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黎明を灯す光 ~神に至る道~  作者: Mr.Z


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008.再び鳴り響く警告音

 戦場から帰ってから2週間が経過した。復帰したオレは、再度改造手術を施され強化された上で、訓練に復帰していた。また新たな力に目覚めてしまった様だ。


 それと後々知った事だが、オレが初めて経験した戦場での死亡者は4962人だったそうだ。つまり生存者はオレを含めて38人。オレ以外の37人は唯一脱出に成功した一機の輸送船に乗っていたらしい。


 ただ、その37人は急性ストレス障害、つまりASDになったらしく、訓練が除外される代わりにカウンセリングを受けている。もしかするとそのまま退役してしまうかもしれない。このまま治らないと、良く聞くPTSD、心的外傷後ストレス障害になるらしい。


 オレの精神状態はというと、あの後何度も会いに来てくれたクーナさんのおかげで改善された。彼女には命以外にもたくさん救われた。


 今現在は新しく編成された第一中隊に所属して訓練に加わっている。もし彼女がいなければ、オレも今頃カウンセリングを受けていただろう。


 また、オレがかつて壊滅した第二中隊にいた事は伏せろという上からの指示があった。おそらく前回の戦場での生存率が1%にも満たなかったという事を隠しておきたいのだろう。


「おーい、そこの少年」


 この2カ月で本当に世界は変わったな、そんな事を考えながら訓練後に食堂で休憩していると、同じ第一中隊の日本人である橘 楓(たちばな かえで)20歳に声を掛けられる。黒髪ショートのそこそこ可愛い部類に入るであろう彼女は、他の中隊からも声を掛けられる程の人気者だ。クーナさんに比べれば月とスッポンだが。


「そこのあまり元気がなさそうなニ〇ラス・ケイジ少年。訓練が辛かったのかな?」


 何事もなければ3年目の大学生活を過ごしていたであろう彼女は、何かと姉御肌を吹かせてオレに声を掛けてくれる。それと誰が〇コラスだ。


「うるさい。オレに構うな」


「むふふ~。思春期だね~このこのぉ」


 うざがるオレを無視して、肘で人の脇腹を小突いてくる。同じ中隊で年下の男がオレしかいない為、彼女は何かとオレに構ってくる。それとオレと同じ歳の弟がいるだかいないだかという噂を耳にした事がある。


 ダル絡みしてくる彼女を無視して、オレは軍用レーションに口をつける。マックスとオレが嫌いだった豆を煮詰めた良く分からないやつだ。


「うわ、ライ豆のレーションじゃん。美味しいの、それ?」


 どうやらこの豆はライ豆というみたいだ。正直に言うとクソ不味い・・・が、思い出の味だ。他の連中は普通の食事を口にしていた。彼女を無視してそれを口にし続けていると、遠くからオレの事を面白くなさそうに見ていた輩が3人近付いてきた。


「おい楓。そんなつまらないガキよりオレ達の相手してくれよ」


 短い金髪で色黒の、見るからに不良の様な20代半ばの男がそうい言う。取り巻きの2人は金髪ではないが、左右の髪を刈り上げたツーブロックとボウズ頭と、(いか)つい見た目をしている。前の中隊には日本人が1人もいなかったのに、こっちにはオレと橘楓、そしてこの不良3人組の計5人も日本人がいる。


「んーやめとく。私ケイジ君とお話したいし」


 そう言ってオレの腕と自分の腕を無理やり絡める彼女。二の腕に彼女の胸の柔らかい感触が伝わってくる。


「オレは別に話す事なんてないけど」


「こら! そんな意地悪言うなんてお姉ちゃん怒るよ!」


 誰がお姉ちゃんだよ、とため息をつくと、それが面白くなかったのか、金髪がオレの胸倉を掴んでくる。


「なあ、空気読んで引っ込んどいてくんないかぁ?」


 そう顔を近づけて威圧してくるも、恐怖は感じられない。楓がそんな金髪を引きはがそうと間に割り込もうとするも、取り巻きの2人に抑えられる。


 この2週間の訓練を通して分かった事がある。それは最初に中隊に所属していたオレやマックス達に比べて、後に編成された橘やこの金髪達は弱いという事。おそらく改造手術の中身が違うのかもしれない。


 オレを含む最初に編成された5000人は通常の改造手術をされたが、コイツらはおそらく効果が低い代わりに適用できる人間が多い劣化版の手術を施されたのかもしれない。更にオレは先日二度目の手術を受けてより強くなっている。


 だから――オレは胸倉を掴んでいる金髪の手首を掴み、『軽く』握る。


「ぐぁあああああっ!」


 少しの痛みを与えるだけで膝をついて悲鳴を上げる相手にビビる訳がない。涙と鼻水を垂れ流しながら離してくれと懇願する金髪が哀れに見え、手を離す。その光景に呆然とした取り巻きの隙をついて、橘が拘束から抜け出す。


「行こ、ケイジ君!」


 彼女はそのままオレの手を引いて食堂を後にする。そのまま行く宛もないのか、ずっと廊下を歩いていると、突然彼女が髪をかき乱しながら吠えた。


「うがぁあああああ! 何なのアイツ!? 私があんなアホ丸出しの男に興味持つ訳ないじゃん!」


 その後も「うがぁああ」と吠えながら金髪への罵詈雑言を連発していると――


『ビーッ! ビーッ! アールヴヘイムにオメガを確認。第一中隊から第二十中隊は出撃準備をして下さい。繰り返します。アールヴヘイムに――』


 過去にも聞いた事のある警告音に、旧第二中隊の悲惨な末路がフラッシュバックする。オレは膝をついて、まともに息が吸えない過呼吸の状態になり、喉を抑えて苦しみに抵抗する。


「ケイジ君!? どうしたの!?」


 慌てる橘を手で制止し、呼吸を整えようとしていると、視界の端でサファイアの様な綺麗な青が見えた。


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