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蝉のように儚く  作者: 櫻井賢志郎
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3人でいつものカフェに行くとになった時に一度だけしずくが遅れてきた事があった。しずくが来るまでの時間を私は和馬と2人で過ごして、和馬から突然

「優香、困ってる事とかないか?」

そう聞かれて何のことだろうと思ったけれど、すぐにきっと和馬は色々な事に気が付いているのかもしれないなと思った。

「どうして?」

「別にどうしてってほどでもないけど、いつも優香が明るいのは実は何か我慢してるんじゃないかなと思って」

「うーんどうなんだろう。嫌なことは沢山あるけど明るい私も本当の私だと思う!」

気付けばそう答えていた。いっそ全部言う事ができたら良かったけれど私の口からはそれがうまく言葉にできなかった。

「それならいいけど、もし何かあったら言ってな」

和馬が笑顔で答えたのをみて、安心する。

しずくのことは大好きだけど、和馬のことも友達として心から好きだった。

私としずくだけじゃこんなに仲良くなれなかったかもしれないけれど、そこに和馬がいてくれたからきっと今もこうして3人で過ごせてるんだなと実感する。


「あと、しずくとはどうなの?」

正直さっきの質問よりもドキッとした。たぶん動揺を隠せていなかったと思う。

「え?」

そう笑いながら聞き返す。

「好きなんじゃないの?」

あまりにもストレートに聞かれるから何だかおかしくて思わず笑った。

何て答えようか迷って、やっと口に出そうと思ったところでちょうどしすぐがくる。

「遅れてごめん」

「お前さあ、、」

和馬はそう言って少し呆れていたけど、私はこれでいいと思った。

まだ今は胸にしまっておくって決めてるから。

もちろんしずくのことは好きだし、和馬ならきっと真剣に相談にも乗ってくれる。

そうわかっていたけど、みんなが頑張ってる中で私だけ浮かれてるのは間違っている気がしてこのままで今はいいと思えた。


「2人は夏休みどこかいくの?」

今年も来た。夏休みになるといつも聞かれるこの質問が私は苦手だった。本当ならみんなみたいにどこどこに行くよとか言いたかったけど私の家はそれがない。

しずくが花火大会に行くのを知って純粋に羨ましいなって思った。私は変わらずバイトばかりだということを伝えてこの話が終わるのを待つ事にした。

「僕たちで花火しようよ」

しずくが言ってくれたその言葉すごく嬉しくて、2人と一緒にやる花火が嬉しくて私は大きな声を出していた。

私にとっては家にいる時間が増えて退屈で、苦痛でしかない夏休みがその一言で大きく意味のあるものへと変わった。

嬉しくて嬉しくて、でもどこか悲しくてきっと今変な表情してるんだろうなって自覚があったけど、そんな事が気にならないほどに嬉しかった。


約束の日になって私はいつもより丁寧にお化粧をしてどんな素敵な日になるんだろうと気持ちを昂らせながら集合場所に向かった。

集合場所に着くとそれぞれが持ち寄った花火を披露する。

なぜか打ち上げ花火を持ってきた和馬がおかしくて思わず笑ってしまう。


みんなで花火に火をつけて走り回ったり写真を撮ったりとにかくはしゃいだ。私にとっての辛い日々を2人が少しずつ軽くしてくれる。何のために生きてるのかわからなかったけど2人はそんな事どうでもいいよって言ってくれてる気がして居心地が良くて、そんなことを思いながら今にも溢れそうな涙を2人にバレないようにそっとしまう。


3人で線香花火をして、誰が1番残れるか競ったら私が最後まで残ってはしゃいだ。純粋に嬉しかったのもあるけれど、横で悔しそうにしたしずくが可愛くてついはしゃいでしまった。

いつも冷静なようでこういうとき以外と負けず嫌いだったりするからしずくは可愛い。それにきっとバレてないとでも思ってるんだろうけど結構表情に出てたりして必死に冷静であろうとするところも好きだったりする。


いよいよ持ってきた花火も数がなくなって、和馬が持ってきてた中で1番大きな打ち上げ花火を上げる事になった。

私は勝手になんかもの花火がさらに広がってそれを見上げる3人の姿を想像したけど、いざ打ち上がった花火はたった一発だけで思わず

「みじか!」

と声に出していた。持ってきた本人の和馬も同じように声に出していて3人は思わず顔を見合わせて笑った。


たった一発だけだったけどその花火はすごく綺麗で、今までに見た数少ない花火の中でも1番だった。

いつまでも忘れないようにと何度もその花火を頭に浮かべながらきっと来年も見る事ができますように。3人がバラバラになっても同じように集まって同じように笑い合う事ができますようにと心の中で願っていた。

今私は生きてるんだなって実感が湧いて、2人となら生きててもいいんだなって思えた気がして涙が溢れ出しそうになった。


「来年は特大の花火を買おう!」

そう和馬が言ったから私としずくはすぐにそうだなと口にした。

来年も2人と花火ができる事が嬉しかった。

私も来年は和馬より大きい花火を買ってビックリさせたいなと思ったり、来年も絶対に線香花火で1番になるぞと思った。


もしできるなら、来年は花火大会にも一緒に行ってみたかった。きっと無理だと思うけれど浴衣を着て、お化粧をして2人と一緒に花火が見たかった。

屋台をまわって3人でリンゴ飴なんか食べながら花火を見たらきっと楽しいだろうなと思いながら、2人と一緒に後片付けをする。


家に帰ったらすでに父は寝ていて、母だけがいた。

今日あった出来事を話すと母は嬉しそうに喜んでくれたけど

「どこにもつれて行ってあげられなくてごめんね」

と口にする母がそこにはいた。

確かにそうかもしれないけど私はそれでも良かった一緒にいてくれる友達に出会えて、1番な夏休みを過ごす事ができた私は幸せに溢れていたし満足していた。

「そんなことないよ。今日も楽しかったし。」

そう伝えて部屋へと戻る。


お母さんはどんな気持ちで私を見ているのかな。今日も謝ってたけどどんな意味で謝ってるんだろう。

きっとお母さんだって辛いし毎日大変なんだと思う。日中はパートに行っていて帰ってきたらお父さんの機嫌を取って。幸せなのかな。お母さんのことは嫌いじゃないけれどどうしてももっと私を見て欲しいなとか守って欲しいって思っちゃう。

もし私が家を出たりしたらお母さんは1人で戦わなきゃ行けなくなっちゃうのかな。


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