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蝉のように儚く  作者: 櫻井賢志郎
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定期試験の最終日、学校が早く終わった日に和馬も連れて3人でカフェに行くことになった。

今日は和馬もいて純粋に友達とどこかへ行ける事が嬉しくてウキウキしながらカフェへ向かう。

こないだと同じ席に案内されて最初は和馬の部活の話で盛り上がる。

7月から大会が始まると聞いて私はすぐに張り切って言った。

「応援に行こう!」

しずくも賛同してくれて一緒に応援に行けることが決まった。

嬉しい。またしずくと一緒にどこかへ行ける。


それからもテストの出来の話やクラスの話題で盛り上がって、先日父から言われたことも忘れるくらいに幸せな時間がまた広がっていた。

「久しぶりに友達と仲良く過ごせてて楽しい!」思わず口にした事に2人は少し笑いを浮かべている。

心の底から出た言葉だった。やっぱり2人のことが好きだし3人でいる時間は楽しかった。

すると去年友達と喧嘩した事について和馬が聞く。


「いや毎日私コンビニ弁当食べてるじゃん?それとか服装見て貧乏なんじゃないかとか、虐待受けてるんじゃないかって言ってきたの!悪気なくふざけて言ってただけだと思うけど、怒っちゃってさー」

本当の事を私は伝えた。

和馬すぐにそれは怒るよと言ってくれて少し安心したけど、言われた事が事実だからとは言う事ができなかった。

言ったら2人との関係が壊れてしまうかもしれない。急に気を遣われて今までのように楽しく過ごすことは出来なくなっちゃうかもしれない。そう思うと口にする事ができなかった。


私は虐待を受けているってわかっていても認めたくなかった。

側から見れば明らかに虐待だったかもしれない。でもそれを認めたら私という存在までも否定してしまう気がして認めちゃいけないと心のどこかでいつも思う。


「ほら私、勝手にあれこれ言われて楽しい事とか幸せな事を壊されたり、傷を抉られたりそういうのが許せないんだって言ったじゃん。それが悪い形で出ちゃってさー。でも今が楽しいからいいんだけどね!」


これも本当の事だった。あの時だって私のもう一つ生活を勝手に探られて私の気持ちも知らずに勝手に知ったような気でいられる。

私のこと考えてるようで私の気持ちまでは考えてないから知らずに私の傷を深く抉られた気がした。私も人の事は言えないくらいなんでも口に出しちゃうかもしれないけどなるべく人の知られたくない事、その人に踏み込む事は安易に口にしないようにしてる。

だからこそあの時はショックだったし、これからこの子達とは今までのようには過ごせないんだなって思った。


そんなやりとりをしてるうちに日も暮れて今日もそれぞれが帰路に着く。

今日実はひっそりと、でも私の中では大ニュースな出来事があった。

初めてしずくって呼ぶ事ができた。そしたらしずくも私のこと優香って呼んでくれたし凄く距離が縮まった気がして嬉しかった。

しずくが大した意味もなく呼んでくれてたとしても、それでも私は良かったし私の中での宝物の様な1日になった。


それから和馬は大会が近づくにつれて忙しくなってしずくと2人の時間が増えていった。

私にとってこの期間は1人の女の子として幸せな時間だった。この頃には純粋に恋愛としてしずくのことが好きなんだって実感があった。

いつかこの気持ちを伝えたいと思いながらも今は受験もあるしまだ胸の中にしまっておこうと思う。


一度だけしずくを誘って映画を見に行った。

私がどうしても見たかった恋愛映画でもしかしたら興味ないって断られちゃうかななんて思ったけど、しずくは来てくれた。

一緒に電車に乗って映画館に行って、ポップコーンを一緒に食べて、まるでデートをしているようなそんな気持ちになれた。

胸のドキドキがバレないようにいつもと変わらない様子を装いながら夢のような時間を過ごした。


映画の内容は終電を逃した2人が恋に落ちて色々な事を経験していく中でお互いの大事にしたいもの、価値観の違いからすれ違っていく内容だった。

高校生の私には少し難しいなって思ったけど最後の方のシーンでは思わず涙が溢れていた。

しずくにバレないように涙を拭きながら映画館を出る。


その後も一緒にカフェに行って映画の感想を話したりした。

しずくは初めて見たジャンルだけど面白かったって言ってくれたし勇気を出して誘ってよかったと思えた。

このまま告白しちゃおうかなんて思いが頭によぎったりもしたけど今は胸にしまっておくんだと言い聞かせて1日を終える。


今まで経験したことのないような胸の高鳴りも、しずくとの大切な時間も家に帰ればすぐにもう1人の私が邪魔をする。

家に帰って今日もまた父の機嫌は悪い。

「また遊んでたのか、化粧なんかして」

「良いじゃんたまには」

つい口に出してしまった。しまった。そう思った時にはすでに遅くテレビのリモコンを投げつけられた。

「誰のおかげで学校に行けてると思ってるんだ!少しは家のために何かしろ!」

そう言って父は私の頭を強く叩いた。

私は思わず泣きながら家を出て、バイト先へと駆けていた。


どうして私は幸せを感じたら行けないんだ。毎日お酒を飲んで。好きなように人を怒鳴りつけてる父に私の気持ちなんてわかるはずもないし分かろうともしてもらえない。

こんな事なら死んでいなくなってしまいたい。頭の中で自殺の2文字が駆け巡る。

それでも、学校に行けばしずくや和馬がいて私を非現実に連れ出してくれる。

今日は私が口答えしたから叩かれたんだ、悪いのは私なんだ。

いつもみたいに我慢していれば明日からはまた少しの恐怖だけで我慢することができるはずだ。そんな事を思いながらかけていると気が付けばバイト先に着いていた。


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