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霹靂‐へきれき‐のシルト  作者:


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初めてのソロ野営


ブンっ

真っ暗闇の中、ステイタス画面がぼやっと浮かび上がる。。





ダンジョンから吐き出されるように出たあと、しばらく呆然としていた俺は、すぐにダンジョンから離れ近場の木立に身を潜めた。



『危険を避け、誰にも見つからないように街に戻る』それしか俺の頭に浮かばなかった。

ダンジョンから街までの道を歩くのを避け、道から離れすぎない森の中を道沿いに慎重に進む。



あれからどれだけの時間が経ったかわからないが、もしクァズ達が近くにいたら面倒だと思ったからだ。ルツ達に見捨てられた事を今更とやかく言う気は失せたが、奴らとの『これから』は絶対にない。



冒険者がパーティに入るには本人とリーダーが一緒に届けを出さなきゃならないが、抜けるのにリーダーの許可は要らない。


抜けたい奴はギルドにパーティ脱退の届けを出すだけでいい。そしてリーダーも外したい奴の了承は要らない。勝手に外せる。


だから、ブラックパーティは嫌気が差した奴の逃亡を防ぐ為、仲間を一人ギルドのロビーでたむろさせている。


まぁ…まともなパーティなら抜ける前にパーティ内で了承をってなるが、ほとんどのパーティ脱退理由は、報酬分配の不満か人間関係だ。


すんなり辞められるのは、死んだ時か大怪我をして戦えなくなった時だけで、脱退トラブルが頻発して大分前からこのシステムだと冒険者登録の時に受付から聞いた。



ーサンディやアールの風呂への執着すごいからな。見つかったら面倒くさい予感しかない。



森に紛れる魔物に気をつけて進みながら、俺は街に帰ったら速攻ギルドに脱退届けを出し、どこか遠い別の街のギルドで再登録しようと考えていた。


日が暮れ始めた頃、俺は早めに土魔法で1人用の小屋を作り、マジックボックスの中から一角ラビットの肉を取り出して軽く水で洗い、串に刺して塩を心持ち多めに振って焚き火の側に刺した。


一緒に取り出しておいた獣よけの草を小屋の周りにまき、手早くクリーンをかける。



ー本当なら自分の為に風呂でも用意したいが、クリーンで我慢だ。

それでもクリーンをかけると身体はさっぱりする。


ー心なしか服もきれいになったような気がするな。

あちこち破れているし、血の跡は黒くシミになっているがクリーンをかける前より汚れは落ちた気がする。



ー街に帰ったら、まずは道具屋のおっちゃんとこで服でも買うか。鏡ないからわからんが、これじゃ立派な浮浪者だよな。


顔くらいは洗おうと、水樽を取り出してバシャバシャと顔を洗う。ついでに口をゆすいでがぶがぶと飲んだ。喉が渇いていたのか、やけに水が旨い。



香ばしい肉の匂いがしてきた。

肉串をくるりと裏返してから小屋の中にマジックボックスから取り出した藁束をいつもより厚めに敷いて整え、自分用の帆布の分厚いシーツをひく。



ーもしかして、これ使うの久しぶりじゃね?

いつもMPぎりぎりまで使ってクァズとサンディ、ルツとアール用の小屋を二つと風呂を作っていた。


当然自分用の小屋を作るMPは残ってなかったし、毎晩寝ずの番で毛布に包まって火の側にいたからだ。シーツはきれいな折り目がしっかりとついていた。



ー今日はひさしぶりに、屋根のあるところで寝れるな。枕も出すか。


寝床の用意ができると、ちょうど肉が裏表焼き上がりいい匂いがしてきた。


肉汁が垂れる串を地面から抜いて手に取ると、タクヤは焚き火の下に穴を空け、まだ燃える焚き火を地面に埋め込んで、コーティングをかける。


今から日が暮れる。夜に動き出す森の魔物達が目を覚ます前に匂いがあるものは隠さないと危ない。なんて言ってもソロなのだ。


タクヤは小屋の入り口の前に残しておいた獣よけの草を撒いてから中に入り、マジックボックスからチビた蝋燭が刺さった蝋燭たてを取り出して火をつけると、壁に差し入り口を土魔法で完全に塞ぐ。



ぽぅと小屋の中が明るくなる。


寝床に腰掛けて、一角ラビットの肉にかぶりつく。


ちょっとクセはあるが、一角ラビットの肉は鶏胸肉によく似ていて食べやすい。ヨーグルトに漬けて焼いているから、そのクセはほとんど無くなっていて旨味が濃縮され柔らかくしっとりとしている。


疲れているからか、多めに振った塩もちょうど良かった。


あっと言う間に一串ぺろりと食べたタクヤは、そのままごろりと寝床に横になった。久しぶりの寝床はほどよく柔らかくて心地いい。



ーいつもは固くて冷たい地面に座って寝てたもんなぁ

思いっきり伸びをして手足を広げた。腹いっぱい食べて寝床に横になるのは何時ぶりだろう。


腹いっぱいに食べ、寝床に横になったからか、緊張がとけてくると疲れから身体が重くなってきた。



「…あ」


ーそうだ。

タクヤは寝転がったままステイタス画面を呼び出した。


じじじ…

チビた蝋燭が小さな音を立てて燃え尽きた。



ブンっ

真っ暗闇の中、ステイタス画面がぼやっと浮かび上がってきた。なぜか、いつもよりステイタス画面の表示に時間がかかる。



ーなんか雷属性のやつ使えたよな。あの時は夢中で使ったけど、なんでだ? ステイタス確認しなきゃ…


やっとはっきりと表示されたステイタス画面を見ることなく、疲れ切っていたタクヤは寝床の中で泥のような眠りについた。

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