黒猫ツバキ、おみくじを引いたら大凶3連発でヘコむ(前編)
登場キャラ紹介
・コンデッサ……ボロノナーレ王国に住む、有能な魔女。20代。赤い髪の美人さん。
・ツバキ……コンデッサの使い魔。言葉を話せる、メスの黒猫。まだ成猫ではない。ツッコミが鋭い。
※設定の豆知識……コンデッサたちが暮らしている世界は、現代より数億年ほど経ったあとの地球です。
季節は冬。年明けの、ある日。
ここは、ボロノナーレ王国の王都にある神殿。
この神殿へ、魔女コンデッサは使い魔の黒猫ツバキを連れて、初詣へやって来ていた。ボロノナーレ王国には、初詣の風習があるのだ!
「ご主人様。この神殿に祭られている神様は、誰なにょ?」
「知らん。しかし参拝客はいっぱい居るし、おそらくは有名な神様なんだと思う。ちょっとお賽銭を上げれば、ご利益がたんまりあるに違いない。これこそ、まさに『エビで鯛を釣る』というヤツだな」
「ご主人様。それは『取らぬ狸の皮算用』ニャン」
お参りのあと。
「せっかく神殿へ来たんだから、おみくじを引いていこう」
ボロノナーレ王国には、おみくじの伝統もあるのだ!
コンデッサからの誘いを受けて、ツバキは張り切る。
「あ、アタシ、〝おみくじ〟のことを知っているニャン! それで、今年一年の運勢を占うニャンね」
「そのとおり」
「幸運レベルの順番は、大吉・吉・中吉・小吉・末吉で、凶だと不幸に、大凶だと大不幸になっちゃうのニャ」
「いや、凶には『己を見直して、運勢を吉にせよ』という意味もあって――」
「絶対に、凶は引かないニャン。大凶にゃんて、もってのほかニャ」
コンデッサとツバキは、おみくじを引いた。この神殿では、折りたたまれた紙の《みくじ箋》に吉凶が書かれているのだが……。
紙を開いて、中を確かめる魔女と猫。
「やったぞ。私のおみくじは、大吉だ!」
「…………」
「ま。当たり前だな」
「…………」
「私は日頃の行いが良いから、それを神もキチンと見ているわけだ」
「…………」
「今年の私も、絶好調になるのは確定だな」
「…………」
「で、ツバキのおみくじはどうだったんだ?」
「…………ニャン」
「え?」
「…………大凶ニャン」
「そ、そうか」
超・気まずい。
「うわ~ん! 今年一年、アタシは大不幸になっちゃうのニャン~! 悲劇ニャン~! 絶望ニャン~!! おさき真っ暗ニャン~!!!」
「な、泣くな、ツバキ。そうだ! もう一回、おみくじを引くことにしよう」
「…………そんニャことをしても、いいニョ?」
「構わないさ。おみくじは〝神からのアドバイス〟みたいなものだからな。アドバイスを聞き直したところで、何ら問題は無い」
おみくじに関する独自理論を展開する、コンデッサ。彼女にとっては、神様のご意向よりも、使い魔のご機嫌のほうが大切なのである。
2度目のおみくじを引く、魔女と猫。
「私は、また大吉だ」
「…………」
「神も、そこまで私の幸運ぶりを強調してこなくても良いのに」
「…………」
「自分が果報者であることを、私は誰よりも知っている」
「…………」
「それで、ツバキのおみくじは――」
「……また、大凶ニャン」
「……そうか」
超・居心地がわるい。
「うわ~ん! こんにゃの、ありえないニャ~! 年明け早々、全ては終わってしまったのニャ~! もはや、天も神もご主人様も、アタシのことを見放したのニャ~!」
「だ、大丈夫だ、ツバキ。何があっても、私はお前を見放したりはしないから」
「…………ぐす。本当ニャン?」
「もちろんだ! あと一回だけ、おみくじを引いてみよう。な、ツバキ。そうしよう」
