黒猫ツバキ、文豪を目指す
ツバキ「ペンネームもサインも売れっ子になった時のインタビューの回答内容も考えたけど、小説はまだ1文字も書いてないニャ」
――――アタシは猫なのニャ。名前は〝ツバキ〟にゃん。生まれたにょは、王都で…………。
あ、ご主人様。
アタシが今、ニャニをしているのか?
いい質問にゃん。これを見て欲しいニャ。
これは《口述筆記・自動魔法ペン》にゃん。アタシが喋ると、触っていなくても勝手に動いて、言葉を紙に文字で記してくれるのニャ。
すごく便利な魔法のペンにゃん。
アタシはこの魔法のペンを使って、凄い小説を書いて、文豪になるのニャ。
え? 『文豪』とは、どんにゃのか、知っているのか?
もちろん、知っているニャン。文芸作家で……え~と、え~と……とにかく〝物かき〟の偉いのニャン。
いま書いている小説のタイトルは『アタシは猫なのニャ』で、大傑作になる予定にゃん。ご主人様は楽しみに待っていると良いニャ。
……ち、違うニャン!
旧世界でナツメソウセキが執筆した『吾輩は猫である』をパロってなんか、いないのニャ!
ご主人様、とんでもニャい誤解をするのは、やめるニャン。
にゅ? 『吾輩は猫である』の猫が最後、どうニャるのか?
よくは知らニャいけれど、職業は〝魔女〟のご主人様に拾われて、幸せに過ごすはずニャ。ハッピーエンドになるに、決まっているニャン。
違うニョ? 猫を拾った人の職業は〝教師〟で、猫は小説の最後で水甕の中に落ちて溺れて死んじゃう…………死んじゃうニョ? にゃにゃ!? ご主人様、それ、本当ニャン?
『アタシは猫なのニャ』を書くのは、中断にゃん。良いのニャ。エタってしまったのニャ。これは小説執筆において、よくあることニャン。文豪でも、そうなってしまうケースはあるのニャ。
ところで、ご主人様はここへ何しに来たニョ?
にゃ! アタシにプレゼントをくれるのニャン!?
プレゼントは…………マフラー! やったニャン! さっそく首に巻いてみるのニャ。
暖かいニャン。ご主人様、ありがとうなのニャ。アタシ、とっても嬉しいニャン。
お礼に、ご主人様が主人公の小説を書くことにするニャ。アタシは文豪(仮)だから、小説のアイデアはドンドン出てくるのニャン。
タイトルは『美人の愛』にゃ! ご主人様は、美人さんだから…………そんにゃの当たり前って……ご主人様は、その増上慢ぶりだけは直すべきと、アタシは思うニャン。
美人さんの愛の対象は、決まっているニャン。当然ながら、使い魔のアタシにゃ!
これは正しい自己評価にゃん。アタシは増長猫じゃないのニャ。
小説の内容は――
主人公の〝私〟が《ツバキ》という名前の猫に会って、使い魔にしようとするのニャ。ところが一緒に暮らすうちに、〝私〟はツバキが可愛くてしかたがなくなっていき、やがてはツバキの言うことを何でも聞くようになってしまうのニャ。
実質はツバキが主で、〝私〟が召使いみたいになっちゃうけど、ツバキも〝私〟も幸せだから、それで良いのニャ。ハッピーエンドにゃん。メリーバッドエンドじゃ無いのニャ。
にゅ? この小説は、旧世界でタニザキジュンイチローが書いた『痴人の愛』のパロディーじゃニャいのか?
ぜ、ぜ、絶対に、ちちち違うニャン! それは、少しは参考にしているかもしれニャいけど……。
ニャニ? ご主人様。〝主従〟の意味を、もう一度、教えてやる?
いえ、けっこうですのニャ。
にゃにゃにゃ! ご主人様! 首に巻いているマフラーを、引っぱらニャいで~!
ひどい目に遭ったニャン~。
ご主人様。ニャニ? これ。
…………この旧世界の小説を手本にするニョ? それで、書いてみろ?
にゅ、にゅ~。
分かったニャ。やってみるニャン。
――――恥の多い、ニャン生を送って来ましたのニャ。アタシには、猫の生活というものが、見当つかないニョです……………………これは、なんなのニャン~!!! アタシは、恥が多くなんてないニャ!
ニャニ? この旧世界の小説……タイトルは『人間失格』で、作者はダザイオサム?
これをモデルにしてアタシが小説を書いたら、タイトルが『猫失格』になっちゃうニャン。断固、執筆は拒否にゃ!
