黒猫ツバキ、おみくじを引いたら大凶3連発でヘコむ(後編)
登場キャラ紹介
・チリーナ……伯爵令嬢にして魔女高等学校の2年生。コンデッサの元教え子。青い髪をツインテールにしている。コンデッサのことを「お姉様」、ツバキのことを「駄猫」と呼ぶ。コンデッサを(過剰に)慕っている。
・ミミッカ……ボロノナーレ王国の第8王女。魔女高等学校の生徒会長。とても賢い。
コンデッサたちが立ち去った、そのすぐ後に、2人の少女が神殿を訪れた。
ミミッカとチリーナである。
ミミッカは、ボロノナーレ王国の第8王女。
チリーナは、伯爵家の1人娘。
2人とも17歳で、魔女高等学校に通っている。
ついでながら、チリーナは幼少の頃にコンデッサに家庭教師をしてもらった経験があり、それ以来《コンデッサお姉様へ、激ラブ♡》な状態になっている。〝困ったちゃん〟な百合少女だ。
神殿内に一歩、足を踏み入れるや、何かを察したのか、チリーナがキョロキョロと首を左右に動かす。
「は! お姉様の、爽やかな残り香がしますわ。もしかして、コンデッサお姉様が来ていたのでは……」
「チリーナ。今は参詣中ですのよ。ひとときは、コンデッサ様のことを忘れなさい」
「それは無理な仰りようですわ、ミミッカ様。私の脳裏からお姉様の姿が消えることなど、一瞬たりとも、ありえませんもの」
「そんな異常な宣言を、神域で堂々としないでください!」
初詣を済ませた2人は、おみくじを引くことにする。
「ミミッカ様のおみくじには、何と記されていたのですか? ……あれ? 国吉? 〝国吉に幸いあれ〟と、みくじ箋には書かれていますが……」
「ワタクシは神殿で『ボロノナーレ王国の民が幸せでありますように』と祈ったのです。その祈りに応えて、神様が〝国吉〟という特別な〝吉〟をワタクシに示してくださったのでしょうね。見てください」
ミミッカが引いたみくじ箋には、以下の内容が記されていた。
『――国吉に幸いあれ――
待ち人:民は出会うべし
探し物:民は見つけるべし
争い事:国の内外に起こらず
旅行:割引きキャンペーンを活用すべし
学問:官民問わず奨励すべし
商売:消費税アップは宜しからず
恋愛:その者の頑張り次第
縁談:まとまるケースあり』
「微妙な気もしますけど……」
「何を言うのです、チリーナ。神様からの、ありがたいお言葉ではありませんか! ボロノナーレ王国が平和であるよう、今年もワタクシは頑張ります」
「ご立派ですわ! ミミッカ様」
「……ところで、チリーナ。貴方のおみくじは、どのような内容に?」
「それなんです、ミミッカ様。聞いてください。私の今年のおみくじは、最高でしたわ!」
「まぁ、良かったですね」
「ハイ! 私のおみくじには〝百合キチ〟と記されていました!」
誇らしげに胸を張る、チリーナ。
ミミッカは瞬きをし、思わず尋ね返す。
「……百合……キチ?」
「ええ、そのとおりです。今年の私の百合方面は、確実に〝吉〟なのです! 私、神様に『今年こそ、コンデッサお姉様との仲が進展しますように』とお祈りしましたの。そしたら、このようなおみくじが! これは神様が〝私のお姉様への愛〟をお認めになり、『どんどん百合アタックをしなさい。貴方の百合は〝吉〟なのですから』と保証してくださっているに違いありませんわ!」
「……貴方のみくじ箋を、良く見せてください。確かに『百合キチ』と……でも『百合キチ注意報』と書かれていますよね?」
チリーナが引いたみくじ箋には、以下の内容が記されていた。
『――百合キチ注意報――
待ち人:百合的には自重すべし
探し物:百合関連は探すべからず
争い事:百合トラブルが起こらぬよう努めよ
旅行:百合目的はダメ
学問:百合以外に専念すべし
商売:百合グッズは避けること
恋愛:百合で頑張るな
縁談:百合でまとめるな』
「えっと、これは……神様は貴方へ、百合を勧めているのでは無くて、百合を控えるように忠告なさっておられるとしか思えないのですが。百合そのものは良いのですけど、貴方の場合は行きすぎていて……つまり、おみくじに書かれている〝百合キチ〟の〝キチ〟は、吉凶の〝吉〟では無くて、古代世界で言うところの放送禁止用語の〝キ◯ガイ〟の〝キチ〟なのでは……『百合キチ注意報』とシッカリ書かれていますし」
ミミッカは浮かれているチリーナへ、遠慮しながらも、ハッキリした声で語りかけた。
が、既にチリーナは完全なルンルン気分になっている。御神酒を飲み過ぎた、酔っ払いのようだ。
どうやらチリーナは、みくじ箋の最初の4文字『百合キチ』を見た瞬間に歓喜してしまい、それ以外の文面は目に入らなかったらしい。
神の忠告も、ミミッカの説得も、チリーナには届きそうに無い。
幸せそうに、チリーナが歌う。
「らら~♪ 三千世界のカラスを睡眠薬で眠らせて、お姉様と朝寝がしてみたい~♪」
「ちょっと落ち着きなさい、チリーナ。百合キチになっては、いけません!」
「夜明け空に、飛ぶのは百合カモメ~♪ 私はカモメで、お姉様は港~♪ 港の黒猫は、お邪魔ネコ~♪」
「もう、手遅れみたいです……神様……」
♢
おみくじは、神様からのアドバイス。
アドバイスは、ちゃんと聞くようにしましょう。
※次回は「黒猫ツバキ、恐るべき闇と戦った女神たちの壮絶な体験談を聞く(前編)」です。日本神話の女神であるアマテラスが登場します!
♢
アマテラス「妾を祭っている伊勢神宮には、おみくじは無いのじゃ。神宮にお参りできたこと自体が〝大吉〟を意味しているから……というわけじゃ」
ツバキ「アマちゃん様、凄いニャン!」
アマテラス「なので今日、妾に会ったツバキは、大吉を引いたも同然なのじゃぞ。ツバキのために、わざわざ訪ねてきてやったのじゃ」
ツバキ「アマちゃん様は、とっても親切ニャン。ありがとなのニャ」
コンデッサ「それが年明け早々、我が家へ押しかけてきた言い訳ですか……」
アマテラス「言い訳ではない! おせち料理は、美味しいの~。あ、お雑煮のおかわりをお願いするのじゃ」