「そんニャに何度も、おみくじを引くにょは――」
「心配するな。おみくじを引くたびに、神殿へは、料金を支払っているんだ。神の懐も余計に潤うんだから、文句を言われる筋合いは無い」
神の心中を一方的に推測して、勝手に判断するコンデッサ。彼女にとっては、会ったことも無い神殿の神様よりも、一緒に暮らしているツバキのほうが大事なのである。
3度目のおみくじを引く、魔女と猫。
「…………」
「…………」
「……あ~、ツバキ」
「…………」
「私は、大吉だったんだけど」
コンデッサは、おそるおそるツバキへ声をかける。今はもう、大吉を引いても喜ぶどころでは無い。
「…………」
「…………」
「……大凶ニャン」
「そ、そうか。凄い確率だな」
超・空気が重い。
「…………」
「…………」
「……………………ご主人様、サヨナラなのにゃ」
「え?」
「アタシは、すでに〝大熊猫(ジャイアントパンダ)〟ならぬ〝大凶猫(ジャマナネコナンダ)〟になってしまったニャン。こんにゃアタシに、ご主人様と一緒に居る資格は無いのニャ。アタシは、ご主人様とは離れて暮らすことにするニャン」
「ち、ちょっと、待った!」
コンデッサは慌てた。
ちなみにこの時、ツバキは〝家の庭にある物置で、しばらく暮らす〟くらいのつもりだったのだが、コンデッサは〝ツバキは家出しようとしている〟と勘違いをしていた。
――心が通じ合っていない、主従である。
「ツバキが〝邪魔な猫〟なんてわけ、あるか! いいか。良く聞け、ツバキ。実は……な。おみくじの大凶は、そんなに悪いモノでも無いんだよ」
「そうなニョ?」
「ああ。大凶の真の意味は『一年のうちで、今日が最も運勢が良くない日。なので、これからはだんだんと良くなっていく』ということなのさ」
「にゅ~」
「それに、なんといっても、私は〝大吉3連発〟の女だぞ。私の側に居れば、ツバキも必然的に運に恵まれるさ」
ツバキは少しの間、考え込んだ。迷っている顔を見せる。
ある程度は納得しつつも、また新たな疑問が湧いたらしい。
「……でも、だったら、ご主人様の大吉は『一年のうちで、今日が最も運勢が良い日。なので、これからはだんだんと悪くなっていく』という意味になってしまうニャン。なにより、ご主人様の側には〝大凶3連発〟のアタシが居るわけだし………ニャン」
「あ~。だから……私の〝大吉3連発〟とツバキの〝大凶3連発〟で、釣り合いが取れていることになるんだよ。私とツバキは、いつも一緒だろ?」
「ニャン」
「私とツバキの吉凶は、ペアで考えれば『(大吉+大凶)÷2=平均運』なのさ。なにごとも、ほどほどが1番! 今年は並みの運勢で、私たちは普通に楽しく暮らしていこう」
コンデッサの言葉を聞いて、ドヨ~ンとしていたツバキの周りの空気は次第に明るくなっていく。
「そうにゃんネ! アタシとご主人様はペアで、カップルで、パートナーにゃん! 吉も凶も、ぜ~んぶ分け合うのニャ!」
「ああ。家には魔法の箒で飛んで帰るが……途中で、美味しいモノでも食べていこう」
「わ~い、やったニャン」
すっかり元気を取り戻したツバキ。その様子を優しく見守るコンデッサ。
魔女と黒猫の主従は、仲良く我が家へ帰っていった。
ツバキ「吉と小吉と末吉のおめでたさの順番には、いつも迷うニャン」
※物語の舞台は異世界(ヨーロッパ中世風)なのに「初詣」や「おみくじ」等のネタが出てきていますが、そこはコメディーということで、大目に見てください~(懇願)。後編に続きます!