…………ニャ~。小説を書くのって、難しいニャン。文豪になるための道は、とても険しいのニャ。
でも、アタシは諦めないのニャ!
で、ご主人様。マフラーを巻いているアタシの姿を、魔法を使って映像化してるけど、それをどうするニョ?
ニャムニャム。
現在、王国では〝エリマキトカゲ〟という動物が大人気で、その映像が人々の注目を集めている? だから、アタシがマフラーを首に巻いている姿の映像を〝エリマキツバキ〟として世間に紹介する?
ニャンで、そんなことをするニャン!!!
ニャ? 面白いから? 皆さんに、笑ってもらうため?
アタシがニャりたいのは《物かき》であって、《恥かき》じゃないニャン!
それはそれとして、マフラーをプレゼントしてくれたことには、改めてお礼を申し上げるのにゃ。
お返しに、昨日の夕御飯の残りで、今日アタシが食べようと思っていた煮干しをご主人様に差し上げるニャン。
ご主人様とアタシは、いっつも仲良しニャンね!!!
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※注……このお話は「1人称か3人称の特性を踏まえて、どちらかで書いてみよう」というお題を頂いて、それで1人称を選んで執筆してみました。
でもよく考えると、ツバキは猫ですので「1人称」では無くて「1猫称」ですよね(汗)。
個人的に
◯夏目漱石は明治の文豪
◯谷崎潤一郎は大正の文豪
◯太宰治は昭和の文豪……というイメージを持っています(谷崎は昭和でも活躍していますけど)。
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♢おまけのおみくじ話(世界観の謎はスルーしてください)
「ご主人様! おみくじを引いたら、アタシのライバルの名前が出てきたニャ!」
「ライバル? どれどれ、おみくじの内容を見せてみろ……おお! 〝吉〟じゃないか。で、『こんにちは、吉』と書いてあるな。めでたい文面で……どこが〝ツバキのライバル〟なんだ?」
「ニャン。だって『こんにちは、吉』……『こんにちは、吉』……『ハロー・キチ』……『ハロー◯ティ』――」
「ツバキ! それ以上、その名を口にしちゃダメだ! あの猫は〝著作権・商標権〟という、恐るべき武器を持っているんだぞ。攻撃を受けたら、いくら私でも勝てっこない」
「ご主人様よりも、強い猫なんニャ」
「ああ、その通りだ。それにしても、あの世界的に超有名な猫を〝自分のライバル〟呼ばわりするとは……ツバキ。お前、いくら何でも自己評価が高すぎないか?」
「そうかニャ? 黒猫のアタシとしては、白猫はどうしてもライバルに見えてしまうのニャ」
「白猫……そう言えば、ハローキ◯ィの本名は『◯ティ・ホワイト』だったはず」
「『キ◯ィ・ホワイト』……『ホワイト・キ◯ィ』……『ホワイト・キチ』……『白・吉』――アタシ、ライバルの猫さんのことを、これからは『白吉』って呼ぶことにするニャン」
「そんなマネをしたら、サ◯リオのファンにぶっ飛ばされるぞ。やめておけ、黒吉」
「アタシの名前は、ツバキにゃ!」
♢
「ご主人様も、おみくじを引いてみるニャン」
「分かったよ。お! 吉が出たぞ」
「良かったニャ!」
「……でも、変な〝吉〟だ」
「にゅ? 大吉? 中吉? 小吉? 末吉?」
「その、どれでも無い。『ネズミコゾージロ吉』と書いてある」
「……ネズミ……コゾウさん?」
「あと、〝待ち人〟の欄が『待ち人来る』じゃ無くて『ぬす人来る』になっているな」
「………ニャン」
「…………」
※鼠小僧次郎吉……時代劇などで有名な、江戸時代後期の泥棒。
年の初め、コンデッサが玄関に巨大なネズミ捕りの罠を仕掛けておいたところ、見事に泥棒を捕まえることが出来た。コンデッサとツバキの家の〝家内安全〟は守られたのである。
「あのおみくじは、幸運を引き寄せてくれたみたいだな」
「〝吉〟だったんだから、当然ニャン!」
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コンデッサとツバキは、今年も、これからも、ズッと仲良しです!
~おしまい~
おまけ話の内容は、けっこうアウトギリギリかも……(サン◯オのキ◯ィが強すぎて)。
『黒猫ツバキの冬の日々』は今回で終わりますが、コンデッサとツバキの話は、また執筆したいと思っています。ご覧いただき、ありがとうございました。
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