移動して帰還する」


 ガードナー曹長の言葉を聞いて空を見上げると、基地に戻るのか海上にヘリが見えた。確かにヘリの上からなら、新型オメガの能力は効かないだろう。あの音が原因であれば、ヘリの音にかき消されるし、そもそも距離的に聞こえないはず。それに空中にいれば、いきなり背後を取られて洗脳される危険もない。


 こうして香港防衛任務は幕を閉じたのだった。


 今回は、これで終わりか。脱出ポイントに移動しようとした時、カサカサと茂みが揺れる様な音がした。辺りを見ると、広場には景観を良くする為の気が植えてあった。なら気のせいだろう。


 ――本当に気のせいだろうか?


 オレは今一度周囲を見渡す。海、ビル、木、隊員達が見える。その隊員達の背後には何もいない。何もいないはずなのに、何かの気配を感じる。その時、第五中隊を助ける前に聞こえた第七中隊からの通信を思い出す。


『こちら第七中隊! 正体不明のオメガを確認! 視認できない何かに襲われいている! 至急応援を求む!』


 視認出来ない、不可視の敵。それはあの青い脳みそではないとしたら・・・。新型オメガは他にもいるのではないだろうか。


 刹那、並んで歩いていた隊員5人の上半身が、宙を舞った――


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